『Mr. ビーン』が怒った! アトキンソン氏が「EV」に騙されたと思う理由は?
『Mr. ビーン』や『ジョニー・イングリッシュ』といったコメディ作品で世界的に知られるイギリス人俳優のローワン・アトキンソン氏が、「電気自動車(EV)に騙されたと思い始めている」と英ガーディアン紙で論じています。
学生時代に電子工学を専攻していたアトキンソン氏は、『Mr. ビーン』では小さいクルマの「ミニ」に乗っていますが、私生活では高級車をたくさん所有していると言われており、クルマは大好きな様子。そんな同氏はEVにもいち早く乗り始め、大好きになったそうですが、最近その熱が冷めてきたとのこと。
その理由の一つ目は、EVは世間で言われているほど環境に良くないから。アトキンソン氏はボルボのデータを使いながら、EVを生産する過程で排出される温室効果ガスの量はガソリン車より70%多いと述べています。その原因はリチウムイオン電池にあり、これがかなり重い。この電池を作るためにはたくさんのレアアースやエネルギーが必要なのに、大体10年しか持たないと説明しています。
同じように耐久性への視点から、同氏はクルマを巡る社会的な問題を指摘。クルマの販売は「ファストファッション」化し、もはや私たちは新車を購入しても、リース契約を結んでも、3年足らずでクルマを手放すようになった。しかし、現代のクルマは30年も走ることができるのだから、このような天然資源の無駄遣いは許し難いとアトキンソン氏は怒っているようです。
このような理由で、アトキンソン氏はEVに少し騙されたと感じるようになったわけですが、EVの開発をやめるべきとは言っていません。自動車業界の環境問題への取り組みについては、ほかにも検討すべき方法があると言いたいわけです。
そこで、アトキンソン氏は「合成燃料(石油代替燃料)」の開発を進めるべきだと提案。「環境問題におけるガソリン車の問題点はガソリンであって、エンジンその物ではない」と同氏は考えており、その観点から、まだまだ役に立つ従来のクルマをできるだけ長く生かすためには、水素を含めた合成燃料の開発を進めることが大切だと論じているのです。
EVは世間でイメージされているほど環境に良いわけではないのだから、従来のクルマをもっと長く大切に使っていこうよ、というアトキンソン氏の考え方には納得できますよね。しかし、大英帝国勲章を受章しているこの大物俳優は、EVのもう一つの特徴である自動運転については言及していません。最近では、テスラのイーロン・マスクCEOが、同車の自動運転技術には、もうすぐ「ChatGPT」のような時が来ると述べていますが、自動運転でさえ環境にあまり良くないという見方は以前から存在しています。Mr. ビーンだったら古いミニに乗り続けているかもしれません。
【主な出典】
Rowan Atkinson. I love electric vehicles - and was an early adopter. But increasingly I feel duped. The Guardian. June 3 2023.