【文房具愛好家・古川耕の手書きをめぐる冒険】

文房具をこよなく愛す、放送作家の古川耕氏による連載。「手書き」をテーマとし、デジタル時代の今だからこそ見直される“手書きツール”を、1点ずつピックアップしている。第26回となる今回は?

 

第26話

 

 

セーラー万年筆
万年筆ペン先のつけペン hocoro(ホコロ)
1350円(細字、1.0mm)
1450円(2.0mm、筆文字)

※ペン先+ペン軸の価格(税別)

万年筆用ボトルインクを利用し、ペン先を軽く水で流すだけで色替えできるのが魅力。ペン先は細字、1.0mm、2.0mm、筆文字の4タイプで、ひとつのペン軸に付け替えて使用できる。ペン先を逆向きにも差し込め、持ち運びやすい。

 

「インク消費のためのペン」という倒錯が新たな可能性を拓きそう

買ってから使い途を考える。それは邪道ではなく、むしろ正しい。そんなペンがこの「hocoro(ホコロ)」です。

 

近年「インク沼」という言葉がSNSなどを賑わせています。万年筆用の様々なインクを愛でる趣味ですが、万年筆は一度インクを充填すると使い切るまでそれなりの量を書かねばならず、テスター感覚でちょっとずつ色んなインクを試したい人には不向きでした。そんなニーズから近年はつけペンやガラスペンに注目が集まっており、そこに目をつけたセーラー万年筆が発売したのが本品。つけペンに万年筆のペン先を取り付けたもので、細字・1mm幅・2mm幅・筆文字と4種のペン先があり、それぞれまったく異なる個性を楽しめるようになっています。これはこれで「万年筆沼」への入門編にもなっており、インクとの組み合わせを試しているだけであっという間に時間が溶けてしまいます。おそるべし、ダブル沼効果。

 

ところで、道具にはそれを中心とした様々な主従関係の糸が張り巡らされています。筆記具であれば書く人が「主」でペンが「従」ですが、時折「このペンを使いたいから手紙を書く」というような主従の逆転現象が起こります。ホコロの場合、「インク消費のためのペン」という倒錯した主従関係があらかじめ埋め込まれているところがユニーク。「インク消費したい欲」から生まれる予期せぬ使い途や、まったく新しいインクの楽しみ方に期待しています。

 

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