【スポーツメンタル】プレッシャーに強くなる!イメージトレーニングの正しい行い方とは?

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 スポーツの世界で最高のパフォーマンスを引き出すために「イメージトレーニング」を行っているという一流アスリートが多くいます。「将来の自分をイメージすることによってモチベーションアップ」や「本番力が高まる」などの効果が一般的に知られています。

一方で、手軽に誰でも用いる事ができるため、イメージトレーニングの効果を疑うアスリートの読者もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、アスリートが手軽に取り入れることが可能なイメージトレーニングの効果を海外論文のデータを元に綴りながらその正しい行い方について紹介していきます。

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イメージトレーニングの効果とは?

昔からスポーツ界で「イメージトレーニング」は、主流の練習法として多くのアスリートに勧められてきました。「成功した自分の姿をイメージする」や「プレッシャーのかかる場面を常にイメージしながらトレーニングを行う」等、イメージの内容は様々です。

その一定の効果は、既に多くのアスリートによって取り入れられているため周知の事実となっておりますが、どのような心理的な面で効果を期待出来るのでしょうか?また、スポーツの場面で効果を最大化するためには、どのように行うのが科学的に良いのでしょうか。

ドイツ・トリーア大学ら複数の大学によって行われたイメージトレーニングに関するメタ分析のデータを元に効果とおすすめのトレーニング方法を見てみましょう。

海外論文のメタ分析の結果

メタ分析は、過去に分析された論文を集め、再び精査し、分析している事から信憑性の高いデータが出やすいと科学界では言われています。この論文では、過去に発表されたスポーツにおけるイメージトレーニングに関する論文55件、合計1,438人が研究対象となっている大規模な研究です。

その結果、イメージトレーニングを行うとスポーツでの心理的スキル(不安対策やプレッシャーへの対処など)やスポーツ選手としてメンタル的に落ち込みがちな「怪我のリハビリ」の向上に有効であることが示唆されています。

他にもイメージトレーニングによって、一時的な運動能力やモチベーションの上昇も確認されており、メンタル的に一定のポジティブな効果が期待出来そうです。

さらに、この研究ではイメージトレーニングの行い方に関する興味深い点も指摘されています。イメージトレーニングの効果を最大化するためには、実際の身体的な練習と組み合わせるとより効果的になり得るようです。つまり、ただイメージトレーニングを行うだけでなく、実際の身体的な練習と組み合わせることで最大の効果が得られる可能性が高まります。

また、イメージトレーニングの効果は、イメージの強度と正の相関があることが明らかになっています。これは選手が集中力を高め、身体的トレーニングと組み合わせた具体的なイメージトレーニングに没頭するほど、本番でのパフォーマンスの向上が期待できます。

イメージトレーニング中の脳内

以上のデータから、スポーツパフォーマンスの向上やメンタルの安定を目指す選手やコーチにとって、イメージトレーニングを真剣に取り組むことは、アスリートとしてポジティブな影響が享受出来ると考えられます。

しかし、なぜイメージトレーニングは有効なのか。それは、人間の脳に秘密があります。人間の脳はイメージと現実の世界で実際起きた事象の区別が苦手です。これによって、脳はイメージトレーニングでも実際の競技から得られた情報と同様の反応を示し、神経経路が活性化されます。従って、プレッシャーのかかる場面やつらいリハビリの日々を乗り越えた自分などを脳内に再現可能なため、実際にプレッシャーのかかる場面が来た時には準備が整っており、つらいリハビリにも耐え、乗り越えるモチベーションを保つことを可能にします。

科学的に正しいイメージトレーニングの行い方

科学的に効果を最大化するイメージトレーニングの行い方は、普段の練習中から想像力を働かせ、試合と同じ状況に近づけた想定をイメージしながら行うことです。

試合の状況、対峙する相手選手、試合会場の環境などを鮮明にイメージをしたイメージトレーニングに組み合わせて普段の練習を行いましょう。その際、試合時に着用するのと近い衣装を着てみることや、同じルーティンを行うなどできる限り本番に近い環境もセッティングすると高い効果が期待出来るでしょう。

注意点としては、気分が良くなるためだけに成功したときのイメージトレーニングを行うだけでなく、まずはプレッシャーのかかる場面が来た時のための準備としてイメージトレーニングに取り組んでみてください。より具体的に自分が力を発揮したい場面を想像し、練習にイメージトレーニングを取り入れてみると良いのではないでしょうか。ぜひ参考にしてみてください。

参考文献:
https://www.researchgate.net/publication/341945828_The_Effects_of_Imagery_Interventions_in_Sports_A_Meta-Analysis

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。