遠藤航(シュツットガルト)が5月21日のマインツ戦で挙げた今季5得点目は、貴重すぎる得点だった。

 前日に15位のボーフムが18位のヘルタ・ベルリンに、16位のシャルケは8位のフランクフルトに引き分けており、試合前の時点で17位だったシュツットガルトも勝てば自動残留の15位に浮上できる状況だった。

 遠藤はマインツへのバス移動の最中に、その状況を把握していた。

「自分たちにポジティブな(他会場の)結果だったというのは、今日の試合を戦ううえで、すごくモチベーションにはなっていましたよね」

 遠藤は試合前の心境をそう振り返った。


大事な試合で今季5ゴール目を決めた遠藤航

 マインツ戦は23分に左CKから失点し、41分に遠藤のゴールで同点に追いつくという展開となった。仮にそのまま同点で試合が終わっても、順位は17位から16位に上がることになり、自動降格圏を脱することができる、大きな意味を持つ得点だった。

 遠藤の得点は相手が先制したのと同じ、左CKからのカウンターだった。

 シュツットガルトのボールになると、FWサイラス・カトンパ・ムブンパが右サイドを一気にドリブルで駆け上がり、ペナルティエリア手前で中央にパスを入れる。相手ディフェンダーのクリアはちょうどボックス手前まで走り込んだ遠藤の足もとに入り、遠藤は自分のトラップで浮いたボールを右足でそのままネットに突き刺した。

「本来だとね、どこまであそこ(ゴール前)に入っていくかというところ(が問題)で......。2ボランチ気味でカラソルと一緒にやる時は、どこまで自分が攻撃に関わるか、この何試合というか今シーズンは、それをテーマにしていました」

 テーマにした結果、MFアタカン・カラソルとのダブルボランチの場合、遠藤が攻撃に行く回数は増えたという。

「ああいうカウンターでも代表でプレーしていたら、うしろに残っていると思うんです。だけど、このチームや相方との相性もあって、自分が(攻撃に)いった。得点シーンは、あそこまで(ボールがこぼれてくると)信じて走ったところがすべてだったと思いますけどね」

【僕も、もう30歳なんで...笑】

 シュート自体も、走り込んだ直後にもかかわらず、ボールをふかすことなく枠をとらえた。

「今日のシュートに関しては、ファーストタッチをうまく自分の前に(ボールを)置けたし、シュートもやけに落ち着いていたというか......。あんまり力みすぎてもよくないので。

 ドイツで数シーズン戦って、ゴール前での落ち着きは意識しながらやっている。ミドルに関しても、力まずに打つほうがやっぱりいいシュートが打てるし、ゴールにもつながる。今日もね、その(ボールへの)置きどころと当て方だけ、意識してやった感じです」

 プレッシャーのかかる状況でも、遠藤の頭の中はクリアだったことがうかがえた。

 昨シーズンも16位で迎えた最終節のケルン戦、遠藤は後半ロスタイムに得点してチームを自動残留に導いた。緊張も興奮も同時に感じてはいるだろうが、それでも最大限に落ち着き払っていつものプレーができるのは、どのような理由があるのだろうか──。

「まあ僕も、もう30歳なんで(笑)。そのへん(落ち着いていられるのは)は経験もあると思うし、去年の経験ももちろんあるし。

 去年みたいにはならないと思いながら、結局、今年も残留争いしちゃっているところはあるんですけど、結果どう転んでも、自分のやるべきことをやるしかないんで。そこらへんはある意味、割りきってやるというか......」

 さらに、なかなかに新鮮なことを言う。

「2部に落ちることを想定し、最悪の結果になることも、ある程度は自分のなかで受け入れつつ、でも『まだ残り2試合ある』みたいな気持ちの持ち方で。今日に関して言えば、レーバークーゼン戦から攻撃に関してのフィーリングはよかったんで、なんとなく『点は取れるかな』って感じはしていたし。

 それが結局、チームに貢献することになると思っている。自分に求められていることはもちろん、コンスタントにプレーすることプラス、やっぱり今日みたいにゴールだったりアシストだったり結果を残すところだと思う。そういう高いレベルで、常に求めるものを高くしていくのが大事かな、と思います」

【遠藤航のサッカー観とは?】

 結果に対しては割りきり、自分にできることは突き詰める──。それは、遠藤のサッカー観からくるもののようだ。

「まあ、言うてもね、これは別に人生の一部であって。なんて言うか、その、たかがサッカーじゃないけど、サッカーはサッカーで、これが自分の人生のすべてではない。結果はどう転んでもしょうがないんで、自分にできることは限られているし、とにかくピッチ上で毎試合、毎試合、やるだけです」

 マインツ戦の1ゴールからはじまり、話は遠くまで及んだ。ともあれ、この日の勝利でシュツットガルトは自動残留に大きく一歩近づいている。