マンチェスター・シティが優勝に王手をかけているプレミアリーグ。アーセナルの2位以内も確定しているので、焦点は、チャンピオンズリーグ(CL、4位以内)及びヨーロッパリーグ(EL、6位以内)の出場権をかけた3位以下の争いに絞られていた。

 この日、行なわれたニューカッスル対ブライトンは、3位(勝ち点66)対6位(同58)の一戦だった。他のチームより消化試合が1、2試合少ないブライトンは、前後のチームとの関係で、その分だけ優位な立場に立っている。ブライトンにとっては、CL出場の可能性をつなぎ止めることができるか、EL出場権を確固たるものにできるかがかかる、負けられない一戦だった。

 ホームのニューカッスルは中4日。対するブライトンは中3日。さらに中2日でサウサンプトン戦を控えている。ロベルト・デツェルビ監督はこのニューカッスル戦に、中盤の大黒柱アレクシス・マクアリスターをスタメンから外して臨んだ。強行日程という、消化試合の少なさからくる好ましくない影響を受けた格好だ。

 数試合前から右ウイング、ソリー・マーチも故障で欠くブライトンにとって、三笘薫は攻撃面における頼りの綱だった。しかし、三笘が初めてドリブルでイングランド代表の右サイドバック(SB)キーラン・トリッピアに対峙することができたのは、前半16分という遅さで、試合は開始直後からニューカッスルの一方的なペースで進んだ。


ニューカッスル戦でチャンスをつくれなかった三笘薫(ブライトン)

 5日前、アーセナルにアウェーで0−3と完勝した余勢を駆ることはできなかった。ホームの歓声をバックに高い位置からプレッシャーを掛けるニューカッスルに対し、ブライトンは例によってボールをつなごうとしたが、左ウイングに満足な形でボールを預けることはできなかった。

 それだけに16分、ボールを受け、トリッピアと対峙することになった三笘には期待がかかった。ところが縦に抜き去るウイングプレーに三笘はチャレンジしなかった。隣で構えたダニー・ウェルベックにボールを預けた。ウェルベックはシュートこそ飛ばしたが、ブライトンの攻撃はチャンスが膨らむことなく終了した。

【ブライトンが悪いと言うよりニューカッスルがよかった】

 タッチライン際で構えるウインガーとはいえ、三笘が攻撃の核として機能しないと情勢は好転しない。シンプルにと言うか、あっさりとウェルベックにボールを預ける姿はどこか優等生的で、物足りなさを覚えずにはいられなかった。

 ニューカッスルに先制点(オウンゴール)が生まれたのはその7分後。トリッピアが蹴った左CKは、ブライトンFWデニス・ウンダブの頭を経由して、ブライトンゴールに飛び込んでいった。

 三笘に再びいい形でボールが渡ったのは前半37分。左SBペルビス・エストゥピニャン経由で足もとにボールが収まると、トリッピアと1対1になっていた。縦勝負を挑む絶好の機会だった。結果論で言うわけではないが、三笘が選択したのは、縦ではなく内で、一歩カットインすると右足でシュートを放った。吹かしたわけではないが、抑えは効いていなかった。「惜しい」という印象を残せぬまま、ブライトンの攻撃は終了した。

 追加点を奪われたのは前半の追加タイム。中盤で三笘が浮き球の処理を誤り相手ボールに転じると、慌てたウンダブが相手MFジョー・ウィロックを倒しFKに。そのボールを左SBダン・バーンが頭で合わせ、ニューカッスルは2−0とした。

 ブライトンが悪かったと言うより、ニューカッスルがよかったという印象だ。ニューカッスルといえばプレミアの中堅チームだ。マンチェスター・シティ、アーセナル、リバプール、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー。近年、CLを賑わせたプレミア勢といえばこの5チームになるが、それ以外のチームとの実力差はつい3、4年前まで確実に存在していた。

 ニューカッスルが最後にCLに出場したのは2003−04シーズン。アラン・シアラーがCFを張っていた時代である。現在、20シーズンぶりのCL出場をかけて戦っているわけだが、その事実に上記5チームとの差を見る気がする。

 だが現在のニューカッスルには、来季CLに出場したら決勝トーナメントを十分戦っていけそうな可能性を感じる。その昔、スペイン勢が強かった頃、CLの準決勝、決勝にバレンシアやデポルティーボ・ラ・コルーニャが進んだことがあるが、当時スペインの第2グループだった両チームに似た気配をニューカッスルには感じる。ブライトン戦は、つまりプレミアのレベルの高さをあらためて思い知らされる一戦となった。

【気になったプレーの幅の狭さ】

 ブライトンが見せ場を作ったのは後半6分。その直前、GKジェイソン・スティールが、ニューカッスルの左ウイング、パラグアイ代表のミゲル・アルミロンのボレー弾を見事なセーブで阻止した直後だった。スコットランド代表の21歳、ビリー・ギルモアの針穴を通すような縦パスにウンダブが抜けだし、2−1と1点差に迫った。ブライトンのデツェルビ監督は、ベンチスタートとなったマクアリスターらを投入。追い上げムードを煽ろうとした。

 ところが、笛吹けど踊らず。流れは変わらなかった。なにより三笘にボールが渡らなかった。ボールに触れても断片的で、周囲に簡単に預けるシーンも目立った。プレー機会に加えプレー時間も少なかった。トリッピアを慌てさせるシーンはゼロ。その責任がどこまで三笘にあるのかは難しいところだが、先述したようにプレーが優等生的で、中心選手にしては、控え目すぎたことは確かだった。

 何と言っても敗れればCL本大会出場の夢が潰える一戦だ。「俺が、俺が」と我を張りすぎるのもよくないが、チーム内のポジションを考えると、もう少しボールに絡み、プレーに積極的に関与するべきだった。

 ともすると淡泊なプレーに映った。プレーの幅の狭さも気になった。ツボにハマれば、切れ味抜群のドリブル&フェイントで相手を翻弄する三笘だが、ハマらないと見せ場そのものがなくなる。前日、CL準決勝対レアル・マドリード戦で活躍したマンチェスター・シティの左ウイング、ジャック・グリーリッシュのどこか粘りのある、幅のあるウイングプレーとつい比較したくなった。

 欧州でも最高級のレベルにあるプレミアの、その上位対決は三笘の市場価値を占う試合でもある。そこでどれほど活躍できるか。次戦は最下位のサウサンプトン戦だが、その次はマンチェスター・シティ戦だ。グリーリッシュに負けない高級なウイングプレーを披露してほしいものである。