牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)は、断然人気のリバティアイランド(牝3歳/父ドゥラメンテ)が勝利した。GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月11日/阪神・芝1600m)以来となるぶっつけの参戦ながら、異次元の末脚を披露して一冠目を獲得。既成勢力とは完全に勝負づけが済んだ、と言ってもいいかもしれない。

 続く第2弾は、5月21日に行なわれるGIオークス(東京・芝2400m)。はたして、リバティアイランドを脅かすような新興勢力はいるのだろうか。


オークストライアルのフローラSはゴールデンハインド(写真右)が勝利し、ソーダズリングが2着に入った

 注目の前哨戦に目を向ければ、桜花賞と同日に行なわれたリステッド競走の忘れな草賞(4月9日/阪神・芝2000m)はグランベルナデットが快勝。東京競馬場を舞台としたGIIフローラS(4月23日/東京・芝2000m)ではゴールデンハインド(牝3歳/父ゴールドシップ)が、リステッド競走のスイートピーS(4月30日/東京・芝1800m)はウヴァロヴァイトが勝ってオークス出走切符を手にした。

 ただ、グランベルナデットとウヴァロヴァイトはオークス出走を回避。やや寂しい状況となった。それでも、他にも"絶対女王"とは未対戦の馬は何頭か出走予定。思わぬ伏兵の台頭があるのか、気になるところである。

 そこで今回は、いよいよ目前に迫ってきたオークスを前にして、同大舞台に参戦予定の3歳牝馬の『Sportivaオリジナル番付』をお届けしたい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、まもなく行なわれるオークスに臨む3歳牝馬の実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

 1位は、満点の25ポイントを獲得したリバティアイランド。桜花賞の勝ちっぷりからして、もはや同世代に敵なしとも言っても過言ではない。このまま二冠達成となるのか、必見である。

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「距離適性もあるので、正直オークスはどうなるかわからないのですが、強かった桜花賞の内容から世代最強の牝馬はこの馬で異論はありません。もちろん、オークスも最有力候補でしょう」

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「桜花賞は、内と前とで相当強いトラックバイアスがありました。過去のレースぶりから、2枠3番の好枠を生かしての競馬ができると判断し、その能力からしても負けるシーンは1ミリも浮かばなかったのですが、馬が行く気を見せずに後方からの競馬になったことは意外でした。

 それでも、鞍上の川田将雅騎手は"それなら"と腹をくくって、後方待機から直線では外目に出して進出することを決断。トラックバイアスに逆らう位置取りとコース選択でしたが、勝ち時計1分32秒1、上がり32秒9をマークして差しきった内容は、"怪物"と言っていいレベルです。

 そして、桜花賞の舞台で流れに乗った競馬をせずに勝てたことは、今後の当馬にとってはプラスに働くはず。前半は馬任せでポジションを取り、折り合い不問で長く脚が使えることから、クラシックディスタンスでますますパフォーマンスが上がる見込みです。桜花賞組はもちろんのこと、別路線組にも当馬の座を脅かす存在は皆無。オークスは圧勝までありそうです」

伊吹雅也氏(競馬評論家)
「5月7日終了時点の本賞金は2億2400万円。一走あたりの賞金は5600万円で、いずれの数字もJRAに所属する現3歳世代の牝馬としては断然のトップです。

 オークス出走にあたっての懸念材料をひとつ挙げておくと、桜花賞の4コーナー通過順が16番手だった点。2018年以降のオークスでは極端な競馬をした直後の馬が苦戦していて、前走の4コーナー通過順が2番手以内だった馬は、0勝、2着0回、3着0回、着外12回(3着内率0.0%)、13番手以下だった馬は、1勝、2着0回、3着0回、着外17回(3着内率5.6%)でした。

 ちなみに、前走の4コーナー通過順が2番手以内、あるいは13番手以下だったにもかかわらず3着以内となったのは、リバティアイランドと同じく桜花賞を4コーナー16番手から差しきった2018年のアーモンドアイだけです。もちろん、リバティアイランドがアーモンドアイ級の名牝である可能性は高いので、あまり心配する必要はないのかもしれませんが......」

 2位以下は前回から大きく順位の変動が見られ、2位には初のランクインとなったコナコースト(牝3歳/父キタサンブラック)が入った。大物が続々と登場しているキタサンブラック産駒で、オークスでの距離延長もむしろ望むところだろう。

土屋真光氏(フリーライター)
「デビュー戦を勝ったあとは2着が続いており、よく言えばどんな相手にも対応でき、悪く言えば勝ちきれないタイプですが、桜花賞でも好レースを見せました。2着という結果は相手が悪かった、と言うしかないでしょう。普通の年なら、あっさり勝っていた内容でした。

 血統から、距離延長はウェルカム。前走がフロック視されて人気が上がらないようなら、馬券的な妙味は増します。オークスで、もう一発あっても不思議ではありません」

木南氏
「先行有利の傾向にあった桜花賞当日の馬場。それを考えても、ハイペースで2着に残る内容は強かったと思います。オークスでは未知の距離をどうこなすか、ですね」

 3位は、ハーパー(牝3歳/父ハーツクライ)。桜花賞で4着と健闘し、前回4位からランクアップした。オークスの舞台となる東京競馬場ではGIIIクイーンC(2月11日/東京・芝1600m)を勝っていて、コース適性は高そうだ。

土屋氏
「同じマイル戦のクイーンCを勝っていたものの、桜花賞では他の馬とのマイル適性の差が出た感があります。それが、直線での伸びの違いにつながったのではないでしょうか。

 それでも、クイーンCがそうだったように、東京では最後のひと踏ん張りでこの馬の粘りが生かされるような気がします。2014年に断然人気のハープスターを退けたヌーヴォレコルトのようなイメージで、オークスでの逆転が期待できます」

 4位に入ったのは、桜花賞でキャリア3戦ながら3着と好走したペリファーニア(牝3歳/父モーリス)。半兄にエフフォーリアがいる良血で、オークスでの奮闘も期待される。

伊吹氏
「5月7日終了時点の一走あたりの賞金は1833万円で、JRAに所属する現3歳世代の牝馬としては、リバティアイランド(5600万円)、コナコースト(2300万円)に次ぐ単独3位。一走あたりの賞金は成績の優秀さとキャリアの浅さを掛け合わせた指標ですから、この数値が高い本馬は"伸びしろのありそうな実績馬"と言えるでしょう。

 オークス出走にあたっての懸念材料を挙げるとすれば、桜花賞における上がり3ハロンのタイムが7位だった点です。2018年以降のオークスは、基本的に上がりが速い馬が優勢。前走の上がりタイムの順位が4位以下、なおかつ"東京の1勝クラス以上のレース"において1着となった経験のない馬は、0勝、2着0回、3着0回、着外33回(3着内率0.0%)と上位に食い込めていません。

 個人的には高く評価しているものの、あまり穴人気してしまうようであれば、扱いに注意したいところです」

 5位には、2頭がランクインした。フローラSを逃げ切ったゴールデンハインドと、同レースで2着に食い込んだソーダズリング(牝3歳/父ハーツクライ)だ。

木南氏
「これまでの傾向を見ても、ゴールドシップ産駒は牝馬が走る印象です。一昨年のオークスの勝ち馬ユーバーレーベンしかり。ゴールデンハインドもまた、ここにきて力をつけています。フローラSを完勝し、オークス本番でも楽しみな1頭です」

吉田氏
「明け3歳の2月12日と遅いデビューとなったソーダズリング。その初陣では、スローペースのなかポジションを悪くしてハナ差負けを喫しました。クラシック出走に暗雲が立ち込めたものの、2戦目をラクに勝ち上がるとフローラSに照準を合わせて2着。オークスの出走権を獲得しました。

 ただし、ソーグリッタリングやソーヴァリアントといった兄たちを見ても、完成するのは決して早くなく、父も成長曲線が緩やかなハーツクライ。バランスのいい体つきに加え、トビの大きさや脚元からもいいものは感じられますが、前回で勝ちきれないあたりの割引は必要でしょう。

 そうは言っても、今回がまだ4戦目。上積みはなくとも、前走の状態を維持して、ある程度体力勝負になるような流れなら、今の完成度でも次位争いを制す可能性はあります」

 リバティアイランドが昨年のスターズオンアースに続いて二冠を達成するのか。それとも、距離延長を味方にして下克上を果たす馬が現れるのか。3歳牝馬の頂上決戦から目が離せない。