Samsungの半導体部門のトップが、同社の最先端チップ生産技術が台湾のTSMCに2〜3年遅れていることを認めた上で、2028年までにTSMCを追い越すと宣言したことを、韓国メディアのHankyungが報じました。

경계현 삼성전자 사장 5년 안에 TSMC 따라잡겠다 | 한국경제

https://www.hankyung.com/economy/article/202305044261i



Samsung Foundry Vows to Surpass TSMC Within Five Years

https://www.anandtech.com/show/18854/-samsung-foundry-vows-to-surpass-tsmc-within-five-years



Samsungのデバイスソリューション部門を率いるKye Hyun Kyung氏は、韓国科学技術院(KAIST)で行った講演で「率直に言って、Samsungのファウンドリ技術はTSMCに遅れを取っています。しかし、5年以外にTSMCを追い越します」と話しました。

Samsungは、大規模集積回路(LSI)だけでなく半導体プロセス技術でもTSMCやIntelに追いつくべく、ファウンドリ部門に数百億ドル(数兆円)の投資を行ってきました。これにより、競合他社との差は大きく縮まりましたが、依然として性能や消費電力、トランジスタ密度、コストなどの指標では、TSMCのファブリケーション技術に及んでいないのが現状です。



by 李 季霖

Samsungは、「SF3E(3GAE:3nm Gate-All-Around Early)」ノードでのGate All Around(GAA)トランジスタを採用した最初のチップメーカーであり、Samsungの顧客はこの技術と斬新なトランジスタアーキテクチャに熱狂しましたが、Samsung自身はこのプロセスを同社のスマートフォン向けチップには採用していません。

Kyung氏は「Samsungの3nm GAAプロセスに対する顧客の反応は良好です」と語りますが、Samsungの主力スマートフォン「Galaxy S23」シリーズに搭載されているSoCであるQualcommのSnapdragon 8 Gen 2は、TSMCの「N4」プロセスで生産されています。

Samsungのファウンドリ部門が、スマートフォンなど要件が厳しい機器向けのSoCを作る上で使える最先端技術であるSF4(4LPP、4nmクラス、ローパワープラス)は、Kyung氏が認めたようにTSMCの3nmプロセスであるN3(N3B)に大きく水をあけられているものの、AppleのSoC量産に使われるとの情報があります。

半導体情報のリークで知られるTwitterユーザーのRevegnus(@Tech_Reve)氏によると、Samsungは2023年後半に顧客向けに提供するSF4P(4LPP+)で、TSMCのN3およびN4Pとの間にあるギャップを多少埋めることができると目されているとのこと。



Samsungが2024年にSF3(3GAP)の量産体制に入ったころには、TSMCはより高度なN3P製造技術を提供していると考えられます。また、この頃にはSamsungが高性能なCPUやGPUに適応する4nmクラスの製造技術であるSF4X(4HPC)を提供することが予定されています。

こうした状況から、技術系ニュースサイトのAnandTechは「Samsungが2022年〜2023年の期間中にGAAトランジスタに移行したのは、競合他社、特にIntelとTSMCより新しいアーキテクチャの問題を修正する時間が取れるという点で、非常に理にかなっていると言えます。競合他社が2024〜2025年に2nmクラスのチップに着手し、Samsungが目下解決に取り組んでいるのと同じ問題に直面するとすれば、SamsungのSF2ノードは消費電力や性能などの面での優位性を発揮できるようになるでしょう」とコメントしました。