日本代表"侍ジャパン"が、3大会ぶりに世界一を奪還した、「2023ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)」。アメリカとの決勝で大谷翔平(エンゼルス)がクローザーとして登板し、チームメイトのマイク・トラウトを空振り三振に斬ったシーンは、多くの人が今でも鮮明に思い出せるだろう。

 その決勝から約1カ月。それぞれの所属チームで奮闘している"侍"たちのシーズン成績も気になるところだ。主要な代表選手たちの成績を見ていこう(成績は4月19日の試合終了時点)。


1カ月前、WBCで優勝した日本代表「侍ジャパン」

 大会で打率.346のハイアベレージをたたき出した近藤健介(ソフトバンク)は、4月14日の楽天戦では一試合4三振を喫したものの、14試合に出場し、パ・リーグ2位の打率.309をマーク。移籍1年目、かつ代表活動の直後という難しさがあるなかでも安打製造機ぶりは健在だ。

 セ・リーグでは、大会チーム最多タイの2本塁打を放ち、打率.333を残した岡本和真(巨人)も好調をキープしている。今シーズンから坂本勇人に代わってキャプテンに就任した大砲は、本塁打こそ1本だが、打率は.338。WBCを経験した影響か、凡退時に"熱さ"を感じさせる所作が目立つようになっていることも話題だ。

 昨シーズンは史上最年少での三冠王獲得、日本人で最多の56本塁打を放った"村神様"こと村上宗隆(ヤクルト)。WBC期間は不振を極め、「村上も神ではなく人間」という意味から"村人様"とも言われたが、準決勝のメキシコ戦でサヨナラ打、アメリカとの決勝でも先制された直後に同点ソロ本塁打を放つなど、復調の気配を覗かせて大会を終えていた。

 だが、シーズンでは15試合に出場して打率.196、2本塁打と苦戦中。昨年の大活躍で他球団からのマークがきつくなっているのは間違いないが、「村神様、ここにあり」と示してほしいところだ。

 WBC開幕前は、「主力として多くの試合に出場する選手はいいが、試合出場、打席数が少ないバックアップの選手はシーズン序盤に苦戦するのではないか」という声もあった。WBCの招集期間は、各チームの主力たちはオープン戦で実戦勘を取り戻す時期。その時期に代表チームに呼ばれ、例年であれば積めたはずの打席数、実戦経験が不足し、シーズンで苦労するのではないかという仮説だ。

 WBCで"スーパーサブ"の役割を任されたのが、鈴木誠也(カブス)の代替選手として緊急招集された牧原大成(ソフトバンク)。7試合中6試合に出場するも、代走、外野の守備固めとしての出場が主で、消化した打席はわずか2。それでも、シーズンでは14試合に出場し、打率,291と奮闘している。

 一方、代走の切り札として準決勝・メキシコ戦でサヨナラのホームを踏んだ周東佑京(ソフトバンク)は、シーズンでは牧原と同じく14試合に出場して打率.208。WBCではやはり1打席しか立てなかったが、調整期間の長さが2人の成績の差に表れているという見方もできなくはない。

 前倒しの調整の影響か、代表戦士の中には故障離脱中の選手もいる。大会期間中は不振にあえぎ、代打での出場が主だった山川穂高(西武)は、4月9日のソフトバンク戦の翌日に登録抹消。右ふくらはぎの強い張りが原因だと発表されている。

 さらに山田哲人(ヤクルト)は、12日のDeNA戦4回の凡打で一塁に全力疾走した際に下半身を負傷。こちらも翌日に登録抹消されている。山川と山田の離脱を見るに、WBC、シーズンの両方を万全の状態で戦いきる難しさが浮き彫りになった印象だ。

 シーズンと異なるボールで登板しなければならないなど、感覚の調整にも苦慮した投手陣の成績はどうだろうか。

 4月14日には、山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)の"侍ジャパン対決"が実現。プロ野球ファンが固唾を飲んで見守った珠玉の投手戦は、7回1安打無失点、11奪三振の快投を見せた佐々木に軍配が上がった。

 その他、代表選出の投手だと戸郷翔征(巨人)の安定感が目立っている。ここまで3試合に先発し、2勝1敗、防御率は0.89。大舞台で得た自信がシーズンにも好影響を及ぼしている印象だ。巨人のチームメイトで、大会4試合4イニングを投げ無失点だった大勢も、ここまで4試合で救援登板して自責点0。ふたりの侍戦士の勢いを味方に、チームも浮上していきたいところだ。

 腰の張りで途中離脱を余儀なくされた栗林良吏(広島)はシーズンには間に合い、今シーズンもクローザーを任されている。ここまで7試合に登板して5セーブを記録しているが、4月18日の阪神戦の1点リードの9回に登板するも、侍戦士の中野拓夢に2死満塁からサヨナラ打を浴び、早くも自身ワーストタイの2敗目を献上した。野手と同じく、投手陣も悲喜こもごもである。

 最後にメジャー組の現在の成績を見ていこう。

 大会で3試合に登板し、6イニングを投げて防御率6.00と本領は発揮できなかったが、自身の経験、知識を惜しげもなく若手選手に伝えるなど多方面で世界一に貢献したダルビッシュ有(パドレス)。日本時間4月17日のブルワーズ戦に先発し、7回4安打1失点、12奪三振2四球の好投を見せた。味方の援護なく2敗目を喫したものの、復調ぶりは示している。

 今シーズンからレッドソックスに移籍し、メジャーに挑戦する吉田正尚は、日本時間4月4日のパイレーツ戦でメジャー初本塁打を記録。オリックス時代の代名詞でもあった"ダンベルパフォーマンス"も披露したが、日本時間11日のレイズ戦での安打を最後に、19日のツインズ戦終了まで20打数無安打と苦戦している。WBCで打率.409、チーム最多タイの2本塁打を記録した打棒の復活が待ち遠しい。

 日本に"ペッパーミル・パフォーマンス"を浸透させたラーズ・ヌートバー(カージナルス)は、5試合で打率.231、1本塁打、3打点。高い出塁率(.565)をキープしている。激増した日本の野球ファンに引き続き雄姿を見せてほしい。

 大会MVPを獲得した大谷翔平(エンゼルス)は、投手として4試合に先発し2勝、防御率0.86。打者としては17試合に出場し、打率.281、4本塁打を記録している。

 ヤンキー・スタジアム100周年記念日というメモリアルゲームとなった、日本時間4月19日のヤンキース戦では、「2番・DH」でスタメン出場し、7試合ぶりの本塁打となる先制2ランを放った。

 他にも、得点につながる今季初の盗塁も決めるなど躍動して勝利。日本のニュースでは、大谷の活躍を伝えたあとに「なおエンゼルスは......」と敗戦をつけ加えるケースが多く、「なおエ」という言葉も広く浸透しているが、チームとしてはそれを打破したいところだ。

 まだシーズンは序盤も序盤。侍戦士たちの、これからの活躍に期待したい。