東京ドームの裏手に広がる、江戸時代から続く由緒ある高級住宅街。

それが、武家屋敷の街として栄えた元祖“山の手”エリア「小石川」だ。

教育熱心なファミリー層が多く暮らし、真面目で堅実なイメージが根付く。

なぜ、この街に大人は魅了されるのか。住民たちの暮らしぶりを徹底解剖する!

東京の街の個性を徹底調査する連載「東京ご近所探訪」。過去にご紹介した街も、要チェック!


今月のエリア【小石川】


今回スポットを当てるのは、文京区小石川。「東京ドーム」の裏手に広がるエリアであり、江戸時代から続く由緒ある地名だ。

駅でいうと、東京メトロ丸の内線の後楽園駅から茗荷谷駅にかけて。春日通り北側に広がる小石川1丁目から5丁目までの一帯を取り上げる。



小石川の東側を走る千川通りは「えんま通り商店街」と呼ばれ、にぎわう。ビルの合間に「東京ドーム」が浮かび上がる


徳川家ゆかりの「傳通院」の参道でイタリアン『チッタアルタ』を営むシェフの茂呂岳夫さんは、住まいも小石川。

この一帯について「歴史と文化が根付いていて、知性を感じる街。国立大学の附属校や公立のモデル校があるので、教育熱心な方が子育てのために引っ越してくることも多いです。非常に治安がいいので、安心して子育てができますね」と語る。


洗練された大人の空間で、絶品イタリアンに感動する『チッタアルタ』


スペインの『エル・ブジ』、イタリアの『ダヴィットリオ』で研さんを積んだ茂呂シェフ。




メニューは、18品の料理とペアリング(3杯〜)で、クリエイティブな演出を満喫できる「おまかせコース」(14,800円〜)のみ。



また、子供の小学校入学に合わせて小石川で暮らし始めた住民によれば、「親御さんは、医師や弁護士、金融関係など堅い職業の方が多い」とも。

周辺には英語教育に力を入れている幼稚園も多く、子育て環境は都内有数と言えるだろう。




かつて松平播磨守上屋敷があったことにちなんで命名された「播磨坂」。

桜並木の緑道が整備され、春は桜色に染まる。




谷と丘が入り組む起伏に富んだ地形の小石川台地ゆえ、坂が多い。

春日通りこそ交通量は多いが、1本内側に入れば静かに時が流れる。


目利きに優れた地元民たちは、上質な暮らしを求める


小石川は企業の本社も多く、中でも「エーザイ」をはじめとした医療系が目立つ。

「病院や中小の医療機器メーカーが多いことも、小石川の真面目で堅実なイメージにつながっていると思いますね」と語るのは、熟成肉を楽しめる『中勢以 小石川店』でブランド統括を担う大八木賢一さん。

平日はビジネスマンの接待利用が多いというが、週末はベビーカーを押してくる若い夫妻から80代の元気な老夫婦まで、地元客が大半を占めるという。

「週末は無農薬や減農薬の野菜も販売しています。地元の方が求めているのは、“安さ”ではなく、安全で美味しい国産の食材なんだと実感します」と話す。


極上の熟成肉が、感度の高い大人の舌を満足させる『中勢以 小石川店』


店先にある精肉店のショーケースで選んだ肉を、奥のレストランで楽しむことも。




ゆっくり火を通したステーキは、肉の味や香りがダイレクトに味わえる。

「神戸牛ウチモモ(450g)」10,236円。



また、『パティスリーレセンシエル』のオーナーパティシエ、牛島源希さんは、こう語る。

「地元の常連さんは、本当に品のいい方ばかりですね。私たちは“香り”をテーマにしたケーキを提供していますが、そういった新たな試みが受け入れられる器の大きさや、好奇心の旺盛さも、小石川の人々の特徴だと思います」


「香り」で楽しませ、スイーツ好きを魅了する『パティスリーレセンシエル』


「香り」をテーマに、ハーブやスパイスを採り入れたケーキが並ぶ。

バジルが爽やかなスペシャリテの「ニソワ」(458円)。




イートインでは、ケーキにフルーツを添えて提供。



街を歩けば、喧騒は皆無。落ち着いた雰囲気に満ちており、格式の高ささえ感じる。

そこに暮らすのは、本当に上質なものを求める人々。

江戸時代より、武家屋敷の街として栄えた元祖「山の手」エリア。その堂々たる風格は、令和の今もなお息づいている。

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