ボクサーはアドベンチャー人気の火付け役
まさかのパリダカール圧勝の衝撃!

BMWボクサーといえばGS。巨大な車格で周囲を圧倒する迫力で、これを駆るベテランライダーの何と自信に満ちた振る舞いなことか。
いま流行りでどのメーカーもラインナップしているアドベンチャーのカテゴリー。
そもそもはこのBMWのGSに端を発したジャンルで、'80年代にパリダカールで並みいるオフロードバイクを尻目に圧勝、世界を驚かせたポテンシャルが多くのライダーのバイクライフに変革を与えたのだ。

BMWは1923年、R32というコンプリートバイクの生産をはじめたのがバイクメーカーとしてのルーツ。
天才エンジニアのマックス・フリッツが創造した、水平対向ツインを縦置きに配置して、低重心化と単発飛行機と同じ安定性に優位なレイアウト、そして耐久性で差のつくシャフトドライブに、クラッチやミッションをひとつのユニットへ収めた当時は画期的な構成が、まさかの100年を超え現在も通用するという奇跡を生んだのだ。

ただ日本車のナナハン攻勢で、英国メーカーが相次ぎ倒産したのに続きBMWも存亡の危機を迎えた'80年代序盤、まさかの逆転劇がパリダカール・ラリーでの圧勝だった。
もともと低重心でどんな道でもカッ飛んでいく強みを発揮していたボクサーは、マン島T.T.も制したが、活躍の場が第二次大戦の砂漠で戦車部隊の偵察任務となり相手国もコピーする圧倒的な差をつけた実績があった。

砂漠でのレース、それなら出番だと軽量なオフロードバイクを蹴散らす姿に世界は仰天、このマイノリティ且つサバイバルなシチュエーションに、広大なアメリカを旅するバイカーたちの目が釘付けになったのだ。

BMWで最多の生産台数まで人気が集中!

アメリカを中心に、それまでビッグツアラーが主役だった長距離ツーリングは、大きなパニアケースと巨大スクリーンを装備した、カスタマイズGSが主役となっていった。
BMWもこのブームに応え、標準装備をよりサバイバル仕様とするなど完全に波に乗り、気がつけばGSはBMWの中で最多の生産台数を誇るまでになったのだ。

これを他メーカーが黙って見ている筈もなく、現在のどのメーカーにもアドベンチャーのカテゴリーがある状況へと繋がっていった。

乗ると逞しさに安心感と自信がみなぎり、
自分がマッチョになれた気分に浸れる

大きなバイクを駆る優越感、GS乗りでなくとも想像がつく巨大な車格は圧倒的だ。
しかし実際に乗ると、その大きく重そうな気配は全くない。
この操りやすさと圧倒的な安定感は、年齢を加えたライダーには疲れにくいメリットが大きく、パッケージを気にせず気軽に大量の荷物を積み込めるパニアケースと共に、旅バイクはこれしかない!と思わせてきたのだ。

そうしたサバイバルな仕様は、エンジン性能からハンドリングまで、他とは一線を画した高い完成度にあり、これがロードモデルでも乗りやすさとツーリングユーティリティの高さとなり、街乗りのロードスターからツーリングスポーツのRSと、知る人ぞ知るオトナのベーシックバイクとしての評価は世界中で高い。

しかも近年排気量もアップ、ビッグボアから瞬時に路面を蹴るマッチョなトルクは、ベテランのやんちゃ気分を愉しませる魅力に満ちている。
用もないのに思わずスロットルをガバッと捻ってしまう、この醍醐味感はたまらない!

類をみないハイテクエンジンへと進化

こうして一時は風前の灯火だったボクサーエンジンは、空冷から油冷、そして水冷化されながら、OHV→OHC→DOHCとメカニズムもハイエンド化。
いまやバルブ駆動も回転域によって異なるエンジン特性が得られる、超ハイメカニズムを採用するなど、延命ドコロか4気筒勢に他のツインを引き離す勢いだ。

タンデムも瞬く間に慣れて楽しめる驚きのポテンシャル……

そしてボクサーの秘めたる他にないポテンシャルとして、タンデムのしやすさがある。
縦置きの安定感と軽快感の両立、そして極低速までフラつかない絶大な安定性。
タンデムでフロントが軽くなったり、走りだした途端にどちらかへ車体が持っていかれる、あのビギナーでなくても緊張する違和感が皆無なのだ。

新し過ぎる感性に馴染みにくいトラディショナルが好みな層へ向けたnineTシリーズも、より幅広いボクサーファンを生むだろう。
さらにビッグでクラシカルなR18も、マイノリティ好きなオトナごころをくすぐる存在だ。
100年を超え、なおも進化するボクサーツイン。その強烈な個性とパーフェクトなパフォーマンスは、バイクライフに一度は経験しておきたい世界といえる。

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