「妬み」と「嫉み」はいずれも似たような感情を表す言葉ですが、それぞれの詳しい意味や正しい使い方をご存じでしょうか。

本記事では「妬み」「嫉み」の意味や使い方と例文、類語や英語表現を紹介します。さらに、混同しやすい「僻み」「恨み」との違いについてもまとめました。

「妬み」「嫉み」の読み方や意味、使い方や類語を解説します

「妬み」「嫉み」の読み方と意味とは

「嫉妬」という言葉があるように、似た意味を持つ「妬み」「嫉み」について、それぞれの読み方と意味を見ていきましょう。

「妬み」の読み方と意味

「妬み」は「ねたみ」と読みます。ただし常用外として「そねみ」と読むケースもあります。

「妬み(ねたみ)」は能力・容姿・立場などのあらゆる物事について、自分より優れている他人に対し、うらやましさのあまり憎く思ってしまう感情のことを指します。

例えば、同僚が評価されていることをうらやましいと思い、「なぜあいつばかり評価されるんだ」と憎らしく思う感情を表現する言葉が「妬み」です。

「嫉み」の読み方と意味

「嫉み」は「そねみ」と読みます。ただし「ねたみ」と読むケースもあります。

「嫉み(そねみ)」は、他人の長所や幸福をうらやむ気持ちが表現され、うらやましさが募って悔しく思う感情が含まれています。

「妬み(ねたみ)」で用いた、「高く評価される同僚とそうでない自分」の例で解説すると、同僚に対してうらやましいと思うあまり、「どうして自分は評価されないんだ」と悔しく思い、腹立たしい感情を表現する言葉が「嫉み」です。

「妬み」「嫉み」に共通する意味と違い

「妬み」「嫉み」は、共通する意味と異なる意味合いの両方を持ち合わせています。

相手の良いところや幸運に対し、うらやましく思う様子を意味する点は共通です。一方で「うらやましい」の後の感情に違いがあります。

「妬み」はうらやましくて「憎く」思う感情を表し、相手に向けたネガティブな感情を表します。「嫉み」はうらやましくて「悔しく」思う感情で、これは相手というよりは、自分自身の中にある感情を表す言葉です。

「妬み」「嫉み」の正しい使い方

「妬み」は名詞ですが、動詞の「妬む(ねたむ)」として使われることも多いです。例えば「友人を妬む」「知人に妬まれる」などのような具合です。

「嫉み」も名詞で、動詞の「嫉む(そねむ)」という言葉も存在はしますが、使われることはあまり多くないでしょう。

そもそも名詞の「嫉み」自体も単体で使われることは少なく、「妬み嫉み(ねたみそねみ)」という形で使われることが多いです。

「妬み(妬む)」「嫉み」の例文



ここからは、「妬み(妬む)」と「嫉み」が使われた例文をご紹介します。「妬み」と「嫉み」は、意味が似ているため使い分けの難しい言葉です。例文を通してニュアンスの違いや使い方を理解しましょう。

○「妬み(妬む)」の例文

彼はすぐに出世し、同僚たちからの妬みを買った。

「彼」が評価されて出世したことを、「自分も出世したい」とうらやましく思い、憎らしく感じていることを表す例文です。自身が出世できなかった悔しさよりも、「彼」を憎らしく思う感情が強いため、「妬み」が使われています。

「妬みを買う」は、よく使われる言い回しなので覚えておくといいでしょう。

「彼がうらやましい気持ちはわかるけど、妬みから悪口を言うのは良くないよ。」

これは、「彼」のことがうらやましく、憎いあまりに、つい悪口を言ってしまったことを、戒められている場面の例文です。

彼女の美貌は、周囲の女性たちから強く妬まれた。

動詞の「妬む」の例文も紹介します。こちらは周囲の女性が「彼女の美貌」を他の女性より優れていると感じており、美貌がうらやましいと同時に、憎らしく思ったことを表す例文です。

○「嫉み」の例文

友人の成功に対して、嫉みの感情を抑えられない。

何らかの成功を収めている友人に対し、うらやましく思うと同時に、成功していない自分自身に対する悔しさを表す例文です。

僕は周囲からの嫉みの対象となってしまった。

文中の「僕」は周囲の人々には無いものをもっており、周囲の人々が「僕」に対してうらやましさと悔しさを抱いていることを表す例文です。

「妬み」「嫉み」と「僻み」「恨み」の違い



「妬み」「嫉み」と似た言葉に、「僻み(ひがみ)」「恨み(うらみ)」という言葉もあります。

「妬み」「嫉み」と「僻み」「恨み」には、どのような違いがあるでしょうか。

先に解説したように、「妬み(ねたみ)」はうらやましくて憎く思う感情を、「嫉み(そねみ)」はうらやましくて悔しく思う感情を意味しています。

「僻み(ひがみ)」は、ひねくれた考えや、物事の捉え方を自身で曲げて、悪い方の考えに持っていくことを意味する言葉です。

例えば褒めてもらった相手に対し「お世辞を言っているだけで、内心はそんな風に思ってないだろう」とネガティブな方向に考え、素直に受け取らないことを「僻み」と言います。

「恨み(うらみ)」は、他人の考えや振る舞いを不満に感じ、憎む気持ちを意味する言葉です。「妬み」「嫉み」のようにうらやむ感情は含まれておらず、怒りや憎しみの感情を意味します。

「妬み」「嫉み」の類語・言い換え表現



続いては、「妬み」「嫉み」の類語をご紹介します。

○嫉妬(しっと)

「嫉妬」とは、自分より優れた部分を持つ相手や、幸福な状態にある相手に向けた、うらやましい、憎いなどのネガティブな感情を指す言葉です。自分の持つ何かが奪われそうになった際の苦痛も指します。

「嫉妬」は意味が「妬み」と非常に似ていて、同様の意味合いで使われるケースもある言葉です。

また恋愛において、自分が愛する人の愛情が、他人に向けられるのを恨んだり憎んだりする感情のことも指します。

○やきもち

漢字で「焼き餅」と書くこともあります。「嫉妬」の意味のうち、恋愛に関わるネガティブな感情のことは「やきもち」とも言います。

つまり、自分が愛する人の愛情が、他人に向けられるのを恨んだり憎んだりする感情のことを指します。

「嫉妬する」は、「やきもちを焼く」という形で表すことができます。

○羨望(せんぼう)

「羨望」はうらやむことを意味する言葉です。自身にはない他者の優れた部分への渇望を指します。「羨」は訓読みでは「羨ましい(うらやましい)」と読むので、イメージがしやすいでしょう。

「羨望」はどちらかというと、ポジティブなニュアンスがあります。例えば「彼は羨望の的となった」「皆一様に、彼に羨望の眼差しを向ける」などのように、優れた人への憧れや、その人のようになりたいというの気持ちも含まれています。

一方「妬み」「嫉み」はネガティブな感情を表しており、憧れのような意味合いはありません。

○やっかみ

「やっかみ」は、うらやましく思い、憎らしく思うことを意味する言葉です。「妬み」もうらやましくて憎く思うことを表しており、同義の言葉であるとわかります。

ただし、「やっかみ」は主に関東地方で使われる言葉です。一方「妬み」は、地域によらず共通で使われています。

動詞だと「やっかむ」です。

「妬み」「嫉み」の英語表現



「妬み」「嫉み」の英語表現をご紹介します。

日本語の場合、「妬み」と「嫉み」の意味には違いがありますが、英語表現では区別されておらず、ともに「jealousy(jealous)」や「envy」を使用することが多いです。

・His colleagues were jealous of his promotion.

(彼の出世は同僚たちからの妬み嫉みを受けた)

・I can't control feelings of envy towards the success of friends.

(友人の成功に対して妬み嫉みの感情を抑えられない)

「jealousy」には「妬み」「嫉み」の意味のほか、恋愛面での「やきもち、嫉妬」という意味もあります。日本語でも「ジェラシー」というカタカナ語が使われているのでイメージしやすいでしょう。

「envy」は「妬み」「嫉み」の意味のほか、「羨望」という意味もあります。

○「妬み」「嫉み」の違いを正しく理解しよう

「妬み」「嫉み」の意味や違い、使い方について解説しました。

うらやましく思うあまりに相手を憎く思う感情を表す場合は「妬み」、うらやましくて悔しい感情を表す場合には「嫉み」を使います。

「うらやましい」と思った後に、どんな感情があるかが使い分けるポイントです。違いを理解し、正しく使いましょう。