「放散痛」とはどんな痛み?関連痛との違いや原因・症状など医師が監修!

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放散痛という症状は、本来の疾患部位とまったく違う箇所で痛みを感じるものです。関連痛というよく似た症状がありますが、その発症のメカニズムは別のものとなっています。

放散痛で感じる痛みは病気の患部と違う部分で感じるものなので、関係のあるものとはまるで思わないでしょう。医師からの診察を受けて放散痛とその原因の病気を知った時には驚かれるかもしれません。

誰にでも起こる症状ではありませんが、放散痛という症状がどういったものかを理解すると隠れていた病気に対して早期に対処できるきっかけになることもあるでしょう。

放散痛とは

放散痛とはどのような病気(痛み)でしょうか?

放散痛の一例を挙げると、腰の痛みという症状があります。一般的に腰の痛みというとぎっくり腰や神経痛などの場合を思い浮かべるでしょう。しかし放散痛の場合では思い当たる原因が不明なのに、痛みがあるといったことが起こります。
その痛みの原因となる病気は狭心症などの心臓病の可能性があります。なお放散痛で起こる腰の痛みは、ぎっくり腰などのように一定的に長く続く痛みとは限りません。
痛みが現れたり消えたりを繰り返すようなこともあります。また痛みの現れる頻度や痛みの強さもその時によってまちまちになることがあるでしょう。

関連痛との違いを教えてください。

放散痛とよく似た症状が関連痛というものです。関連痛も発症する原因の部位と実際に痛む部位が違っているものです。関連痛が起こる主な原因は内臓の障害によるものといわれています。
内臓の障害以外の原因として、筋肉や関節の障害による関連痛もあります。放散痛と関連痛との違いは痛みを感じるメカニズムが違うものだという点です。
関連痛の場合は内臓などの障害による痛みの情報が、脳に伝わる際に誤認識してしまうことで発症するものです。痛みの情報は末梢神経を通って脊髄に入力されます。脊髄に入力された痛みの情報が脳に伝達される際、皮膚の痛覚情報と間違ってしまうことが関連痛の原因とされます。

見分ける方法はありますか?

痛みの感じ方は各人によって違うので、確実に見分けることは難しいかもしれませんが、放散痛と関連痛のメカニズムの違いが痛みの感じ方にも現れてくるでしょう。
放散痛の痛みは、抹消親権を圧迫することによって発症する痛みです。腰部脊柱管狭窄症による放散痛では、腰局所の神経の圧迫などで起こります。この場合の痛みは臀部から足先に響くように広がる感覚があるでしょう。
関連痛の代表的な痛みには左肩に発症するものがあります。左肩の痛みは狭心症などの心臓病が原因となっています。心臓の障害による関連痛では右肩が痛くなることは通常はありません。右肩が痛む場合は、胆石などによる胆嚢の障害に伴う場合が多くなります。
このように特定の部位が痛くなる場合、関連痛の可能性があるといえるでしょう。放散痛では痛みの部位が広く現れるという特徴があります。

放散痛が起こる原因を教えてください。

放散痛が起こる原因は一般的に末梢神経の障害によるものです。わかりやすい例は、かき氷など冷たいものを食べた時に感じる頭の痛みでしょう。これは冷たいものが喉の神経を刺激したことによって頭が痛むというものです。
関連痛のように痛みの原因が痛みの情報の伝達間違いというものとは異なり、放散痛では神経に病変がある可能性が高くなります。末梢神経の障害の場合、圧迫感を伴ってビリビリとした痛みが広がるという特徴が感じられるでしょう。
そのために痛みを感じる部位が広いだけでなく原因となる障害は別の部位にあるので、特定するのが難しい場合も多いです。

どのような症状がみられますか?

放散痛の症状として現れるのは、末梢神経の障害による圧迫感を伴ったビリビリとした痛みが広がるといったものが挙げられるでしょう。例えば前述したような腰部脊柱管狭窄症による痛みがあります。また狭心症の患者さんの中には狭心痛と呼ばれる胸部症状が現れる場合があります。
これは胸痛という表現で訴えられることが多いのですが、実際に感じる痛みは締め付け感・圧迫感・息苦しさなど、単純に胸が痛むというものとやや異なった痛みとして訴えられることが多いです

放散痛の受診と治療

受診を検討するべき症状を教えてください。

放散痛という症状はそれ自体が痛みの原因と別の部位で起こるものなので、受診を検討するという状況でない場合もあるでしょう。狭心痛のように狭心症を発症している場合であれば、即受診しなければならないようなこともあります。
狭心症の場合では関連痛による痛みだったということもあり得ます。痛みの部位に限らず放散痛から原因となる障害の特定は難しい場合も多いので、自らの判断で受診を検討するのではなく、原因のわからない痛みであれば早めに受診してください。

放散痛を疑う場合、何科を受診すれば良いでしょうか?

放散痛による痛みには圧迫感を伴う痛みが現れるという特徴がありますが、痛む部位が広範囲になる場合が多いうえに原因となっている障害の特定が難しいという問題があります。関連痛のように痛む部位と障害を起こしている部位が違うという状況のため、痛みの直接の原因を特定するまで時間がかかることもあるでしょう。
まず初めに受診するのは痛む部位に該当する科にしましょう。独断で受診する科を決めるのは誤診につながる可能性があります。

どのような検査を行うのでしょうか?

受診の際、どういった痛みなのかをできるだけ正確に伝えることが重要なのですが、それによって医師による検査も変わってくるでしょう。
例えば椅子に座った状態で、前屈・後屈・側屈などをしてもらい、その状態で圧迫負荷をかけるといった検査をすることもあるでしょう。首を前屈したり後屈したり左右に振ったりなど、様々な動きを試して痛みがどの部位に出るのかを把握していくこともあります。
このように丹念な身体的検査が重要になります。またMRIなどで坐骨神経痛のような神経根の圧迫などを探す検査も行われる場合もあるでしょう。

治療方法を教えてください。

放散痛という症状はそれ自体が病気というわけではないので、放散痛そのものの治療方法はないというのが答えです。
しかし放散痛ではなく、放散痛の原因となっている障害を特定して、その障害に対する治療を施すことが治療方法といえるでしょう。こうした治療によって放散痛の原因となっている病気を治すことができれば、放散痛も解消されることになります。

放散痛の予防

痛みを感じた場合の応急処置方法はありますか?

体に感じる痛みが、その原因となる障害によるものだと判断がつかない場合、放散痛の可能性があります。しかしその痛みは関連痛の可能性もあるでしょう。いずれの場合でも原因が特定できない場合は、痛みを感じる部位に対して処置を施すことは間違いではないでしょう。
患部に対して処置を施しても効果がない場合、受診時にその痛みの詳細を医師に伝えることは重要です。もし放散痛である場合には、丹念な検査によって原因となる障害を特定し治療を施してもらえるでしょう。

予防する方法はありますか?

放散痛はそれ自体が病気というものではなく、原因となる障害(病気)によって引き起こされる症状です。そのため放散痛に対する予防ではなく、放散痛を引き起こす病気に対しての予防が有効だといえるでしょう。
一般的ではありますが規則正しい生活やバランスの良い食事、適度な運動などによって健康を維持することが予防方法といえるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

放散痛は、圧迫感のある痛みが広く感じられるものです。関連痛という症状にも似ているという点が対処が難しいといわれることもあります。体のどの部分でその症状が出るかによってある程度、原因となる病気や障害の目安はつくかもしれません。
ただし特定するためには丹念な検査が必要になります。確実に原因を取り除くためには、できるだけ詳しく正確に医師に伝えましょう。

編集部まとめ


放散痛と関連痛は症状の現れ方が似ているだけでなく、原因の特定が肝心な症状でもあります。痛みを感じるメカニズムが違いますが、ともに重大な病気が原因となっている可能性があります。

痛みの原因が特定できない症状を抱えている場合、放散痛もしくは関連痛としての症状が出ているのかもしれません。

もしも受診で痛みが解消しないようなことがあったら、放散痛や関連痛による可能性を医師に相談することも症状の解決につながることになるでしょう。

参考文献

関連痛・放散痛

狭心症の治療|近畿大学病院