「足蹠多汗症」とは?足の汗で悩んでいませんか?対処法などを医師が監修!

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足が蒸れて臭いが出る・靴下が手放せない・常に靴下の替えが必要…など、足の汗に対し悩みを抱えている方もいるでしょう。

もしかしたら、足の裏から大量に汗が出る足蹠多汗症(そくしょたかんしょう)かもしれません。

多汗症は脇・手のひらだけでなく足の裏でも起こります。多汗症は病気であり、病院で治療できる病気です。

そこで今回は足蹠多汗症の症状・原因・治療方法を詳しく解説します。靴や靴下の選び方もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

足蹠(そくしょ)多汗症の症状と原因

足蹠多汗症とはどのような症状ですか?

足蹠多汗症は病気であり、足の裏から大量に汗をかくのが特徴です。汗を大量にかく以外の症状は特にないですが、QOL(日常生活の質)を著しく下げる傾向にあります。
人前で靴を脱げない・臭いで周囲に不快を与えるのか心配など精神的苦痛を感じ、他人を避ける方も少なくありません。
発汗は体温調節や皮膚表面の保湿には欠かせません。夏に汗が多いのは汗をかくことで皮膚表面の温度を下げようとしているからです。逆に冬は熱が皮膚表面から逃げないようあまり汗をかかないのです。
足の場合は汗が出ることで皮膚表面を軟らかくし、滑り止めや摩擦を軽減する役割があります。しかし、汗が大量に出れば蒸れ・臭い・痒みなど違う問題が発生します。

足蹠多汗症の原因を教えてください。

実は足蹠多汗症の原因は未だにわかっていません。しかし、自律神経との関係性が高いといわれています。自律神経の中に汗を出す交感神経という神経がコントロールしています。
足蹠多汗症を含む多汗症の方は、交感神経が優位になっている可能性が高いです。そのため、少しドキッとしただけでも過剰な汗をかいてしまいやすいです。
これ以外に、遺伝的要素も考えられます。大量の汗をかく症状が他の家族にもみられることが報告されています。この他に、怪我や腫瘍などによる神経損傷も足蹠多汗症が起きる原因の1つです。

足の裏に汗をたくさんかくのはなぜですか?

多汗症がよく見られる部位(足の裏・手のひら・脇)には、汗が出る腺(汗腺)が多く存在しています。汗腺が多く存在するため、全ての汗腺からも汗が出ることで結果的に大量に汗をかいてしまうのです。
汗腺には2種類あり、体温調節のために汗を出すエクリン腺とワキガの原因であるアポクリン腺です。足の裏はエクリン腺しかありません。
足の裏のみ多汗症に罹患している方もいますが、手のひらにも多汗症がみられている方もいます。

足蹠多汗症の診断と治療

足蹠多汗症はどのように診断されますか?

皮膚科、もしくは多汗症を専門とする病院にて診断します。明らかに足全体が湿っている・靴下を穿き替えるほどの大量の汗をかくなど、ご自身も自覚している場合は視診にて診断されます。
視診以外にも診断基準があり、内容は下記のとおりです。

発症した年齢が25歳以下

左右どちらもにも症状がみられる

寝ている時は汗が出ておらず湿っていない

週に1回以上の多汗のエピソードあり

家族にも同じ症状がみられる

QOLが著しく低い

足の裏といった局所に原因がわからないまま6ヶ月以上の発汗がみられ、かつ6項目中2項目以上が当てはまれば足蹠多汗症と診断されます。
重症度を判定する基準もあり、自覚症状から4つにわけられたHyperhidrosis disease severity scale(HDSS)にて判断します。
1.自覚症状がない
2.汗はかくが気にならず・日常生活に少し支障をきたす
3.汗が気になり日常生活に支障がある
4.汗がすごく安心して日常生活が送りづらい
4つの中で「重症」と位置づけられているのは、3・4です。この他に、発汗量にて重症度を判定できます。
特殊な紙に手を付けると汗のところだけに反応し、色が変わった範囲で重症度を判定し、換気カプセルを用いて発汗量を測定し重症度を判定します。

足蹠多汗症の治療方法を教えてください。

主な治療方法は塩化アルミニウム溶液イオントフォレーシスです。多汗症と診断された場合、どの部位でも塩化アルミニウム溶液からスタートします。
原発性局所多汗症診療ガイドラインでも、塩化アルミニウム溶液を第一選択治療としています。塩化アルミニウム溶液以外に、第一選択治療であるイオントフォレーシスに有効的な治療法です。
水の中に足の裏を入れ、微弱電流を流します。通電することで発生する水素イオンが汗の出る部分を壊すことにより発汗を抑えるのです。通電中はピリピリしますが、ものすごく痛いというほどではありません。効果が出るまでは定期的な通院が必要です。
足蹠多汗症と診断された場合、イオントフォレーシスの治療は保険適用されます。併用療法として、神経ブロック療法・レーザー療法・内服療法(抗コリン剤など)・心理療法をすることも可能です。

どのような薬が使用されますか?

前述のとおり、足蹠多汗症は塩化アルミニウム溶液を使用します。重症度によって濃度は異なるものの、20~50%濃度の塩化アルミニウム溶液を寝る前に塗布します。重症な方は塗った後にラップや靴下などで密閉するとより効果的です。
寝る前の1回で基本的には大丈夫ですが、汗で取れることもあるでしょう。その場合、再度塗っても問題ありません。塗る前に一度足を拭くと薬が浸透しやすく取れにくいです。効果が出るまでの2~3週間は塗り続けましょう。
効果が出てきたら、1週間に2~3回と徐々に減らすことも可能です。中には、塩化アルミニウムに皮膚がまけ、接触性皮膚炎を起こす可能性があります。その場合は速やかに中止をし、医師にご相談ください。
症状が改善されれば、医師の指示に従い治療を再開しましょう。塩化アルミニウム溶液は保険適用外になります。

ボトックス注射は足蹠多汗症に有効ですか?

はい、有効的な治療の1つです。ボトックス注射は第二選択治療として推奨しています。
足の裏に対して注入するボツリヌス菌毒素はA型(BT-A)です。このボツリヌス菌が最も神経から発汗を命令するアセチルコリンという伝達物質を抑制します。2cm間隔で注射をしていき、1週間ほどで汗の量が減り、効果は約6ヶ月持続します。
抑制効果の高いBT-Aですが、投与量が少なくなければ効果があまり期待できないため、重症度に合った投与量が必要です。残念ながら、足蹠多汗症へのボトックス注射は保険適用外です。

足蹠多汗症の予防とセルフケア

足蹠多汗症を予防する方法はありますか?

足蹠多汗症は交感神経が優位になっている可能性が高いと考えられています。そのため、予防としては交感神経が優位にならないようにするとよいでしょう。
身近な予防法といえば、食生活の見直し生活習慣の改善です。刺激になる食べ物(香辛料・酸味・カフェインを含む飲み物など)は交感神経を高める可能性があるため控えましょう。
禁煙習慣がある方も禁煙したり本数を減らしたりするのも1つです。タバコに含まれるニコチンが交感神経を高める可能性があるといわれています。
あとはリラックスする時間を設けてください。ストレスを溜めないことは難しいですが、リラックスする時間があることでストレスを軽減でき交感神経の抑制につながるでしょう。

自宅でできるセルフケア方法を教えてください。

前述のとおり、食生活の見直し・生活習慣の改善も自宅でできるセルフケアの1つです。その他に、睡眠時間を確保するのも自律神経を整えるケアにつながります。
最近睡眠時間が取れていないと思い当たる節がある方は、自律神経を整えるためにも少しでも早く就寝するよう日常生活を見直してはいかがでしょうか。

靴下や靴はどのようなものを選んだらよいですか?

大量の汗をかくため靴下は必須ですが、汗を吸収しやすい天然素材の靴下がおすすめです。綿は2倍、毛は3倍の汗を吸収します。靴は通気性のよいものを選ぶとよいでしょう。
靴も天然素材の靴がおすすめです。しかし、技術の進歩にて合成皮革でも通気性のよいものがあるため、そちらを選ぶのも1つでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

汗=不潔と思われ、周囲の方を不快にさせているのではと悩んでいる方もいるでしょう。また、病院へ行くことで恥ずかしさや不安を覚える方もいるでしょう。
しかし、汗の量を抑え改善できる治療法はあるため、不安になることはありません。
継続的な治療が必要ではあるものの、続けることで汗をコントロールし汗に対する不安を取り除けるでしょう。そのためにも、一度診察を受けるようおすすめします。

編集部まとめ


足の裏に大量の汗をかく足蹠多汗症について解説しました。精神的に苦痛を感じたり恥ずかしさのあまり医師の診察すら拒んでしまったりしがちでしょう。

原因は未だに不明であるものの、治療方法は確立しています。適切な治療をすることで、汗に対する不安や精神的苦痛を和らげることは可能です。

特に日常生活に支障をきたすほど汗が大量に出る場合は、一度医師にみせることをおすすめします。診察を受けることで心にゆとりができ、精神的負担も減ることでしょう。

参考文献

Q1 多汗症とはどんな病気ですか?(日本皮膚科学会)

Q3 原発性局所多汗症の原因は何ですか?(日本皮膚科学会)