「耳だれ」の原因・応急処置手順はご存知ですか?医師が監修!
耳だれは耳漏(じろう)ともいわれ、耳から出てくる液体とその耳の状態のことを指していう症状です。
耳から流れ出る液体の状態は耳だれが起こる原因によって異なってくるものです。なにより耳から液体が出るという症状自体が不快で気になるだけでなく、心配にもなることでしょう。
もしも自分が耳だれになった場合、または現在耳だれが気になっている場合にどうしたらよいのかをここで詳しく解説していきましょう。
耳だれの原因とは?
耳という器官は大きく「外耳」「中耳」「内耳」の3つに分けられます。耳だれは主に外耳部分によるものと中耳部分によるものの2つがあります。それぞれの原因は以下のようになっていまして、原因は1つではないことが確認できるでしょう。
・外耳部分で発生する耳だれ:外耳部分の耳だれは外耳道で発生します。その原因は外耳道湿疹や耳かきのしすぎによるものと、細菌感染による炎症(外耳炎)によるものがあります。
・内耳部分で発生する耳だれ:中耳部分の耳だれの原因は中耳炎によるものです。なお中耳炎による耳だれは鼓膜穿孔(鼓膜に空いてしまった穴)から外耳道に流れ出す液体によるものです。
ちなみに耳かきによって湿った柔らかい耳あかが取れ、耳だれと似ている場合があります。湿った柔らかい耳あかは体質によるものであり、耳だれやその他の疾患ではありません。
耳だれの対処法
耳だれによって外耳道から出てくる液体には、水っぽいもの・血が混じるもの・膿が混じるものなど違いがあります。この違いは耳だれの原因となる疾患の種類によるものです。
どのような液体が出てきたとしても治療は必要になるでしょう。
しかし治療の前に、耳だれにならないための予防や注意を行うことも大切です。自分でできる予防や注意の方法をお教えします。
耳の中を清潔にする
耳だれを引き起こす原因の1つとなる外耳炎にならないこと、これが1つ目の予防です。
外耳炎は細菌感染が原因となり外耳に炎症を起こす疾患なので、耳の中を清潔にして細菌による感染を防ぎましょう。
ただし耳かきのしすぎはかえって外耳炎になる可能性を高めてしまいます。月に1回程度に留めておき、綿棒でぬぐい取るようにしましょう。
耳掃除の際はあまり耳の穴の深いところまで掃除しようとせず、入り口から1cm程度の深さで留めておきましょう。
耳を掻かない
耳の穴付近が痒いときなど、あまり気にせず普段からついやってしまいがちな行為です。耳を掻くことは外耳炎などを引き起こす原因となります。
掻くことによって外耳道に外傷を生じてしまい、炎症を起こす要因になるでしょう。
耳の痒みは外耳道内の耳あかの刺激・髪の毛などの異物が耳の中に入った刺激・外耳道湿疹などによって発生します。
耳かきによる耳あかや異物の除去で痒みの発生は抑えられます。しかし耳かきのしすぎは良くないので月に1回程度に抑えておきましょう。
外耳道湿疹のように耳かきで痒みが治まらない場合は耳鼻咽喉科での診察を受けてみてください。
鼻を強くかまない
耳と鼻は耳管という管で繋がっている器官です。このため鼻を強くかんでしまった場合、本来なら無菌状態である中耳の方へ鼻から細菌やウィルスが侵入してしまいます。
鼻を強くかむと急性中耳炎を発症させてしまう恐れがあるでしょう。
この時点で耳の痛み・耳が詰まる感覚・聞こえにくいという症状の他に、耳だれが生じることもあります。
また急性中耳炎をを繰り返したり治癒に長引いたりすると、慢性中耳炎になってしまう可能性があります。慢性中耳炎になると耳だれが多くなり、治療のために手術が必要になるかもしれません。
耳だれが起きてしまった場合の応急処置手順
耳だれが耳から出てきた場合、どうすればよいのでしょうか?耳だれには血が混じることもあります。
突然耳から出てきた液体に血が混じれば慌ててしまうかもしれません。とりあえず応急処置をして、病院に行くという方が多いでしょう。
このときに具体的に何をすればよいのかを覚えておけば、落ち着いて迅速な処置を施すことができます。
そこで、ここでは手近にあるものを使って行える応急処置を解説します。いざというときに備えて覚えておいてください。
濡れたティッシュで耳穴の外を軽く拭き取る
耳だれが出てきた場合はティッシュを濡らして硬く絞り、耳穴の外側だけを軽く拭き取るようにします。
このときに耳を強く拭いたり、ティッシュでコヨリを作って耳穴の中まで拭き取ったりはしないでください。
耳だれの原因となっている疾患の症状を悪化させることになりかねません。あくまでも耳穴の外を軽く拭き取ることが重要です
。子供の耳だれの場合は中耳炎による可能性があるので、耳を拭くと痛がることもあります。きれいにするためではなく、応急処置ということを忘れないでください。
すぐに耳鼻咽喉科へ受診する
応急処置により耳だれが止まったとしても、それは一時的に落ち着いただけにすぎません。
耳だれは疾患の症状の1つであって、外耳炎や中耳炎の他にもまれに重大な疾患の可能性もあります。なるべく速やかに耳鼻咽喉科へ行って受診しましょう。
耳だれから考えられる疾患
耳だれは各種の疾患の症状として現れるものであり、耳だれという疾患ではありません。
耳鼻咽喉科で診察を受け、どういった疾患による耳だれだったのかを把握しておきましょう。ここからは耳だれの症状が現れる代表的な疾患について解説していきます。
なお耳だれの症状が現れる原因は以下に解説する疾患だけでなく、他の疾患によって起こることもあります。しかし他の疾患にかかっている可能性はそう高くありません。
ただし可能性は低くても重大な疾患で耳だれの症状が現れる場合があるので注意しましょう。
急性中耳炎
耳だれの症状が現れる疾患の1つとして代表的なものが急性中耳炎です。子供に多くみられる感染症で、鼻から耳管を通って細菌やウィルスが中耳に侵入し、炎症を起こします。
症状としては耳の痛み・飛行機や気圧の変化で感じる耳の詰まった感じ・音の聞こえづらさなどがあり、耳だれの症状が現れることもあります。炎症が広がると内耳炎(めまいを伴う)・顔面神経麻痺・急性乳突洞炎(耳の後ろの腫れ)などが合併することがあるでしょう。
慢性中耳炎
急性中耳炎を繰り返すことや急性中耳炎の治りが悪く長引いてしまうなどにより、慢性化した中耳炎です。
症状としては、鼓膜に穴が開くことによる難聴・耳の詰まった感じ・耳だれがあります。感冒のとき・水泳後に耳の中が濡れているときなどに症状が顕著に現れるでしょう。
そのたびに耳だれを繰り返してしまいます。慢性中耳炎によって鼓膜に開いてしまった穴を閉じるためには手術する必要があります。
真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎は慢性中耳炎の1種で、真珠腫という塊が中耳からその周辺へと大きくなっていく疾患です。
真珠腫は白い真珠のような見た目をしており、中耳周辺の骨を溶かしながら大きくなっていきます。症状としては難聴・耳が詰まった感じなどがあります。
中耳より奥に大きく広がっていくとめまい・顔面神経麻痺などの症状も現れる可能性があるでしょう。
さらに頭の中に真珠腫が広がると感染を起こし、重篤な症状が現れることになるかもしれません。
真珠腫性中耳炎は多くの場合手術を必要とします。
また再発する可能性があるので、手術後も定期的な診察が欠かせません。まれにですが生まれつき真珠腫を持つこともあります。
外耳炎
外耳炎は鼓膜より外側で炎症が起こる疾患です。
原因は耳あかなどの異物による刺激・プールや風呂で耳に入った水・耳かきのしすぎ・不潔な耳かきの使用や指の爪でつけた外傷による細菌感染などがあげられます。
症状としては耳の痛み・ひどく腫れた場合の聞こえづらさ・耳の詰まった感じ・耳だれなどが現われるでしょう。耳の痛みは耳たぶを引っぱったり耳の入り口を押したりすると強くなります。
なお外耳炎による耳だれは、耳かきのしすぎの場合は漿液性、細菌感染の場合は膿性のものになります。
外耳道(耳の穴)から何らかの分泌物が流れ出ている状態のことを指します。専門用語では、「耳だれ」のことを耳漏といいます。急性あるいは慢性に発生し、耳が痛いという症状を伴うこともあります。
発生する原因によって、漿液性(さらさらした液体)や膿性(どろっとして臭いが強い液体)、血性(血液のような液体)などと、分泌物の性質が異なります。
例えば、耳かきのやりすぎによるものは漿液性で、細菌感染を起こすと膿性になります(外耳道炎)。
外耳(鼓膜より外側)の疾患だけでなく、中耳(鼓膜より内側)の疾患や、その他の疾患に由来するものに分かれます。また、怪我や腫瘍などが原因であれば、組織破壊を伴うために血性の分泌物を認めることがあります。
すぐ病院に行ったほうが良い「耳が痛い」症状は?
頭部打撲後に耳だれが続く場合はすぐに受診を検討しましょう。
耳だれに加えて発熱や耳の痛みなどがある場合が早めの受診を検討しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、耳鼻咽喉科です。
問診、診察、細菌検査、耳鏡検査などが施行されます。怪我をきっかけに「耳だれ」の症状が出現した場合は、問診、診察、細菌検査、耳鏡検査、画像検査(レントゲンやCT)などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
いつから耳だれの症状があるのか、数日以内に頭部打撲はあったのか、痛みや発熱、聞こえにくさがないかどうかを医師に伝えましょう。
まとめ
耳だれはほんの些細な行動から症状が現れることがある、身近な疾患といえるでしょう。実際には外耳炎や中耳炎による症状の1つです。
耳の清潔を保つことや耳かきをしすぎないようにして、外耳炎などの発症を予防しましょう。また中耳炎は子供がかかりやすい疾患であり、感冒から発症することもあります。鼻をかむときには注意してあげてください。
それでももし耳だれが流れ出る症状が現れた場合は、濡れたティッシュを硬く絞って耳の穴の周りを軽く拭き取ります。そして耳鼻咽喉科で受診をしましょう。
参考文献
耳の症状(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)