「ふくらはぎが痛い」ときの対処法・考えられる病気はご存知ですか?医師が監修!
ふくらはぎが痛いとき、まず筋肉痛やむくみなどを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
痛みが起こる場所としては誰しも起こる可能性があり、決して珍しくないため、痛みの原因は深刻なものではないと思われがちです。
しかし、痛みの原因にはただのケガなどではなく、病気によって引き起こされているケースもあります。
そこで本記事では、ふくらはぎが痛い原因についてご紹介します。考えられる病気・対処法・すぐに受診が必要なケースについても解説するので参考にしてください。
ふくらはぎが痛い原因は?
ふくらはぎが痛い原因には、さまざまなものが考えられます。誰しも起こるものであるため、原因を把握しておくことは非常に大切です。ここでは、ふくらはぎが痛い原因について、病気以外のものをご紹介します。
筋肉痛や肉離れなどのケガ
ふくらはぎが痛い原因としては、筋肉痛や肉離れなどのケガが考えられます。中でも筋肉痛は、誰しもなりやすいケガです。筋肉痛は、運動によって傷ついた筋線維を修復しようとするために起こる痛みです。そのため、激しい運動や慣れない動きをした次の日などに、筋肉痛としてふくらはぎが痛むことがあります。また、肉離れも痛みの代表的な原因といえるでしょう。肉離れとは、筋肉に力が入って収縮している状態で、引き伸ばされるような強い力が加わるときに起こる筋肉の部分断裂です。瞬発的な動作が求められるスポーツをしている最中になりやすい傾向があります。例えば、急激な方向転換・跳ねる・ステップを行うなどの動きを行うときに筋肉が伸ばされるような力が加わり、損傷するケースが多いです。
むくみ
ふくらはぎの痛みの原因としては、むくみも挙げられます。むくみとは、なんらかの原因により、皮膚や皮膚の下に余分な水分が溜まった状態のことです。通常は、毛細血管を流れる血液から水分が染み出し、同時に老廃物や二酸化炭素を含んだ余分な水分を吸収して血液に流れていきます。染み出る水分と吸収する水分が同じであれば問題はありませんが、上手く吸収されないなどの問題が起きると、皮膚の下に余分な水分が溜まってしまいむくんでしまうのです。むくみの原因としては次のようなものが考えられます。
長時間同じ姿勢を続ける
塩分の摂りすぎ
アルコールの摂りすぎ
冷え
長時間同じ姿勢を続けると、水分を含む血液の循環が悪くなり、水分が滞ってしまいます。また、塩分の摂りすぎやアルコールの摂りすぎもむくみの原因です。塩分を摂りすぎると、体内のナトリウム濃度が高くなるため、細胞の間に水分を溜め込もうとします。その結果、血管の外に染み出る水分が増えて溜め込み、むくみとなります。また、アルコールの摂りすぎは血管内脱水の作用があり、むくみへとつながるのです。アルコールを過剰に摂取すると、体の水分は失われ血液濃度は上昇します。すると、危険を回避するために血管内に水分を取り込み、血液濃度を低くしようと調整する機能が働くのです。このとき、取り込んだ水分の一部がむくみを引き起こしてしまいます。さらに、冷えもむくみの原因です。冷えた状態が続くと足の筋肉が固くなるため、血行が悪くなってしまいます。その結果、むくみを引き起こしてしまうのです。このような原因でむくみを起こした結果、ふくらはぎが痛むことがあります。
肉体的疲労
肉体的疲労によっても、ふくらはぎの痛みが起こる可能性があります。肉体的疲労とは、次のような状態のことです。
筋肉の疲れが溜まっている状態で運動を繰り返す
寒い日の運動時に準備運動をしない
オーバーペースで運動する
上記のような条件のときには、足に負担がかかり続けてしまい肉体的疲労が溜まっている状態です。そのため、ふくらはぎの痛みを感じることがあります。この状態が悪化すると、肉離れやこむら返りなどを引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
ふくらはぎが痛いときに考えられる病気・疾患
ふくらはぎの痛みの原因をご紹介しましたが、むくみやケガをしたわけでもないのに痛むのであれば、病気や疾患の可能性があります。見逃すと悪化を招く可能性もあるため、ここでは、ふくらはぎが痛いときに考えられる病気や疾患をご紹介します。
下肢静脈瘤
ふくらはぎの痛みで考えられる病気としては、下肢静脈瘤が考えられるでしょう。この病気は、ふくらはぎを通っている静脈にボコボコとしたこぶができる病気です。本来足の静脈は、足の筋肉によるポンプのような働きで、心臓に向かって血液を送ります。そのときに重要となるのが静脈弁と呼ばれる逆流防止弁で、この弁があるために逆流を起こすことなく血液を送り出せているのです。しかし、加齢・妊娠・長時間の立ち仕事などで静脈に負荷がかかると、静脈弁が壊れることがあります。すると、血液が逆流してしまい、下肢静脈瘤となってしまうのです。この病気を発症すると、数珠のようなこぶだけでなく、ふくらはぎの痛みや皮膚の変色などを引き起こします。
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
ふくらはぎの痛みは、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)によって生じている可能性もあります。深部静脈血栓症とは、足の中心に位置する深部静脈に血栓ができてしまう病気です。主な原因としては次のようなものが挙げられます。
長距離・長時間のフライトやバス旅行
長時間座ったままの状態
入院など長期間の安静状態
上記のような条件により血栓ができやすくなってしまい、血栓が詰まることでむくんだり痛みを感じたりするような症状が現れます。また、深部静脈血栓症は緊急を要するケースがあることに注意が必要です。深部静脈にできた血栓は、はがれてしまうと血液に乗って流れていきます。その結果、肺などの大きな血管に詰まることで、肺塞栓となって突然死に至るケースもあるのです。大変危険であるため、上記のような条件の中で突然の息苦しさや胸の痛みなどがあれば、早急に医療機関を受診する必要があります。
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症とは、足の動脈で動脈硬化が起こり、血管が細くなったり詰まったりする病気です。十分な血流が維持できなくなるため、足のしびれ・冷え・痛みなどの症状が現れます。主な原因としては、肥満・高血圧・糖尿病・喫煙などが挙げられます。また、50歳以上の男性に多い病気です。悪化すると、間歇性跛行と呼ばれる症状も現れます。この症状は、一定の距離を歩くとふくらはぎなどの痛みやしびれが生じて歩行が困難になるというものです。しばらく休むと痛みは治まりますが、再び歩くと痛みが伴い歩けなくなるということを繰り返します。皮膚に潰瘍ができ、重症化すると壊死が起こる可能性もあるため注意が必要です。壊死が起こった場合は、切断が必要となるケースもあります。
シンスプリント
シンスプリントも、ふくらはぎが痛いときに考えられる病気のひとつです。正式な病名は過労性脛骨骨膜炎というものであり、骨膜に炎症が起きることでふくらはぎやすねの痛みを発症します。この病気の主な原因としては、次のようなものが挙げられます。
オーバートレーニング
負荷のかかるランニングフォーム
下肢の筋力不足
オーバートレーニングと呼ばれる過度なランニングやジャンプを繰り返すことで、発症する可能性があります。また、誤ったランニングフォームにより負荷のかかる状態が続くことでも、足への負担が増えてしまい発症するケースも少なくありません。さらに、股関節などの下肢の筋力不足が原因となり、シンスプリントを引き起こすこともあります。特に股関節周りの筋肉は、ジャンプやランニングをするときに大きな役割をもちます。筋力不足や柔軟性の低下を起こすと、運動時にふくらはぎが不足分を補おうとするのです。その結果、足への負担が増えてシンスプリントを引き起こしてしまいます。
ふくらはぎが痛いときの対処法
ふくらはぎが痛いときの対処法は、原因によって異なります。先述したような肉離れなどのケガの場合、安静にして氷などで冷やすとよいでしょう。また、血行不良などによるむくみによって痛む場合には、適度に足を動かしたりマッサージなどのケアを行ったりすることが大切です。これによって、筋肉の緊張をほぐして血行を促すことができ、痛みを和らげます。しかし、病気や疾患によるふくらはぎの痛みの場合には、自己判断で運動などはせず専門の医療機関を受診しましょう。先述したような病気や疾患の場合には、重症化すると命にかかわる可能性もあります。早期の治療が必要となるケースもあるため、病気による痛みと疑われる場合には医師への相談を行うことが重要です。
ふくらはぎが痛いときにすぐに受診が必要なケースは?
ふくらはぎが痛いときにすぐに受診が必要なケースも把握しておくことが大切です。すぐに受診が必要なケースとしては、次のようなものが挙げられます。
痛みが引かない
歩くだけで繰り返し痛む
血管が膨らむような見た目の変化がある
通常、筋肉痛やむくみなどの場合は一時的な痛みであり、しばらくすると治まることが多いです。また、肉離れなどでも適切な対処を行えば痛みは次第に引いていきます。そのため、いつまでも痛みが引かないようであればすぐに医療機関を受診しましょう。また、歩くだけで繰り返し痛む場合にも注意が必要です。先述したような閉塞性動脈硬化症の病気の可能性があり、歩行が困難となります。放置すると重症化を招き、壊死を起こして切断を余儀なくされるケースもあるため、異変を感じたらすぐに受診しましょう。また、血管が膨らんだり皮膚が変色するなどの見た目に変化がある場合にも、すぐに受診すべきです。ケガなどによるふくらはぎの痛みであれば、このような見た目の変化まではほとんど起こりません。血管が膨らんだり皮膚が変色したりするような状態は、血栓によるものと考えられます。血栓ができた状態を放置しておくと、最悪の場合突然死を招く恐れもあるため、すぐに受診するようにしましょう。
すぐ病院に行ったほうが良いふくらはぎが痛い症状は?
片足だけに激しい痛みがあって、むくんでいる場合
息苦しさがあり安静にしても改善しない場合
これらの場合には、すぐに病院受診しましょう。
行くならどの診療科が良い?
主な受診科目は、整形外科、循環器内科、内科です。
問診や診察、画像検査(造影CTや造影MRIなど)、血液検査などを実施する可能性があります。
病院を受診する際の注意点は?
持病があって内服している薬がある際には、医師へ申告しましょう。
いつから痛みがあるのか、足のむくみはあるのか、考えられる発症のきっかけはあるのかなどを医師に伝えましょう。
治療をする場合の費用や注意事項は?
保険医療機関の診療であれば、保険診療の範囲内での負担となります。
まとめ
ふくらはぎの痛みは、さまざまな原因によって起こる可能性があります。ケガ・むくみ・肉体的疲労など、身近な原因から起こることも珍しくありません。
しかし、珍しくない痛みだからといって軽視してよいわけではありません。重い病気によって引き起こされているケースもあるためです。
痛みを感じた際に、原因や対処法を判断できるように正しい情報を把握しておきましょう。また、万が一痛み以外にも異変を感じた場合には、医療機関を早めに受診しましょう。
参考文献
(肉離れ)日本整形外科学会
閉塞性動脈硬化症(e-ヘルスネット)間歇性跛行(e-ヘルスネット)