TV/ストリーミング各社の直近の四半期収益報告書を見る限り、TV/ストリーミング業界の2022年第4四半期は、補正に終始した時期だったようだ。

ここ数年のストリーミング契約数の成長の波は、表面上は安定した状態が続いている。一方、広告市場は依然として下落しているものの、一部の企業が恐れていたほどの急落は見られなかった。とはいえ、TV/ストリーミングの経済は、世界の経済と同じように、依然として不安定な状態にあり、各社は経費の削減と収益性の証明に追われている。これが特に顕著なのが、ストリーミングサイドの企業だ。

以下は、各社の直近の収支報告からわかる、TV/ストリーミング業界について押さえておくべき重要ポイントをまとめたものだ。

ストリーミングサブスクリプション



サブスクリプションベースのストリーミング市場の安定。それを象徴する存在といえば、トップの地位を盤石なものにするNetflixをおいてほかにない。同社は2022年の第4四半期に、アナリストたちの予測を上回る770万人の契約者を新たに獲得した。ただし、これら契約者のうちのどれだけが、同社の新たな広告付きプランに申し込んだのかについては、そのデータは明らかにされていない。

1月19日に行われたNetflixの収支報告で、同社の共同CEOとして、会長に就任したリード・ヘイスティングス氏の後任を務めるグレッグ・ピーターズ氏は、「広告付きプランのテイクレートと成長は堅調であることがわかっている」というにとどまった。

同四半期におけるNetflixの契約者数の伸びと同じく驚かされたのが、ディズニー(Disney)が報告したディズニープラス(Disney+)の契約者数の減少であり、わずかではあるが、前四半期比で1%の減少となった。ディズニーはこの減少の原因を、(クリケットの)インディアン・プレミア・リーグ(Indian Premier League)の放映権を失ったことにより、同社のサービス「ディズニープラス・ホットスター(Disney+ Hotstar)」がインドと南東アジアの契約者380万人を失ったこととしている。対照的に、ディズニープラスは米国とカナダで20万人の契約者を新たに獲得した(とはいえ、同じくディズニーの子会社であるHulu[フールー]が同四半期に獲得した契約者数の4分の1にすぎない)。

2022年第4四半期における他の大手ストリーミングサービスに関しては、契約者数の伸びにばらつきが見られた。パラマウント(Paramount)のパラマウントプラス(Paramount+)が990万人の新規契約者を獲得する一方で、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)のHBOマックス(HBO Max)の新規契約者数は110万人だった。両者のほぼ中間の位置を占めたのはNBCユニバーサル(NBCUniversal)のピーコック(Peacock)で、同四半期に550万人の契約者数の増加を記録した。

各社の契約者数



2022年現在における大手ストリーミングサービス各社の契約者数は、以下の通りだ。

Netflix:2億3010万人
ディズニープラス:1億6180万人
HBOマックスとディスカバリープラス(Discovery+)※合計:9610万人
パラマウントプラス:5590万人
Hulu:4800万人
ピーコック:2000万人

広告の落ち込み



1月26日に行われたNBCユニバーサルの収支報告で、同社CEOのジェフ・シェル氏は、TV/ストリーミングの広告市場は2022年第4四半期に「底を打った」と述べた。いうまでもなく、NBCユニバーサルはテレムンド(Telemundo)のオーナーとして、他社がうらやむような状況にあった。テレムンドは米国内でワールドカップの放送を手掛け、NBCユニバーサルに前年比で4%の広告売上の増加を達成させた原動力のひとつとして各所で引き合いに出された。

Roku(ロク)の第4四半期収支報告は、落ち込みを見せる広告(一定の落ち込み、少なくとも急降下というわけではない)のさらなる証拠となっているように見える。RokuのCEO、アンソニー・ウッド氏は昨年11月、「第4四半期は第3四半期よりも広告市場が悪化する兆しが見えている」と警告を発した。しかし結局、事態がそこまで悪化することはなかった。Rokuは広告売上に関するデータを公表していないが、プラットフォーム売上部門(Rokuを介して販売されたストリーミングサブスクリプション、広告など)は前年比で5%の増加を記録した。2月15日に行われたRokuの収支報告で、退任することが決まっている最高財務責任者のスティーブ・ラウデン氏は、「第4四半期のプラットフォーム売上は我々の期待を上回るものだった」と述べている。

2022年第4四半期のTV/ストリーミングの広告市場については、それほどバラ色だったわけではない。たとえば、Huluの広告売上は、親会社のディズニーは具体的な数字こそ公表しなかったが、前年比で減少している。とりわけ悪い状態で2022年を終えたのが、従来型TVの広告市場だった。パラマウントのリニアTVの広告売上は前年比で7%減少した。AMCネットワークス(AMC Networks)の米国内広の広告売上も前年比で12%減少した。ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーのリニアTVの広告売上の落ち込みはさらにひどく、前年比で17%の減少を記録した。

利益と経費



サブスクリプション売上にも広告費にも問題はない。しかし、いま本当に重要なのは、企業が経費を差し引いた後に残る利益だ。この優先順位付けに拍車をかけている大きな原因のひとつは、従来型TVビジネスが持つ長期の収益性であり、そして、ストリーミングもビジネスとして十分に成り立つという証拠をNetflixが示したことによって、これがさらに加速している。

ここでもまた、物差しはNetflixになる。Netflixは2022年第4四半期、事業運営費(プロパティコストや設備費など)を差し引いた後、3億3200万ドル(約451億円)のフリーキャッシュフローを手元に残した。

対照的に、Netflixに立ち向かう従来型TVビジネスのライバル各社は、ストリーミングビジネスへさらなる資金を注ぎ込み続けている。パラマウントのストリーミングビジネスは、2022年第4四半期の調整後営業損失を5億7500万ドル(約781億円)と発表した。前年同期の調整後営業損失は5億200万ドル(約682億円)だった。ディズニーも、前年同期にストリーミングビジネスで5億9300万ドル(約806億円)を失ったのに続き、2022年第4四半期にも11億ドル(約1495億円)を失った。

しかしまたも、ストリーミングには収益性に通じる道があることをNetflixは示してきた。Netflixにもかつて、契約者を集めるために多額の資金を使った番組制作で自社のサービスを売り込む時期があった(同社の新たなライバルたちが、いままさにその渦中にいる)。そんなNetflixもいまは、番組制作費を切り詰めるようになっている。同社が2022年にコンテンツに投じた金額は168億ドル(約2兆2840億円)で、その額は2021年から5%の減少となった。

とりわけ積極的にストリーミングコストを削減して収益性の確保に取り組んでいるのが、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーだ。HBOマックスとディスカバリープラスを傘下に抱える同社は、2022年第4四半期にストリーミングビジネスで2億1700万ドル(約295億円)を失ったが、その額は前年同期の7億2800万ドル(約990億円)よりは少なかった。

2月23日に行われたワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーの収支報告で、同社の最高財務責任者であるグンナー・ウィーデンフェルス氏は、次のように述べている。「コスト面を見ると、すべての流れが正しい方向を向いている。エンゲージメントは改善しているし、解約率も改善している。そのおかげでマーケティング効率も上がっている。コンテンツ投資の合理化がうまくいっている証拠だ」。

大成功もないが冷え込みもない



総合的に見て、2022年の第4四半期はかつてのような大盛況の四半期ではなかったが、かといって寒々としていたわけでもなかった。いうなれば、冴えないというよりも地味な四半期だった。TV/ストリーミング業界には、いまも目に見えない不安が広がっている。それを思うと、各社の第4四半期の業績がけたたましい警鐘を鳴らさなかったという事実は、なおも続く重苦しさのなかでスタートを切った2023年の安心材料といえるかもしれない。

株主に宛てた1月19日付けの書簡のなかで、Netflixはこう述べている。「2022年は厳しい一年でした。しかし、スタートこそ困難に満ちていましたが、そのゴールは輝きに満ちていました」。

[原文:Future of TV Briefing: How TV and streaming businesses fared in the fourth quarter of 2022]

Tim Peterson(翻訳:ガリレオ、編集:分島翔平)