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食料品店やレストランのメニューの価格が上がり続け、多くのアメリカ人は好みのクイックサービスやファストフードのチェーン店で食事をするようになりつつある。ファストフードは「景気後退の影響を受けない」と宣伝されることが多いが、これらのチェーン店はメニューの価格が上昇しても、外食の費用を減らそうとしている食事客を引き寄せ続けている。マクドナルド(McDonald’s)とタコベル(Taco Bell)のオーナーであるヤムブランズ(Yum Brands)は2月初旬、同社の需要増加の理由が安価なメニュー品目だとした。バーガーキング(Burger King)、ティムホートンズ(Tim Hortons)、ポパイズ(Popeyes)のオーナーであるレストラン・ブランズ・インターナショナル(Restaurant Brands International)は2月14日、予測を上回る決算を報告した。同社の第4四半期の収益は16億9000万ドル(約2280億円)で、これは前年比9%増、既存店売上も8%増だった。また、ハンバーガーチェーンのシェイクシャック(Shake Shack)は2月16日木曜日、第4四半期に2億3850万ドル(約322億円)の収益を生み出し、既存店売上も前年比で5.1%増加したと語った。

人々は外食を完全には止めない

これらの売上増の一部は価格の上昇によるものだが、これらのクイックサービス企業は価格に敏感な食事客も売上の増加に貢献していると語る。ガートナー・マーケティング・プラクティス(Gartner Marketing Practice)のディレクターアナリストを務めるブラッド・ジャシンスキー氏は、ファストフードやファストカジュアルダイニングは、従来から経済が不透明な時期に恩恵を受けてきたと語る。「これらの種類のレストランにとって、すべての兆候が有利なもので、成長が続くことを示している」と、同氏は述べている。「過去の景気後退の時期において、人々は外でのディナーの費用を多少減らすことはあっても、外食を完全に止めることはなかった」と同氏は述べる。「そして、低価格帯のレストランはこれを、手頃な価格帯のレストランであることをアピールする機会として捉えている」。この傾向は食料品の買い物とも異なる。食料品店の場合、買い物客は購入する品をより安価なブランドや、プライベートブランドに変更することがある。「ほとんどの人々は外食にかける費用を減らす傾向があるが、外食を完全に止めてしまうことはない」と、同氏は付け加えている。実際に、過去1年間の歴史的なインフレの禍中でも、アメリカ人は外でのディナーや旅行などの活動を優先させてきた。1月の国勢調査局のデータでは、米国の小売および食品サービスは、前の月より3.0%、前年同月の2022年1月より6.4%増加したことが示されている。さらに、クレジットカードのデータも、レストランでの消費が堅調なことを示している。マスターカード・スペンディングパルス(Mastercard SpendingPulse)の2023年1月のレポートによれば、レストランでの取引は前年より14.5%増加した。

オフィスへの復帰も要因に

ジャシンスキー氏によると、現在売上を押し上げている要因はくつかある。安価なレストランへの切り替えだけでなく、特に都市中心部でオフィスへのゆるやかな復帰が起きていることも理由だ。「マクドナルドやスターバックス(Starbucks)などのチェーン店はアプリの変更も行い、期間限定のプロモーションによって人々が注文を続けるよう図っている」と、同氏は述べる。昨年9月にバーガーキング(Burger King)は、新しい広告キャンペーンとレストランの改装に4億ドル(約540億円)を投資する計画を発表した。「全体として、レストランのチェーンは現在、よりダイナミックな価格設定とデジタルツールを活用して逆境に立ち向かっている」。低価格帯の着座形式レストランも、売上の急増を経験している。アウトバックステーキハウス(Outback Steakhouse)の親会社であるブルーミンブランズ(Bloomin’ Brands)は2月16日木曜日、第4四半期の利益が5800万ドル(約78億3000万円)に達したと報告した。収益は前年比4.6%増の10億9500万ドル(約1480億円)だった。CEOを務めるデビッド・デノ氏は決算発表で、前四半期の利益と売上の利ざやはパンデミック前の水準を超えたことを認めた。

インフレの影響は小さい

一方で、チポトレ(Chipotle)のような一部のファストカジュアル企業は、顧客が注文を控えることにプレッシャーを感じていると、同氏は注釈している。チポトレの経営陣は2022年後半、顧客が何回もの値上げにも耐えている一方で、低収入の顧客の注文回数は減少したと語っている。シェイクシャックは2022年、メニューの価格を前年より約7%値上げしたが、依然として材料と労働力のコストにより利ざやが減少している。バーガーチェーンである同社の第4四半期の収益は17.4%も増加したにもかかわらず、630万ドル(約8億5100万円)の営業損失を報告している。全体として、ほとんどのチェーン店がインフレの影響は小さいと報告している。これは、経済的に困難な時期におけるファストフードのレジリエンス(回復性)を証明するものだ。またジャシンスキー氏は、新たな収益源として、たとえばデジタル注文やアプリでの購入の急速な増加にも言及している。「これらのクイックサービスチェーンは、2008年や、さらには5年前よりもはるかに良い位置にある」と、同氏は述べている。[原文: Fast food restaurants get boost from inflation-conscious diners] Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)Image via Burger King