「詐欺師! 詐欺師!」

 2月初旬、歌舞伎町に荒々しく男女の声が響いた。新宿区役所の近くで、1人の初老の男を、10人近い男女が取り囲んでいる。男は憔悴しきった表情を見せている。

「私は、この鈴木(仮名)という男にパパ活でお金をだまし取られたんです。被害者は私を含めて10名以上いることがわかっています。被害後にブロックされて音信不通になっていたのですが、今回、鈴木をおびき寄せることに成功したんです」

 そう語るのは、数年にわたってパパ活をやってきたという女性・Aさんだ。Aさんに被害の全容を聞いた。

「鈴木に出会ったのは、昨年12月。マッチングアプリで知り合って、そのときは『マサ』という名前でした。『初めに15万円お支払いします』というので、驚きました。相場は多くても10万円です。

 ただ、『あなたのことを信用するためにデポジットとして4万円ほしい』と言うんです。ちょっと怪しんだのですが、承諾してしまいました。

 当日待ち合わせて、鈴木が持っていた封筒に15万円入っていることを確認し、私が持参した4万円を鈴木の別の封筒に入れました。そこからすぐそばのコインロッカーに移動して、15万円入った封筒をしまったんです。

 その後、彼に誘われてコンビニに行きました。鈴木は『電話がかかってきたので、待ってて』と言って店を出たまま、いつになっても戻ってきません。

『しまった』と思って、慌ててコインロッカーを開け、封筒の中身を確認すると、中身は薄い段ボール1枚とおもちゃの偽札が何枚か入っていただけです。

 たぶん、コインロッカーに預けるまでに、鈴木が封筒をすり替えたんだと思います。私のお金が入った封筒は、彼が持ったまま……。それっきり、連絡がつかなくなりました。本当に悔しいです」

 Aさんを含む被害女性4人が、この日、歌舞伎町に集まった。彼女たちを手助けした男性が事情を明かす。

「被害にあった女性から相談を受けて、『力を貸してあげたい』と思いました。今日も、女性だけだと危険なので、僕の仲間にも来てもらいました。被害者の女性たちは、もう鈴木と連絡できなくなっていたので、別のパパ活女子に鈴木と連絡を取ってもらったんです。今日、新宿区役所前で、その女性が鈴木と待ち合わせているんです」

 鈴木は、“おとり女性” との待ち合わせ時間どおり、15時に姿を現した。そのまま女性に近づくと、彼女の腰に手をまわし、ホテル街のほうに歩いていく。そこに、少し離れて待ち構えていた被害女性たちが猛ダッシュで駆け寄ったのだ。

「鈴木さんですよね? 私たちにしたこと覚えてます?」

 声をかけられ、驚いた表情を見せる鈴木。一瞬で、十数名の男女に囲まれ、質問攻めに。

「4万円返してもらっていいですか」
「こっち向いてもらっていいですか?」
「常習犯ですよね」

 すると鈴木は「認めます! 認めますから、とにかく警察行きましょう」と、あっさりと自分の詐欺行為を自白した。それでも、女性たちの怒りは収まらない。

「今日も女の子にひどい目に遭わせるんでしょ!」
「土下座してください!」
「どれだけ人を騙してるんですか」
「人間ですか、それでも」
「エスカレーターでお尻まで揉んできたくせに!」
「私たちに誠意見せてもらっていいですか」

 追いつめられた鈴木は、「警察が来たら話す」として、みずから警察に通報。数分後に警察が駆けつけると、鈴木は歌舞伎町交番に連行され、女性たちも後を追った。

 16時半頃、交番から出てきた鈴木は、うつむいた表情でパトカーに乗せられ、新宿署に向かった。

 その後の顛末を、先の男性が語る。

「交番では『示談のほうが、被害届を出すよりお金が返ってくる可能性が高い』と言われたそうで、その場にいた被害女性たちは引き下がりました。

 ただ、後日、10名ほど集まった被害者の半数以上は被害届を出しています。それだけ、鈴木に刑事罰を与えてほしいという思いが強かったのでしょう。

 今回、彼女たちに話を聞いて、まだまだパパ活界隈ではひどいめにあっている女性がたくさんいるとわかりました。これからも、こういう女性たちを助けるために協力したいと思います」

 パパ活女子たちの怨念が晴らされる日は来るか――。