「腺様嚢胞がん」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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耳下腺・顎下腺・唾液腺などの頭頸部の分泌腺に発生しやすい「腺様嚢胞(せんようのうほう)がん」についてお話しします。

腺様嚢胞がんとは悪性腫瘍の中でもまれな腫瘍と言われる、いわゆる希少がんのひとつです。

この腫瘍は、成長速度がゆっくりで周辺の組織へ浸潤しやすいという特徴があります。気づかないうちに病気が進行するため注意が必要な病気でもあります。

また、再発や遠隔転移を起こしやすい傾向もあり、長期間経過を見ていくことが重要です。

今回は、腺様嚢胞がんの症状・原因や治療方法も詳しく解説していきます。

腺様嚢胞がんとは?

腺様嚢胞がんはどのような病気ですか?

腺様嚢胞がんとは、分泌腺から発生する悪性腫瘍です。悪性腫瘍の中でもまれな腫瘍のひとつで、希少がんとされています。
発生しやすい部位は、耳下腺・顎下腺・舌下腺などです。その他にも、口腔内や鼻腔などの頭頚部領域に発生しやすいのが特徴です。
また、頭頚部領域以外では、乳腺・肺・子宮頚部などに発生することもあります。症状は、発生した部位により異なり、口腔内に発生すると食べにくさや話しにくさといった症状がみられることがあります。
好発年齢は40歳代~60歳代です。男女比は、ほぼ同数または、やや女性に多いというデータがあります。

腺様嚢胞がんは何が原因で発症することが多いのでしょう?

腺様嚢胞がんは頭頸部での発症が多く報告されています。
しかし、頭頸部の中でも発症する部位は様々で、きわめてまれながんであるため報告例が少ないのが現状です。そのため、発症の原因や機序は未だに明らかになっていません。

腺様嚢胞がんの初期症状を教えてください。

耳下腺・顎下腺・舌下腺などの頭頸部に腺様嚢胞がんが生じた場合、進行するにつれて、その部位に「しこり」「腫れ」がみられるようになります。
また、腺様嚢胞がんは進行速度が比較的ゆっくりであるため、受診までに時間がかかるケースが多いのも特徴です。多くの人は、腫瘍が大きくなり痛みを伴ってから受診します。データでみると、初めに症状が出始めてから受診するまでの年数は、平均で6年です。さらに、最長では17年もかかったケースもあります。
また、腺様嚢胞がんが子宮頸部などに生じた場合にも、初期症状はありません。症状がある程度進んでから、性交時痛・おりものの増加・下腹部痛・腰痛などがみられるようになります。
症状が出始める頃には、がん細胞の浸潤が進んでいることも多いので注意が必要です。

腺様嚢胞がんが進行している場合はどのような症状がみられますか?

腺様嚢胞がんが発生した部位により、症状が異なります。例えば、腫瘍が耳下腺・顎下腺・舌下腺で発生した場合には、病変部位を「しこり」「腫れ」として自覚することができます。
良性腫瘍の場合は痛みなどを感じないことが多いですが、悪性腫瘍では痛みが出ることが多いのが特徴です。
また、症状が進行した場合は顔面神経麻痺を起こすこともあります。具体的には、顔の片側が動かしにくい・目が閉じられない・口に含んだものがこぼれてしまうなどの症状です。
その他、腺様嚢胞がんが鼻腔に生じた場合、鼻がつまって呼吸がしにくくなったり鼻血が出やすくなったりすることもあります。さらに、口腔内や咽頭部に腫瘍が発生した場合には、口腔内や喉の違和感・話しにくさ・飲み込みにくさを感じることが多いです。

腺様嚢胞がんと年齢の関係性や診断・検査方法

腺様嚢胞がんの発症は年齢と関係あるのでしょうか?

肺嚢胞がんは20歳代後半~70歳代に発症する悪性腫瘍です。その中でも好発年齢は40歳代~60歳代です。
男女比に関しては、ほぼ同等か女性のほうがやや多いというデータがあります。しかし、これらはあくまでも診断時の年齢です。腺様嚢胞がんは自覚症状が現れるために時間がかかることが多いため、診断までに半年~10年以上も要するケースもあります。
また、再発がしやすいという報告はありますが、予後に関しては明らかになっていない点も多いです。例えば、3~5年程度の経過観察では再発がみられず、それ以上経過してから再発することもあります。そのため、術後は長期的に経過をみていく必要があります。

腺様嚢胞がんの検査内容を教えてください。

まず行うのは、問診・視診・触診です。
さらに、腫瘍から組織の一部を採取し、病理診断を行います。「がん」と一口にいっても様々な種類のがんが存在します。そのため、確定診断のために組織を顕微鏡で観察することが必要です。
また、CT検査などにより腫瘍の広がり方を把握していきます。

腺様嚢胞がんは何科を受診したら良いのでしょう?

腫瘍が発生した部位により、受診する科が異なります。腫瘍が唾液腺・耳下腺・顎下腺などの場合、頭頸部科頭頸部外科へ受診しましょう。近くにそれらの専門機関がない場合には、口腔外科でも診察が可能です。
乳腺にしこりがある場合には乳腺外科を受診しましょう。また、腺様嚢胞がんは子宮頸部に発生することもあります。その場合、初期段階では特徴的な症状はみられません。進行が進むにつれて、性交時出血・おりものの増加・下腹部痛などが現れます。
初期段階で腺がんを発見するためにも定期的な子宮頸がん検診の受診をおすすめします。また、おりものの増加など、少しでも普段と違う症状が現れた場合には婦人科を受診するようにしましょう。

腺様嚢胞がんの治療方法と予後

腺様嚢胞がんの治療方法を教えてください。

一般的には手術がメインです。腺様嚢胞がんは周辺の組織へ浸潤することが多いため、ある程度余裕を持たせて切除します。ただし、顔や頸部といった比較的面積の少ない場所で発生しやすいがんですので、術後の後遺症を最小限に留めるために慎重に術式を検討することが必要です。
状況によっては、手術に加えて放射線治療を行うこともあります。化学療法や放射線治療においては有効であるというデータがある一方、はっきりとした効果が立証されているわけではありません。

腺様嚢胞がんは再発しますか?

腺様嚢胞がんの腫瘍が成長する速度は比較的ゆっくりですが、周辺の組織へ浸潤しやすいという傾向があります。そのため、手術をしてもがん細胞を完全に取り除くことができず、局所的に再発を繰り返しやすいというデータがあります。
また、再発は3~5年では見られないことが多いです。しかし、それ以上の期間が経過してから発症することもあるため安心はできません。また、発症から10年以上経過してから再発するようなケースもあります。
さらに、腺様嚢胞がんは遠隔転移も多い病気です。肺に転移することが多く、その他にも骨・肝臓・脳など様々な部位に転移する可能性があります。

腺様嚢胞がんの治療後の過ごし方で注意することがあれば教えてください。

腺様嚢胞がんは治療後長期間経ってから再発する可能性もあります。そのため、定期的な通院で再発の有無を確認していくことが重要です。また、腺様嚢胞がんは、遠隔転移をすることも多い病気です。つまり、もともとの発症部位だけでなく他の部位にがんの転移が及ぶ可能性もあります。少しでも体調に異変を感じた場合には、かかりつけ医を受診するようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

腺様嚢胞がんは身体のあらゆる分泌腺に発生する希少がんのひとつです。
腫瘍の成長は比較的緩やかなため受診までに時間がかかってしまうことも多い病気です。また、腺様嚢胞がんは周辺の組織へ浸潤しやすく、たとえ手術をしても再発を繰り返しやすいという特徴があります。
そのため、治療後も長期的にフォローしていく必要があります。

編集部まとめ


今回は希少がんのひとつである「腺様嚢胞がん」について解説しました。

腺様嚢胞がんは耳下腺・顎下腺・唾液腺など頭頸部の分泌腺に多く発生する悪性腫瘍です。

腫瘍の成長速度が比較的緩やかなため、初期は症状がほとんどみられません。時間の経過とともに、腫瘍や痛みを自覚できるようになるようです。

しかし、ある程度症状が進めば周辺組織への浸潤がみられ、頭頸部で発症した場合には顔面神経麻痺などの症状が現れることもあります。

また、子宮頸部などでも初期症状はなく、進行してから症状が出ることがほとんどです。定期的な検診で早期発見することが重要です。

参考文献

腺様嚢胞がん(国立がん研究センター)

唾液腺炎(日本口腔外科学会)