中高年の膝の痛みの原因は? 医師が40代からの膝の痛み予防と治療法を解説

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「膝の痛みに悩まされている」という中高年の人は多いのではないでしょうか。40代を超えると「歳だから」と諦めている人も増えますが、じつはきちんと原因を把握することで治療をすることは可能です。今回は、加齢に伴う膝痛の治療や予防について、「所沢あかだ整形外科」の朱田先生に教えていただきました。

監修医師:
朱田 尚徳(所沢あかだ整形外科 院長)

富山医科薬科大学医学部医学科卒業。国内外の整形外科病院勤務ほか、Jリーグのチームドクターなどを歴任。2020年、埼玉県所沢市に「所沢あかだ整形外科」開院。理学療法士や鍼灸師とともに、チーム医療に務めている。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、義肢装具等適合判定医。

中高年の膝の痛みの主な原因・病気は? 膝の症状を放置するとどうなる?

編集部

なぜ、中高年になると膝に痛みが生じることが多いのでしょうか?

朱田先生

「40代になって膝に痛みが出始めた」という患者さんはとても多く、年齢を重ねるほど痛みを感じる人の数も増えていきます。膝痛の原因は様々ですが、大きく分けて「膝自体に問題があるケース」と「運動能力が落ちてきたなど、膝自体には問題がないケース」の2パターンがあります。

編集部

膝自体には問題がなくても、膝痛になることがあるのですね。

朱田先生

はい。例えば、「加齢に伴って運動能力が落ちてきた」「体のバランス能力が低下している」「疲れが溜まっている」「視力が低下してきた」などが原因で、体に無理な負荷がかかるようになり、結果的に膝に痛みが現れるというケースは実際に少なくありません。

編集部

その場合、どのように対処するのでしょうか?

朱田先生

適切な運動をおこなうことで症状が改善することもあります。整形外科などでリハビリを受ければ効率的な運動方法を学ぶことができますが、もし通院が難しければ、ウォーキングやトレーニングジムでの運動などでも症状を緩和させることはできるかもしれません。また、体の疲れなど心身の状態が原因であれば、睡眠をしっかりとるなどの適切な対処が必要になります。

編集部

一方、膝自体に問題がある場合は、どのような病気が考えられるのでしょうか?

朱田先生

様々な病気がありますが、最も多いのが「変形性膝関節症」です。簡単に言うと、膝の関節の中でクッションの役割をする関節軟骨が加齢とともにすり減るために、関節内で炎症が起きたり、骨が変形してしまったりする疾患です。

編集部

変形性膝関節症の症状について教えてください。

朱田先生

初期の状態では、膝が重い、突っ張るなどの違和感を覚えるようになります。症状が進んで中期になると、膝を使ったとき(歩く、しゃがむ、正座をするなど)に痛みが生じるようになります。さらに症状が進んで重症化すると、何もしていない状態でも膝が痛むようになり、日常生活が困難になるだけでなく、不眠や抑うつ状態などを招くこともあります。

編集部

日常生活にまで影響が及ぶのですね。

朱田先生

はい。現在、日本では「50歳以上の2人に1人が変形性膝関節症を発症している」と言われています。症状を重症化させないために大切なことは、できるだけ初期のうちに適切な対処をすることです。早い段階から対策すれば、重症化を防いでQOLの低下を予防できます。

40代・50代から膝の痛みが出たときの受診先・治療法を知ってロコモティブシンドローム予防に

編集部

膝に痛みが出たら、どうしたらいいですか?

朱田先生

痛みが出るということは、膝関節が不安定な状態になっているということです。その原因が、膝の構造的な問題なのか、あるいは運動能力的な問題なのかわかりませんから、レントゲン検査などの丁寧な評価が必要です。少しでも痛みや違和感を覚えたら、まずはできるだけ早く整形外科を受診しましょう。

編集部

早めに受診する必要があるのですね。

朱田先生

そうですね。もし変形性膝関節症が原因だった場合、一度すり減った軟骨は放置しても元に戻らないどころか、どんどん悪化していきます。そのため、整形外科で早めに治療を開始することが重要です。

編集部

整形外科で変形性膝関節症と診断されたら、どのような治療をするのですか?

朱田先生

多くの場合、適切な「運動療法(リハビリ)」で症状が改善しますし、変形の進行を抑えることができます。また、痛みが強く出ている場合や膝に水が溜まっている場合には、消炎鎮痛剤などの薬を使用することもあります。そのほか、炎症がひどい場合にはヒアルロン酸注射で抑えることもあります。

編集部

重症の場合はどうするのですか?

朱田先生

60代までの患者さんであれば、将来的な症状の悪化を避けるために、足の矯正手術をおこなうこともあります。ただし、手術後2~3カ月は運動が制限されるといったダウンタイムがあり、現役世代では手術を受けることが難しいことがあります。そうした手術が難しい場合には、リハビリでなんとか対応しながら、将来的に人工関節の手術を検討することもあります。

編集部

症状によって様々な治療法があるのですね。

朱田先生

そうですね。大切なのは、できるだけ早めに処置をするということです。なぜなら、変形性膝関節症はロコモティブシンドロームの大きな要因になるからです。ロコモティブシンドロームは、骨や関節、神経などが衰えて立ったり歩いたりすることが困難になり、要介護や寝たきりの状態になってしまうこと、またはそのリスクが高いことを指します。変形性膝関節症を放置すると、こうしたロコモティブシンドロームになることが多いため、早めに専門医の診察を受け、治療を開始することが大切です。

40代から知っておきたい中高年の膝の痛みの予防法・変形性膝関節症対策に日常生活で気をつけたいこと

編集部

変形性膝関節症を予防するために、40代からできることはありますか?

朱田先生

少しずつでもかまいませんので、運動をする習慣をつけていただきたいですね。運動量が不足すると運動能力が落ち、大きな負荷が膝にかかるようになってしまいます。さらに、運動不足から肥満になれば、ますます膝への負担が増すという悪循環になり得ます。そのため、運動不足と肥満には気をつけましょう。

編集部

そのほか、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

朱田先生

オフィスワークなど、日常生活で座っている時間の長い人は、膝のみならず腰や肩など全身の関節が硬くなってしまいます。全身の関節が硬くなれば動きが不安定になり、立ったときに体重を支える膝の負担はますます大きなものになります。関節の柔軟性を保つため、仕事中には適度に休憩時間を挟み、ストレッチをする習慣を身につけましょう。

編集部

膝に負担をかけないために、避けた方がいい運動や行為はありますか?

朱田先生

痛みがあるときは「関節の動きが不安定になっている」ということなので、過度なウォーキングやランニングは膝への負担を増大させてしまいます。そのため、できる限り控えた方がいいでしょう。また、正座など和式の生活も膝の負担が大きくなる原因になり得ます。椅子に座る、洋式のトイレを使用するなど、できるだけ洋式の生活に切り替えることをおすすめします。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

朱田先生

加齢に伴って発生する症状の中で代表的なのが膝の痛みです。ただ、痛みが現れる場所が膝だとしても、その原因には肥満、運動不足、視力の低下、運動能力の低下、バランス能力の低下など様々な要素が絡んできます。つまり、膝の痛みを取り除くには膝だけを治療するのではなく、体全体を捉える必要があるということです。適切な運動をおこなうだけでも膝の痛みが解消されることもありますから、まずは簡単なウォーキングなど、体を動かす習慣を身につけましょう。

編集部まとめ

膝の痛みについて「歳のせい」と諦めてしまう人も多いのではないかと思います。しかし、実際は簡単な運動で痛みを解消できることも少なくないとのことでした。運動は身体能力を維持向上させるだけでなく、肥満予防につながる大事な活動なので、ぜひ無理のない範囲で運動を始めてみましょう。

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