「粉砕骨折」とは?症状や原因・日常でできる予防を医師が解説!
日常生活と骨折は密接していることが多く、避けることは難しいものです。骨折にも様々あり、単純に折れたものやひびが入ったものまであります。
その中の1つである粉砕骨折に今回は焦点を当ててみましょう。骨折の中でも聞き慣れないかもしれませんが、粉砕骨折とはどのような骨折なのでしょうか。
また、似たような症状名の複雑骨折とは違いがあるのでしょうか。ここからは粉砕骨折の症状・原因・日常でできる予防・治療方法について解説します。
粉砕骨折の症状と原因
粉砕骨折はどのような症状ですか?
他の骨折同様、骨折した部位を中心に痛みや腫れが表れます。状態が酷ければ痛みや腫れ以外に、動かせない・変形といった症状がみられます。骨の周りには筋肉・神経・血管があるため、骨だけが折れるわけではありません。骨が折れることで、周りの筋肉・血管・神経を傷つけるため痛みや腫れが表れるのです。
粉砕骨折は文字どおり、骨が粉砕され大小多数の骨片に分かれている骨折を指します。骨が3つ以上に分かれるほどの強い衝撃を外部から受けるため、広範囲で症状が表れる可能性が高いです。
他の骨折とどう違いますか?
他の骨折と違う点は、骨が3つ以上に分かれるかどうかです。骨の折れ方によってどの骨折かに分けられますが、前述のとおり粉砕骨折は複雑に骨が折れたことを指します。複雑骨折と混同されがちですが、これにも違いがあります。複雑骨折は皮膚から骨折した部分の骨が飛び出した場合を指し、正式名称は開放骨折と呼ばれ、交通事故や高所からの転落など外からの強い衝撃を受けた時に起こる骨折です。
主な原因は何でしょうか?
健康な骨は非常に丈夫であるため、少しの衝撃では骨折しません。骨が砕けるほどの骨折の原因は、主に交通事故や高所からの転落など外からの強い衝撃です。しかし、強い衝撃ばかりが原因ではありません。年齢や服用する薬の影響により、骨が弱くなる骨粗しょう症になっている方もいるでしょう。
このような場合は骨が折れやすい状態であるため、少しの衝撃でも骨が3つ以上に分かれるリスクがあります。転倒したり尻もちをついたりした程度でも、骨が弱い方は日常生活の中で粉砕骨折する可能性が高いです。
粉砕骨折の日常でできる予防
粉砕骨折は予防できますか?
1つ1つの事柄に対して慎重になることが予防につながります。たとえば、時間に余裕を持って行動することも有効な方法の1つです。ギリギリの行動は気持ちが焦っているため、冷静な判断をするのが難しい場合があります。
例えば車を運転する際に、交差点で車が来ているにもかかわらず飛び出したり、前の車にぶつかったりとアクシデントが起きやすくなります。早めの行動はもちろん、行動を起こす前にまずは気持ちを整えることが大切です。
また、骨の弱い方は食生活にも気をつけましょう。カルシウム・ビタミンD・ビタミンK・リン・マグネシウムなど、骨を強化する栄養素を中心に摂ると良いです。併せて筋肉を強化する栄養素であるタンパク質も一緒に摂ると良いでしょう。転倒を防止するため、杖・手すり・滑り止めつきの靴下の使用も予防方法の1つです。
日常の予防にはどのような方法がありますか?
前述のとおり、1つ1つの行動を慎重にすることで日常生活でも予防につながります。骨折のほとんどは日常生活の中で起きています。完全に骨折を防ぐことは難しいです。それでもスポーツをする前には準備運動を、車を運転する際は安全運転を心がけるなど、ちょっとしたことを意識するだけでも予防になります。
なお、骨が弱い方はゆっくり歩くことも予防につながります。転倒するリスクを下げるだけでなく、歩くことで足が鍛えられ、小さな段差でも躓きにくくなるでしょう。
粉砕骨折の治療方法
粉砕骨折はどのくらいで治りますか?
骨折した部位によって治る期間は様々です。治る=骨がくっつく(骨癒合)と定義する場合、骨折の癒合日数を各部位ごとに表にしたGurlt分類での期間は以下のとおりになります。指の骨:2週間
大腿骨の骨幹部:8週間
上記の期間は完治する目安ではなく、骨癒合の最短日数を想定した期間です。骨が粉砕されていると筋肉や血管などの軟部組織も損傷しているため、上記で表記した期間より長くなる可能性が高いです。
また個人の治癒能力も影響するため、あくまでも目安としてください。
どのような治療をしますか?
粉砕骨折を含む骨折の治療は保存療法と手術療法です。どちらの療法になるかは骨折の状態によって異なります。保存療法はギプスで骨折した部位がグラグラしないよう固定し、骨癒合を待つ方法です。骨には再生能力を備えた細胞があり、骨折した部位の骨を一生懸命治そうとします。骨折の程度によりますが、固定しただけでも十分治すことは可能です。
手術療法の場合、メスで切開して骨折した部位に直接金属板や棒を当て固定します。ただ板や棒を当て固定するのではなく、再生能力を備えた細胞のことも考慮して手術します。
治療の目的は、骨折した部位の骨がうまくつくために環境を整えることです。そのため、骨の折れ方によって治療方法は様々です。
手術や入院は必要ですか?
骨折の多くはギプスなどの固定で骨がつくため、一般的には保存療法の選択が多いです。そこで骨がつくかどうか確認しますが、骨折状況によってはうまくいかないこともあります。粉砕骨折は外からの強い衝撃を受けて骨折するため、筋肉・血管・神経といった骨の周りに影響を及ぼしている可能性が高いです。この場合は手術療法を選択します。
手術となると日帰りでは難しいため、入院しなければなりません。たとえ骨折箇所が腕であり、移動に支障がなくても入院は必要です。入院期間は手術した部位により異なり、太ももなどの下肢であれば入院期間は長くなるでしょう。
また、体力が著しく低下するなど手術後に合併症を起こす可能性も否定できません。そうなると合併症の治療も同時に行わなければならないため、さらに入院期間が長くなるでしょう。
治療費はいくらくらいですか?
多くの粉砕骨折の治療費は保険適用となるため、1~3割負担となります。交通事故や勤務中に起こった場合は、自動車保険や労災保険から治療費が支払われます。金額としては、病院・期間・治療方針などで異なるため治療費も様々です。ちなみに骨折を含む入院時の自己負担額は、令和元年度で平均208,000円です。1日あたりの自己負担額は平均23,000円になります。
医療費が高額になった場合は高額医療費制度を利用可能です。高額医療費制度はひと月の自己負担限度額を超えた場合に払い戻される制度で、自己負担限度額は年収や年齢によって上限が決まっています。
上限を超えた治療費は後から払い戻されるため、一旦自分で支払う必要があるものの、高額な治療費に対する不安を和らげてくれるでしょう。ただし、個室料金・先進医療費・消耗品代などは保険適用ではないため自費扱いです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
強い衝撃が加わることや、骨の弱い方が転倒することで細かく骨が砕けてしまう粉砕骨折は、日常生活の中で起こるケースが多いです。そうはいっても、粉砕骨折を防ぐために日常生活を制限することは難しいでしょう。しかし、意識することで骨折をなるべく防ぐことはできます。時間にゆとりを持って行動する・足元がフラフラになるほどお酒を飲まない・転倒しないよう滑り止めつきの靴を履くなど、ちょっとした心がけ次第で十分予防につながります。
また粉砕骨折の状況によっては一刻を争うものもあるため、転倒しても腫れが引かない・痛みが治まらない場合は速やかに整形外科を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
骨がバラバラに砕ける粉砕骨折は、骨折の中でも複雑な症状です。しかし骨には再生能力があるため、たとえバラバラになったとしても時間をかけて元に戻ります。
そのためには適切な治療を受けることが重要です。適切な治療を受けていれば、適切に骨癒合し元の生活に戻ることができるでしょう。
日常生活で起こり得る骨折を完全に防ぐことは難しいともいえますが、心がけ次第で骨折するリスクは下げられます。
時間に余裕を持ち、体に負担をかけないように日々を過ごすようにしましょう。
参考文献
骨折(日本整形外科学会)
骨粗鬆症(骨粗しょう症)(日本整形外科学会)