多くのiPhoneユーザーは、スマートフォンで撮影した大切な思い出の写真や動画をiCloudに保管しており、万が一iPhoneを盗まれたり紛失したりしてもクラウドのデータは無事なはずです。しかし、あるiPhoneユーザーがスマートフォンを強盗に奪われてしまった際に、機転の利かないAppleのサポートのおかげで子どもが最初に歩いた時の思い出を含む貴重な記録をiCloudアカウントごと失ってしまったとして、その経緯を公開しました。

Martin's blog - How my brother's iCloud account was stolen

https://7c0h.com/blog/new/stolen_iphone.html

今回の体験談でiPhoneとiCloudアカウントを失ってしまったのは、アルゼンチンのグラフィックデザイナーであるマルティン・ビジャルバ氏の兄弟です。ビジャルバ氏の兄弟はある時、強盗に銃を突きつけられてiPhoneを強奪されてしまいました。

iPhoneを盗まれたビジャルバ氏の兄弟は、すぐに「iPhoneを探す」機能を使って端末の場所を突き止めようとしましたが、できませんでした。なぜなら、「iPhoneを探す」を使う際にはiCloudアカウントに紐付けられている電話番号の入力を求められますが、その時にはすでに強盗がその電話番号を変更してしまっていたからです。こうしてビジャルバ氏の兄弟は、自分のiCloudのIDとパスワードを知っているのにアカウントにアクセスできないという問題に直面してしまいました。



ビジャルバ氏たちは次に、電話とTwitterの両方でAppleに連絡を取りました。しかし、Appleのサポートはビジャルバ氏に「電話番号がないなら助けることはできない」と言うばかりで、何の役にも立たなかったとのこと。また、Twitterで連絡したAppleのサポートからも「あなたとご兄弟が行った手順でApple IDへのアクセスを回復できない場合、アカウントへのアクセスを回復するための別の方法はありません」との返信が来ただけでした。

さらに悪いことに、ビジャルバ氏がAppleのサポートと押し問答をしている間に、ビジャルバ氏の兄弟がフィッシング攻撃によりiCloudアカウントのIDとパスワードを盗まれてしまいました。

ビジャルバ氏の兄弟が受けた攻撃は、iPhoneを盗まれた被害者が新しいSIMカードを入手すると、古いSIMカードが使えなくなることを利用した手口です。これにより被害者が新しいSIMを取得したことを察知した犯人は、発信元をAppleのサポートに偽装したフィッシングメッセージを被害者に送りつけます。そして、被害者からiCloudアカウントとパスワードをだまし取ることに成功すると、iPhoneのロックを解除してiPhoneを売り払ってしまいます。

ビジャルバ氏の兄弟もこの手口に引っかかって、iPhoneだけでなくiCloudアカウントまで永久に失うことになってしまいました。強盗が使った一連の手法についてビジャルバ氏は、「重要な点は、Appleのサポートが役に立たないことを強盗が熟知していたことです。もしAppleの支援があればフィッシングSMSを受け取る前にアカウントを復旧できたはずであり、私の兄弟がSMSのリンクを踏むこともなかったでしょう」と述べています。



iPhoneとiCloudを失ってしまったビジャルバ氏の兄弟は、「もしアカウントを取り戻せるなら新しいiPhoneを買うかもしれないけど、ゼロからやり直しならもう意味がない。データを取り戻せないなら、次はAndroid端末を買うよ」と話しているとのこと。アルゼンチンの平均月給が427ドル(約5万5000円)なのに対し、iPhone 13の価格は40万アルゼンチンペソ、非公式レートで1300ドル〜2200ドル(約17万円〜約28万円)もするほど高価なことが、iPhoneを選択することをさらに難しいものにしています。

半分諦めながらもまだ希望を完全には捨てていないビジャルバ氏は、なくしたiCloudアカウントにログインしたことがあるiWatch経由でのアカウント復旧や少額訴訟、自分の人脈をあたってAppleの関係者に連絡を取ることなどを検討しているとのことです。