三和万亜子さん

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「1冊の本との出会いで人生が変わった」という話はよく聞く。最近では、USJの再建などで知られる日本屈指のマーケター・森岡毅の著書『苦しかったときの話をしようか』(ダイヤモンド社)がその1冊だと言われている。しかし、本当にそんなことが起こりうるのだろうか? 人生はそんなに簡単に変わるものなのだろうか? 編集部に寄せられた読者ハガキを頼りに、何人かの読者に会ってみた。読書前と読書後で、人生がどんなふうに変わったのか。彼・彼女らは、実に生き生きと語ってくれた。(取材/ダイヤモンド社・亀井史夫)

「苦しんでいた私は、思い切って変わることを選択できました」

 三和万亜子さんは苦しんでいた。学生時代から14年間、芸能活動をしてきた。アイドルとしてステージに立ってきた。しかし、30歳を目前にして、自分が本当はどうしたいのかがわからなくなっていた。

 事務所から与えられた仕事をただこなすだけの、サラリーマンと何ら変わらない生活。舞台の上で笑顔を作っている自分が、偽りの姿のように思えた。楽しくなかった。これが私の求めていたものなのだろうか。ネガティブな思考で頭がいっぱいになった。このままではいけない。でも変われない。やめたとしてもやりたいことがない。

 やりたいと思って入った芸能の世界だけど、何をやっても上手くいかなかった。努力しても報われない。もう生きててもしょうがない。いつの間にか、どうやって生きることをやめるのか、そんなことばかりを考えるようになっていた。

 そんなとき、フラッと立ち寄った本屋で、『苦しかったときの話をしようか』という本を見つけた。今苦しんでいる自分に、引っかかるタイトルだった。本を手に取り、捲ってみる。著者が自分の娘に向けて書いたという文章は、まるで自分に語りかけてくれているようだった。何かをしなければならない、でも何をしたいのかわからない…著者が話しかける娘の悩みは、自分の悩みとリンクした。

 本を買って帰り、貪るように読んだ。一言一句が、乾いた心に沁みてきた。これは自分にとって運命の本だと思った。

「生まれてきてくれてありがとう!」

 最後の一文を読み終えたとき、自然と涙が溢れてきた。まるで自分に対する言葉のように思えた。

 本に書かれていた「自分の強みを見つける自己診断テスト」もやってみた。出てきたのは意外な答えだった。自分は「コミュニケーション」能力に長けた人間だと思い込んでいた。しかし診断の結果はそうではなかった。「リーダーシップ」が好きな人間だった。芸能人に必要とされる「コミュニケーション」が好きな人間ではなかったのだ。

 自分はコミュニケーション能力があると思って芸能活動を続けてきた。それは営業力と言い換えてもいいと思う。でも結果に繋がらなかった。もしかしたら、自分の苦手な部分だけをずっと鍛えるという、無駄な努力をしてきたのではないか。本には「成功したいなら、“強み”をもっと磨け!」と書いてある。

 それから数ヶ月間、考えに考えた末に、三和さんは答えを出した。自分が所属していたアイドルグループ「めにぱら」を脱退したのだ。思い切って環境を変え、付き合う人間関係もガラリと変えた。誰にも頼れない環境を作った。簡単な決断ではなかった。批判もされた。でも、もう気にしない。私は、私の人生を開拓して、私なりに生きていくのだ。

 現在は、新たに取り組むビジネスに向けて構想を練っている。時間をかけて自己分析を積み重ね、興味が湧いてきた分野、自分が得意だと思える分野に足を踏み入れようとしている。自分の強みをどこで開花させるか。焦ってはいない。本には「行動変化には時間がかかる」とも書いてあった。いろいろな本をたくさん読み、勉強を重ね、じっくり準備をしよう。新しい一歩は、もうすぐそこに待っている。ワクワクが止まらない。

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