「扁桃周囲膿瘍」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!
扁桃周囲膿瘍とは扁桃炎が重症化した病気で、扁桃の周囲が細菌感染し、膿が溜まってしまう病気です。
内服薬で治療できることが多い扁桃炎とは違い、この病気は入院して膿を摘出し、抗菌薬を点滴しながら治療するケースが多いです。
38度を超える高熱や左右差のある激しいのどの痛みが特徴で、のどの痛みを感じてから半日~1日で症状が悪化します。また重症化すると命の危険に繋がるおそれがあるとされる病気です。
今回は扁桃周囲膿瘍の症状・治療方法・予後を紹介します。また似たような症状を持つ扁桃炎や扁桃周囲炎との違いについても併せて解説していきましょう。
扁桃周囲膿瘍とはどんな病気?
扁桃周囲膿瘍とは何ですか?
扁桃周囲膿瘍とは、扁桃炎が重症化し、扁桃の周りに膿が溜まってしまう状態を指します。一般的に扁桃腺と呼ばれている部位は、舌のつけ根の両サイドにあるこぶのようなものです。この部位では、口から入ってくる細菌やウイルスの侵入を阻止する役割があります。この部位についたウイルスや細菌が増殖し、炎症を起こした状態が扁桃炎です。
そして扁桃炎がこじれ、扁桃腺の周囲にまで炎症が広がると、扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍にまで悪化します。扁桃周囲膿瘍はのどの痛みを感じてから急激に悪化することが特徴で、膿をしっかり取り除いて治療するため、入院することも多い病気です。
扁桃周囲膿瘍にみられる症状を教えてください。
この病気の主な症状は以下の通りです。38度以上の高熱
左右差のあるのどの激しい痛み
ものを飲み込む時に感じる激しい痛み
全身の倦怠感
口臭、よだれ
また、のど全体の粘膜が腫れることによって呼吸困難感を生じたり、炎症がのどの筋肉にまで及ぶと口の開きにくさを感じたりします。通常のどの痛みから始まり、半日~1日で急激に悪化する病気です。
扁桃周囲膿瘍を発症する原因とは何でしょう?
この病気の前段階として、レンザ球菌やブドウ球菌などの細菌が扁桃腺に付着して炎症を起こし、扁桃腺を発症します。炎症が扁桃線の周りまで及んで細菌が増殖し膿が溜まり、膿瘍を形成すると扁桃周囲膿瘍となるのです。高熱やのどの痛みが出る苦しい病気ですが、さらに症状が進行してしまうと、首の深いところや胸部にまで膿が溜まってしまうこともあり、放っておくと命の危険に繋がることがあります。
扁桃周囲膿瘍は何歳くらいの方が発症することが多いですか?
この病気は20~30代に多く、発症する人のうち、男性が70%ほどを占めるといわれています。ただし高齢者にも発症するケースがあり、高齢者は治療・入院期間が長くなる傾向があるので注意が必要です。またこの病気を再発する人も多く、ある研究では扁桃周囲膿瘍の患者のうち3分の1は再発例でした。扁桃周囲膿瘍の再発は、前回の膿や炎症が完全に取り除かれないまま治療を終えてしまったことが原因の1つであると報告されています。
入院して膿を取り出しても、退院後しっかり治療を続けないと炎症が完全に抑えられず、再発の危険性が高まるのです。また、扁桃腺が大きいなどの理由で、この病気を再発しやすい人もいらっしゃいます。その場合、扁桃自体を手術で取り除くケースもあります。
扁桃周囲膿瘍の診断・検査や扁桃周囲炎との違い
扁桃周囲膿瘍ではどのように診断するのですか?
まずはのどの様子を観察し、扁桃周囲が赤く腫れていないかを確認します。その後、腫れがどの部位まで広がっているか、膿が溜まっているかどうかを検査します。ここで膿が確認されれば扁桃周囲膿瘍です。炎症の程度を調べるために、血液検査も行います。扁桃周囲膿瘍で行う検査方法や詳細を教えてください。
のどの奥に炎症や腫れがあるかどうかを調べるのに用いるのがファイバースコープです。これは鼻から挿入します。その後は腫れている部位に針を指し膿が出るかどうかを調べ、もし膿が溜まっている部位が確認出来ない場合には、造影剤を使用したCT検査を行います。扁桃周囲炎との違いや見分け方が知りたいです。
扁桃周囲炎と扁桃周囲膿瘍で発症する部位や症状はほぼ変わりありません。扁桃周囲の炎症に加え、細菌の増殖が進み膿が溜まっている状態が扁桃周囲膿瘍です。どちらの病気なのかは、診断時に患部で膿が確認できるかどうかで判断します。また扁桃炎や扁桃周囲炎は、軽度であれば内服薬で治療できますが、扁桃周囲膿瘍は針か切開手術で膿を出さないと完治が難しいとされています。
扁桃炎・扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍は見分けが難しいですが、病気が扁桃周囲膿瘍まで進行した場合は入院でしっかり治療しないといけません。専門器具でしっかりと診断が必要ですので、心配な場合はまず病院にかかることをおすすめします。
扁桃周囲膿瘍は何科を受診したら良いのでしょう?
のどの病気ですので、耳鼻咽喉科を受診してください。扁桃周囲膿瘍は入院治療となるケースが多く、入院設備が整っていないクリニックなどにかかった場合は、市民病院などに転院して入院となるケースがほとんどです。扁桃周囲膿瘍の治療法や予後
扁桃周囲膿瘍はどんな治療をするのか知りたいです。
膿が溜まっている部分には血流がなく、抗菌薬が届きませんので、まずは膿を全て取り除くことが重要です。膿瘍部分に針を刺して膿を排出するか、手術で切開して膿を取り除きます。そして抗菌薬を点滴、内服で投与していきます。この病気は炎症をしっかり抑えて完治させないと、再発に繋がりやすい病気です。入院治療の場合、入院期間は痛みの状況・摂食状況・膿の排出具合などを見ながら総合的に判断されますが、およそ1週間が目安となります。退院後は3カ月以上の経過観察が必要とされ、症状が落ち着いた後も、経口薬で完治させることが大事です。
扁桃周囲膿瘍の治療による副作用はどんなものがありますか?
のどにいる細菌、ウイルスを殺菌するのに抗菌薬を使いますので、下痢などの症状が現れる可能性があります。また頭痛・めまい・関節痛・筋肉痛などを感じる方もいらっしゃいますので、その場合は医師が症状に応じて適切な処置を行います。治療中や治療後の過ごし方を教えてください。
扁桃周囲膿瘍はものを飲み込んだ時に強い痛みを感じますので、食事や水分補給が十分に行えない可能性があります。その場合は入院中なら点滴などによる水分補給を行い、脱水や栄養不足にならないよう気を付けます。また、一旦軽快しても再発しやすい病気です。症状が落ち着いても医師の指導通りに治療に通い、薬の内服も続けてください。また風邪を引くと扁桃炎や扁桃周囲膿瘍を再発しやすいです。風邪を予防するため、空気を加湿してのどを労わり、うがいなどで細菌を洗い流すことも有効です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
扁桃周囲膿瘍は扁桃炎をこじらせた時に発症する病気です。扁桃炎は子どもから大人までがかかるありふれた病気ですので、病院にはかからずに市販薬を使っている人もいるかもしれません。一方、扁桃炎が扁桃周囲膿瘍まで重症化してしまうと、病院で膿を摘出する処置を行わないと完治が難しくなります。また扁桃周囲膿瘍は悪化すると、首の深いところにまで膿瘍が進行し、命の危険に繋がることもある病気です。高熱やのどの痛みなど辛い症状が出た場合は、早めに耳鼻咽喉科にかかることをおすすめします。
ほか、日常から扁桃の腫れを防ぐ方法としては以下が挙げられます。
疲れやストレスをためない
うがいやスプレーでのどを殺菌する
規則正しい生活を送る
マスクで細菌の侵入を防ぐ
乾燥しやすい秋や冬などの季節は、のどや扁桃を痛めやすい時期です。のどを労わって、できるだけ炎症を起こさないようケアしましょう。
また、扁桃周囲膿瘍を放置すると、血液中に菌が入り込み、全身に菌がばらまかれ敗血症となることで一気に全身状態が悪くなり死亡してしまう場合もありますし、扁桃周囲膿瘍によって空気の通り道である気道が閉塞してしまい、窒息してしまうリスクもあります。
特に後者の場合、あまりに遅く病院を受診した場合には人工呼吸のチューブを入れることすらできないぐらい気道が狭窄してしまう場合もありますから、早期に受診する必要があります。
編集部まとめ
扁桃周囲膿瘍は20~30代の男性に多い病気です。
扁桃炎がこじれるとこの病気になり、病院で針や切開手術で膿を出さないと完治しません。
症状としては高熱やのどの痛みを有し、入院治療で抗菌薬を点滴投与しながら治療する場合がほとんどです。
また再発することも多く、再発を防ぐためには、通院、服薬を途中で止めずしっかりと最後まで治療を終えることが必要です。
もしのどの腫れ・高熱・飲み込む時の激しい痛みなどを感じたら、早めに耳鼻咽喉科にかかりましょう。
参考文献
口腔・咽頭の病気(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)