「低用量ピルの種類」はご存知ですか?医師が監修!
低用量ピルとひとことでいってもたくさんの種類があります。
そのため、「何を選べば良いのかわからない」「違いがわからない」という方も少なくないはずです。
種類や分類によって飲み方や特徴も異なるため、違いを知っておくと目的に合ったピルを見つけやすくなります。
自分に合った低用量ピルを見つけるヒントとして、低用量ピルの分類や種類、目的に適したピルの種類について理解を深めていきましょう。
低用量ピルを服用する目的
低用量ピルを服用する目的として避妊を挙げる人が多いですが、低用量ピルには避妊以外にも月経困難症の治療・生理不順のコントロール・ニキビ改善・月経前症候群(PMS)の緩和などの効果があることが明らかとなっています。そのため、服用する目的は人によって様々です。
避妊
月経困難症の治療・緩和
生理周期のコントロール
ニキビ・肌荒れ改善
子宮内膜症の治療
月経前症候群(PMS)の緩和
避妊目的のために低用量ピルを服用する方は多いですが、生理に関する悩みの解決方法として服用する方も少なくありません。低用量ピルは、ホルモンの配合量・ホルモンの種類によっていくつかの種類に分けられます。低用量ピルの効果は基本的にはどれも同じですが、種類によって効果の高さ・副作用・保険適用の違いなど特徴が異なります。そのため、目的に適したピルを選ぶことが重要です。
低用量ピルの服用周期別の分類
低用量ピルは、服用周期によっていくつかの分類に分けることができます。服用周期の違いによって、それぞれメリット・デメリットも異なります。低用量ピルは、毎日服用することが大切です。飲み忘れは、不正出血などのマイナートラブルを引き起こしたり効果が半減したりする原因にもなります。そのため、ライフスタイルや服薬管理能力に合わせて、飲み忘れしにくい服用周期のピルを選ぶことが大切です。服用周期別の分類、それぞれのメリット・デメリットについて解説いたします。
1シート21錠タイプ
1シート21錠タイプは、21日間毎日1錠を服薬し1シート飲み終わったら7日間の休薬期間を設ける低用量ピルです。7日間休薬したらまた新しい1シートを服用します。1シート21錠タイプは、休薬期間の間はピルを飲まなくて良いメリットがあります。しかし、休薬期間の間に毎日ピルを飲むという習慣が薄れてしまうケースも少なくありません。そのため、休薬期間明けの飲み忘れが起きやすいデメリットもあります。
1シート28錠タイプ
1シート28錠タイプの低用量ピルは、1シート21錠タイプと異なり休薬期間がありません。1シート28錠タイプは、本来休薬期間である最後の7錠分がホルモンを含まない偽薬(プラセボ)になっています。そのため、毎日ピルを服用することになるため、薬を飲む習慣が定着しやすく飲み忘れが生じにくいメリットがあります。ただし、1シート21錠タイプと比べると費用がややかさむ点がデメリットといえるでしょう。
フレックスタイプ
フレックスタイプは、最長120日間の連続投与が可能なピルです。
3週間以上服用し、不正出血が3日間以上起きれば服用を中止し4日間休薬
不正出血がない場合は、最長で120日間連続服用可能
不正出血がない場合でも、120日間服用したら4日間休薬し再度服用開始
フレックスタイプは、このように他のピルの飲み方と大きく異なります。不正出血が起きるタイミングは個人差がありますが、月経の回数を減らせる点が大きなメリットです。フレックスタイプのピルは少なく、日本ではフレックスタイプに当てはまるピルはヤーズフレックスのみです。卵胞ホルモンの含有量が抑えられていることから超低用量ピルとも呼ばれています。
連続服用タイプ
フレックスタイプ以外にも連続服用が可能なタイプもあります。連続服用タイプのピルは、ジェミーナという超低用量ピルです。ジェミーナは、28錠タイプのシートと21錠タイプの2種類のシートがあります。28錠タイプを2シート、21錠タイプを1シートを続けて飲むことで、計77日の連続服用が可能です。また、1シート21錠タイプとして7日間の休薬期間を設ける周期服用もできます。フレックスタイプと同様に生理の回数を減らすことができるため、月経困難症に悩む方・子宮内膜症の方に適したピルです。
低用量ピルの「世代」と「相性(そうせい)」とは?
低用量ピルは服用周期だけではなく、1シート内のホルモンの配合・黄体ホルモンの種類によって分類されています。世代は黄体ホルモンの種類の違いによる分類です。黄体ホルモンにもいくつかの種類があり、開発された時期によって黄体ホルモンが異なります。世代は、第1世代から第4世代まで4種類に分けられています。一方、相性は1シートに配合されるホルモンの配合割合の違いです。低用量ピルには、基本的に黄体ホルモン(プロゲスチン)・卵胞ホルモン(エストロゲン)の2種類のホルモンが配合されています。卵胞ホルモンの配合量は、どのピルも1シート全て同じ量です。しかし、黄体ホルモンは全て同じ量が含まれているものもあれば、黄体ホルモンの配合量が1シートの中で増減しているものもあります。
1相性:卵胞ホルモン・黄体ホルモンが1シート全て同じ量のもの
2相性:黄体ホルモン量が異なる2種類のピルが1シートに入っているもの
3相性:黄体ホルモン量が3段階に分けられて含まれているもの
このように、1シート内の黄体ホルモンの配合量によって1相性から3相性まで分類されています。日本で服用されている低用量ピルは、1相性か3相性の2種類です。
低用量ピルの種類一覧
低用量ピルは、前述に記載したとおり主に世代・相性によって様々な種類があります。具体的にどんなピルがあるのか、種類別にご紹介いたします。
世代別
世代別に分類すると、第1世代から第4世代の4種類です。開発された時期によって、黄体ホルモンが異なる点が特徴です。
第1世代:ノルエチステロン
第2世代:レボルノゲストレル
第3世代:デソゲストレル
第4世代:ドロスピレノン
このように開発された時期によって異なる黄体ホルモンが配合されており、特徴が異なります。
第1世代(ノルエチステロン):生理時の出血量の抑制・生理痛緩和の効果が高い反面、不正出血が起こりやすい【第1世代に該当するピル】シンフェーズ・フリウェル・ルナベル第2世代(レボルノゲストレル):第1世代と比較して副作用リスクが低い反面、男性ホルモン作用がある
【第2世代に該当するピル】トリキュラー・アンジュ・ラベルフィーユ・ジェミーナ第3世代(デソゲストレル):男性ホルモンの抑制効果が高くニキビ・肌荒れ改善効果が期待ができる
【第3世代に該当するピル】マーベロン・ファボワール第4世代(ドロスピレノン):卵胞ホルモンの配合量が少なく超低用量ピルと呼ばれる、むくみなどの副作用リスクが低い
【第4世代に該当するピル】ヤーズ・ヤーズフレックス
世代によって、効果・副作用の出方には違いがあります。世代による違いを理解しておくと、服用目的に合わせて自分に合うピルを見つけやすいはずです。
相性別
相性別に分類すると第1相性・第2相性・第3相性の3つに分類できます。本来、女性の体内で分泌されるホルモンは、複雑に増減を繰り返しています。1シート内で黄体ホルモンの量が増減している3相性のピルは自然なホルモン分泌に近い状態を再現できるため、不正出血が起こりにくいとされています。また、人によって1相性のピルが合う人もいれば3相性のピルが合う人もいるため、どちらかのピルで副作用が強く出た場合は別の相性のピルを試してみるのもおすすめです。1シート内のホルモン量が一定の第1相性は、生理周期の移動がしやすい特徴があります。
第1相性:マーベロン・ファボワール
第3相性:アンジュ・トリキュラー・ファボワール
日本では第1相性か第3相性のいずれかとなり、第2相性は服用されていません。
目的別の低用量ピルの種類
これまでお伝えしてきたように、低用量ピルは種類によって特徴が異なるため目的別に選ぶことができます。避妊目的の場合は、不正出血が起きにくく性欲減退の副作用が起きにくいとされる第2世代のピル、トリキュラー・ラベルフィーユ・アンジュなどがおすすめです。ニキビ予防の場合は、男性ホルモン作用が低い第3世代のピルであるマーベロン・ファボワールを選ぶと良いでしょう。生理周期の移動・生理不順のコントロールが目的の場合は、シンフェーズ・ルナベル・マーベロンなどがおすすめです。生理回数を減らしたいということであれば、生理の回数を減らせるヤーズフレックス・ジェミーナが適しています。
低用量ピルの種類に関するよくあるQ&A
低用量ピルには様々な種類があるため、疑問に思うことも少なくないでしょう。低用量ピルの種類に関するよくある疑問についてお答えいたします。
自分に合ったピルの種類がわかりません
自分に合ったピルを選ぶには、まずはどんな目的でピルを服用するのかに目を向けてみましょう。ピルは種類によって、様々な特徴があります。避妊目的なのか、生理に関する悩み改善のためなのか目的に合うピルを選ぶことで、自ずと自分に合うピルの種類が見えてくるはずです。また、飲み忘れなく服用することも大切ですから、自分にとって毎日忘れずに飲みやすい周期タイプで選ぶのも1つです。
種類によって服用のタイミングは異なりますか?
どの低用量ピルも決められた周期の間は毎日服用します。ただし、休薬期間があるもの・連続服用できるもの・毎日飲み続けるタイプのもの、ピルの種類によって服用期間は異なります。また、ピルを飲むタイミングは、1日のうちどの時間帯でも問題はありません。ただし、どのピルも毎日決まった時間に飲むことが推奨されています。毎日決まった時間に飲むことで、ピルを飲む習慣が身に付きやすく飲み忘れ防止にもつながります。
種類によって避妊効果は変わりますか?
低用量ピルによる避妊効果は高く、正しく服用できれば1年間の避妊の失敗率は0.3%とも報告されています。ちなみに避妊方法としてメジャーなコンドームの場合は、どんなに正しく装着しても1年間の避妊の失敗率が2%、一般的な使い方では10%の失敗率があります。このことからも低用量ピルは避妊方法として効果的であることがわかります。そして、ピルの種類によって避妊効果が大きく変わることはありません。避妊目的でピルを服用する場合は避妊効果を気にするよりも、不正出血・性欲減退などのマイナートラブルが起きにくい点をポイントにピルを選ぶと良いでしょう。低用量ピルは望まない妊娠を避ける方法として、メリットの多い避妊方法です。ただし、避妊はできても性感染症(STD)の予防はできません。性感染症予防と避妊効果、両方の観点で考えると低用量ピルとコンドームの併用が安心です。
編集部まとめ
低用量ピルは種類が豊富なだけに「どれを選んで良いのかわからない」「服用が面倒そう」と考える方も少なくありません。
しかし、種類が多いということはそれだけ自分に合う薬を見つけやすいというメリットがあります。
「低用量ピルが気になるけれどどの種類を選んで良いのかわからない」という方は、まずは目的を考えてみましょう。
また、医師に服用目的・健康状態・生理状況などから自分に合うピルを総合的に判断してもらうことも大切です。
ピルの服用を検討している方や避妊・生理について悩んでいる方は、まずは専門医に相談してみましょう。