違反切符じゃない「指導警告」って知ってる?

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交通違反をすると、赤切符や青切符が切られることがあります。これにより、違反点数が課せられたり反則金を支払ったりすることになりますが、違反切符を切るまでには至らないケースでは「指導警告」がなされることがあります。

指導警告とは、警官に口頭で指導や注意喚起を受けることです。その際、黄色やピンクなどの「指導警告票」と呼ばれる用紙を手渡されます。これらは違反切符とは異なりますので、違反点数や反則金が課せられることはありません。

いったい、指導警告とはどのような目的で定められているのでしょうか?

車・バイクだけじゃない!指導警告は自転車や歩行者も対象に

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指導警告は、違反切符を切るまでには至らない程度の交通違反であっても、交通に携わる人々にルールを守ってもらうように促して、事故を未然に防ぐことが目的です。

つまり、指導警告は車やバイクだけでなく、自転車や歩行者に対しても行われる可能性があるのです。

例えば、山口県警察の公式サイトに掲載されている「交通指導取り締まりQ&A」をチェックすると、「交通指導取り締まりの理由」などと同列で「警告票の運用について」の項目があります。

内容は、“自転車等の交通違反のうち、交通切符による検挙措置に至らない場合であっても、自転車利用者に対し、「警告票」を交付して、「車両」として自転車利用者が従うべき基本的な交通ルールの徹底を図るための指導警告を行っています”というもの。

つまり、自動車教習所、あるいは地域の交通安全教室などで学んだ交通ルールを再び周知するように促して、「反則による違反点数や反則金、罰則は課さないけど次から注意して通行するように」と伝える目的で指導警告が行われているといえます。

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実際に提示されている指導警告の見本用紙をチェックしてみると、「自動車」「原付車」に加えて「自転車」「歩行者」も対象であるような構成で警告用紙が作られています。

山口県警察の公式サイトを改めてチェックしてみると「より安全で快適に生活を送るためには、自動車ドライバーはもちろん、自転車利用者、歩行者すべての方が、交通ルールを守ることが大切」との文面も見受けられます。

つまり、自転車や歩行者も事故を起こさず、道路交通を潤滑にできるよう気を付けなければならない立場であるということ。信号無視などの交通違反をしたら、車やバイクのドライバーと同様に指導警告を受ける対象となるのです。

指導警告、どれくらいある?実際に警察署に問い合わせてみた

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指導警告はどのような場面で使われているのか、神奈川県警察交通部交通指導課の担当者より詳しく話を伺いました。すると、意外な実情が担当者の話で明らかとなります。

「指導警告の対応を行う機会は現状、“自転車の交通違反”に対して行うケースが多いです。

自転車側が信号無視を起こしたなどの状態で、自動車などとの接触事故が数多く発生しています。他の乗り物と比較しても、自転車に関しての事故件数は大幅な減少となっていないのが実情です。

そのような状況を改善するため、警察官による自転車の交通違反を防ぐための取り組みを強化しており、指導警告の対応はその一環として行っています」とのこと。

神奈川県警察では、警察官が自転車の使用者(乗員)に対して口頭での指導、および警告の内容に沿った注意喚起が書かれている用紙を渡した件数を集計しており、年間で約13万件(令和3年度)にも達するとのこと。

車・バイクのドライバーでも交通違反をした際でも指導警告の対応をするケースがあるそうですが、それらと比較しても、自転車の対応件数の多さが目立っているそうです。

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なぜ、自転車の対応件数が多いのでしょうか。神奈川県警交通部交通指導課の担当者の見解を伺いました。

「自転車は、免許を所持している車・バイクの運転手と異なり、幼児やお年寄りをはじめ、交通ルールを十分に学んでいない・理解していない状態で運転している人が多いのが実情です。

神奈川県内で発生している交通事故の3割が自転車の絡んだ事故であり、そのうち7割は自転車側が何かしらの交通違反をしていることが事故に結びついていると捉えています。

人々に交通ルールを理解してもらい事故件数の減少に繋げたいのが、指導警告が増えている要因だと考えています」

近年では警視庁(東京)が「自転車の交通違反取り締まり強化」を公表して話題となっています。幅広い年代へ交通ルールを周知させて、自転車が原因の事故を少しでも減らしたいというのが、指導警告の存在意義・役割となっているのです。

指導警告が「交通安全」を考え直すきっかけに

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自転車は、運転免許が不要であることに加え、交通ルールの知識を十分に理解していなくても、簡単に乗れてしまう乗り物です。

自動車・バイクの運転時に課せられる「違反点数」「反則金」とは異なるものの、昨今は信号無視などの悪質な交通違反に対して懲役や罰金刑が課せられるように法律の整備が行われています。

近年のフードデリバリー(食品配達)の増加やロードバイクを愛用する人々が増えている状況も考えると、自転車を対象とした「道路交通法」の見直しを進めていくべきなのかもしれません。

指導警告は、人々を問わず「交通安全」を考え直すきっかけを担っています。いくら罰則がすぐに与えられないにしても、事故を未然に防ぐために交通ルールを理解し直し、安全な交通環境を実現するために手を取り合うべきではないでしょうか。