事件が起きた静岡県裾野市の私立認可保育園「さくら保育園」

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 伝い歩きが上手になるに従い、徐々に行動範囲が広がる1歳児。好奇心から危ない行動を取ったり、自我が芽生えれば言うことを聞かなくなったりもする。やがて言葉の意味を少しずつ理解できるようになる。

【写真】“ギャル”時代の三浦容疑者

 静岡県裾野市の伝統ある私立認可保育園『さくら保育園』の1歳児クラスでもまた、思い通りにならない子どもたちに歴代保育士は手を焼いてきたに違いない。

 しかし、今年度の担当保育士6人中、3人は園児に振り回されることを嫌った。

“頭をたたく”“宙吊り”…園児への暴行の数々

《給食を食べない園児に対し、突然、後ろから頭をたたく》
《棚に入った園児の足をつかんで引っ張り出し、足をつかみ宙吊りにする》
《園児の頭をバインダーでたたき泣かせる》

 内部告発によって不適切保育が暴かれたのち、同園が職員へのヒアリングなどで確認した問題事例は6〜8月にかけてこの3例を含め16項目にのぼる。頬をつねったり、おでこをたたいたり、カッターナイフの刃をスライドさせて脅すこともあったというからまさしく鬼の所業だ。

「ほかにも、特定の園児を睨みつけ声を荒げてズボンを無理やりおろしたり、感染症の疑いがある園児の尻をほかの園児に触らせたりと悪ふざけがすぎる。言葉を理解できない園児に“ブス、デブ、ガングロ”などと言って容姿をいじったり、昼寝中の園児に“ご臨終です”と何度も言ったり。子どもじみたイジメを楽しんでいるかのようで、保護者からは“人間のすることじゃない”と憤る声が上がっている」(全国紙社会部記者)

 園児を虐待したとして県警裾野署が同園保育士の三浦沙知容疑者(30)、小松香織容疑者(38)、服部理江容疑者(39)=いずれも退職=の3人を暴行の疑いで逮捕したのは12月4日のこと。

 園が動かないため市に通報した内部告発者=退職=に対し、櫻井利彦園長(53)は土下座して口外しないよう頼んだというから呆れる。全職員に対して機密事項を漏らさない誓約書も求めており、市は園長を犯人隠避の疑いで刑事告発。その市も、8月下旬に事態を把握しながら公表まで約3か月かかる危機意識のなさで、担当者と監督責任者の処分を表明している。

 3人の元保育士は警察の取り調べに対し、おおむね容疑を認めながら、「しつけの一環だった」と釈明をする者もいた。

 3人のうち最も年下で正規職員だった三浦容疑者は、園から離れた同県沼津市で夫と暮らす。約2年前に新築した一戸建てはアメリカンテイストで、広々とした駐車場でバーベキューを楽しむ姿を地元住民に見られていた。

「なんたって駐車場は5台分。自宅1階のシャッターを開放し、仲間とグリル台を囲んで酒を飲んでいた。三浦容疑者はシャキシャキ動き回るなど元気いっぱい。バーベキューは日没後まで続くこともあり、いつ終わるんだろうと不安だった。茶髪だし愛想もないから保育士とは思いもしなかった」(近所の男性)

 地元の小中学・高校を経て県内の大学で保育士資格を取得。ソフトボール部で活躍したスポーツウーマンは、EXILEの関口メンディーのファンという“ギャル”だった。

「若気の至りというよりも、そう振る舞うのが好きだった印象がある」(知人男性)

 逮捕容疑は女児の顔を強く押す暴行。

泣いている園児をスマホで撮影

「ほかにもロッカーに入って泣いている園児の姿をスマホで撮影して笑っていたとも。小松容疑者に次ぐ多数の不適切保育に関わった疑いが持たれている」(前出の記者)

 その小松容疑者は臨時職員として勤務し、裾野市内の一戸建てに約10年前から夫、子ども2人と住んでいた。

「やさしい先生だった」と事件に涙する園児もいる。近所の主婦はこう語る。

「きちんと挨拶をするし、地域の清掃も必ず参加するし、班長も立派に務めたかたです。園の関係者が内部告発したと聞いたとき、告発者は小松さんだろうと思ったぐらい」

 そんな規律正しい人物がなぜ虐待に走ったのか尋ねると、

「……魔が差したんじゃないでしょうか」(同・主婦)

 逮捕容疑は男児の宙吊り。私生活とのギャップは大きい。

 派遣職員だった服部容疑者は約5年前、同県駿東郡長泉町の中古住宅を購入し、一家で引っ越してきた。

可愛らしく、やさしいお母さん

「可愛らしく、やさしいお母さん。小学生から幼児まで3人の子育てをしながら仕事もこなしていたので頭の下がる思いでした」(近所の住民)

 家族仲がよかったといい、庭で親子バーベキューをする様子をよく見られている。

「虐待なんて想像がつかない。微笑ましい親子なので、お子さんがどれほどショックを受けたのか。心配しています」(別の住民)

 男児の頭をバインダーでたたいた疑い。服部容疑者はほかの不適切保育に関わった疑いが出ておらず、「新型コロナの影響で業務量や気遣うことが増えてストレスを感じていた」などと供述している。

 容疑者たちは逮捕前、家族に退職理由をどう説明したのか。言い分も含め夫に話を聞こうとそれぞれの自宅を訪ねたが、三浦、小松の両容疑者宅はインターホンに応答なし。服部容疑者の夫は「勘弁してください」と取材を断った。

「悪いことをしたら小松先生のところへ連れて行くよ」

 一方、同園のほかの保育士の一部は、3人の虐待を目撃しながら見て見ぬふりをしていたと報じられている。しかし、園の関係者は「そんな控えめな話ではない」と話す。

「園児たちに“今度悪いことをしたら小松先生のところへ連れて行くよ”とか“言うことをきかなかったら三浦先生に叱ってもらうからね”などと脅しに使っていたようだ。園児たちがイヤイヤをするほど怖がる存在だったから効き目があったのだろう」(同)

 つまり、同僚も、都合よく“鬼ババ”役として利用していた疑いがあり、注意するどころか容疑者たちの暴走を加速させていたかもしれないのだ。

「今後は共犯関係も含めて16項目への関与を詳しく調べていく。6月以前から虐待が常態化していたかについても捜査する」(捜査関係者)

 罪が認められれば刑事罰を受ける可能性のある3容疑者。だが、その存在を悪用して憚らなかった同僚の“罪”は、だれがどう罰するのか――。