2つのアプリを同時に表示すると、操作効率が格段に上がる。動画のながら視聴も可能だ(筆者撮影)

画面を分割し、異なる2つのアプリを同時に開くことができるのは、Androidならではの機能だ。ディスプレーサイズの大きな端末なら、アプリを2つ開いても視認性は高い。大画面スマホの多いAndroidのメリットを生かした仕組みと言えるだろう。動画を見ながらSNSに感想を投稿したり、メールを見ながらカレンダーを開いて予定を調整したりと、利用する場面は少なくない。

呼び出し方は端末の種類やメーカーごとに異なるが、代表的なのは、アプリ履歴から画面を分割するというもの。Android 13を搭載したグーグルの「Pixel 7 Pro」では、アプリ履歴に表示されたアプリアイコンを長押しして、「上に分割」を選ぶと、そのアプリが画面上半分に隠れ、もう1つのアプリを履歴から選択できるようになる。あらかじめ、アプリを履歴に残しておかなければならないのは少々面倒だが、同時に2つのことができるのは便利だ。

この画面分割、実は2つの異なるアプリを表示するだけの機能ではない。Chromeの場合、ブラウザーそのものを2つ表示することが可能だ。また、アプリによっては画面分割に非対応なこともあるが、裏技的な設定で強制的にこれを有効化することもできる。画面分割機能に力を入れているメーカーもあり、あらかじめアプリのペアを作っておくことも可能だ。ここでは、Androidの特徴である画面分割をもっと活用するテクニックを紹介していこう。

Chromeなら同じアプリで画面分割が可能

2つの異なるアプリを1つの画面内に起動するというのが画面分割機能の基本だが、Chromeに関しては、同じアプリを同時に表示させることができる。ネットショッピングの際に、価格を比較しながらどちらで購入するかを決めたり、ニュースサイトで読みたい記事を複数開いておいたりといったことができ、Chromeを2つ開けるメリットは意外と多い。オンラインのフォームに入力する際に、何か別のサイトを見ながら書き写すこともできる。一般的なアプリと比べブラウザーは用途が広いため、画面分割で表示する価値があるというわけだ。

ただし、標準的なAndroidの場合、Chromeを2つ開くのはややトリッキーな操作が必要になる。Pixelの場合、冒頭で挙げたように、まずアプリの履歴からChromeを開いて、アイコン部分を長押ししてからChromeの画面を分割する。ここで、通常なら、画面下半分に開くアプリを選択するが、アプリの履歴には同じアプリが表示されない。そのため、いったん、適当にアプリを選んで画面を分割する必要がある。

アプリが上下に分かれて表示されたら、次はChrome側を操作する。画面上部のツールバーに配置されている設定メニューをタップすると、普段は表示されていない「新しいウィンドウ」という項目があることに気づくはずだ。これを選ぶと、もう1つのウィンドウとしてChromeが画面下に表示されるようになる。あとは、もう1つのChromeで、呼び出したいサイトを開くだけでいい。


Chromeを開き、画面を分割したあと、メニューから「新しいウィンドウ」を選択すると、もう1つのChromeが画面下に表示される(筆者撮影)

Chromeのタブはウィンドウごとに開くことが可能だ。また、いったん開いてしまえば、1アプリの表示に戻したあとでも、設定メニューからウィンドウを行き来することができる。この場合は、設定メニューを開き、「他のウィンドウに移動」をタップし、移動したいウィンドウを選択すればいい。ウィンドウごと消したいときには、「ウィンドウ(2個)を管理」を選択。消したいほうのウィンドウのメニューを開いて、「ウィンドウを閉じる」をタップする。

Pixelでは呼び出し方が少々複雑だが、端末によっては、もっと簡単に2つ目のウィンドウを呼び出すことができる。例えば、フォルダブルスマホの「Galaxy Z Fold4」では、本体を開くだけで設定メニューに「新しいウィンドウ」という項目が表示される。同端末では、リンクを長押しして、もう1つのウィンドウを開くこともできる。これだけのためにフォルダブルスマホを選ぶ人は少ないと思うが、利便性が高い機能なので覚えておいて損はないだろう。

非対応のアプリも強制的に分割

便利な画面分割機能だが、あくまでアプリが対応していればの話。端末にあらかじめインストールされているアプリは、ほとんどが分割表示で利用できる一方、サードパーティ製アプリの中には非対応のものも存在する。ゲームなど、一定の画面比率で使ってもらいたいアプリは、あえて画面分割機能が無効化されていることがある。非対応のアプリの場合、アプリ履歴でアイコンを長押ししても、「上に分割」という項目が表示されない。

このようなアプリをどうしても画面分割で利用したいときには、「開発者向けオプション」という裏技を使うといい。開発者向けオプションとは、アプリの解析やデバッグをするために、端末の設定を大幅に変えられる機能のこと。通常、初期状態だと無効化されているため、設定メニューには表示されない。とはいえ、呼び出す方法は簡単だ。まず「設定」を開き、「デバイス情報」をタップする。このデバイス情報のいちばん下に、「ビルド番号」という項目があるはずだ。ここを連続してタップすると、開発者向けオプションが有効になる。


「開発者向けオプション」を有効にしたあと、「アクティビティをサイズ変更可能にする」をオンにする(筆者撮影)

有効化後は、「設定」の「システム」を開いてみよう。メニューの下のほうに、「開発者向けオプション」という項目が追加されることがわかるはずだ。ここをタップし、画面をスクロールさせ「アクティビティをサイズ変更可能にする」のスイッチをオンする。「開発者向けオプション」はかなり項目数が多いため、見つけにくいときには検索用の虫眼鏡マークをタップし、「アクティビティ」などのキーワードを入力するといい。

この項目をオンにすると、画面分割機能が強制的に有効化され、どのアプリでも利用できるようになる。筆者の環境では、ネットワークの通信速度を測定する「Speedtest.net」というアプリが画面分割に対応していなかった。スピードを測定したあと、その場所がわかるようにマップアプリと一緒にスクリーンショットを撮りたかったため、この設定が役に立った。

ただし、アプリによっては分割後の画面比率に対応していないため、表示が崩れてしまう可能性もある。開発者向けオプションは、あくまでアプリの開発を補助する目的で使う機能。一般ユーザー向けではないことは、念頭に置いておきたい。また、やみくもに設定を変更してしまうと、通常の動作に影響を与えてしまうおそれもある。画面分割を強制的に有効化するだけなら大きな問題はないが、設定の変更は慎重に行いたい。

あらかじめ作ったペアを呼び出す

画面分割は、呼び出す手順が少々複雑なのが難点。例えば、PayPayとdポイントアプリを同時に開きたいと思っても、まずどちらかを開いたあと、履歴から画面分割のメニューを呼び出す必要がある。履歴にもう1つのアプリが残っていないと分割時に呼び出せないため、準備も必要になる。PayPayとdポイントの例だと、レジ前でサッと呼び出したくなるが、そのための手順が複雑すぎる。


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ただし、これはあくまで標準的なAndroidの話。Androidは、メーカーが個々にカスタマイズを加えているため、機種によっては独自の方法で画面を分割できるケースもある。サムスン電子のGalaxyシリーズに搭載されている「アプリペア」は、その1つだ。この機能を使うと、あらかじめ作成しておいた組み合わせを、「エッジパネル」と呼ばれるランチャーからワンタップで起動することができる。上記のように、決済アプリとポイントをアプリを同時に呼び出す際に活躍する機能だ。

OSのバージョンによって操作方法はやや異なるが、Android 12Lを搭載したGalaxy Z Fold4の場合、まずは、Pixelなど、ほかのAndroidと同じようにアプリを2つ画面に表示する。ここで、画面中央の分割線上に表示された「…」をタップし、お気に入りマークを選択すると、アプリがペアとして記録される。あとは、エッジパネルから、このペアを呼び出すだけだ。


Galaxyのエッジパネルには、あらかじめ作成したアプリのペアをアイコンとして置いておくことができる(筆者撮影)

同様に、ソニーのXperiaシリーズにも、「21:9マルチウィンドウ」というアプリが内蔵されている。このアプリを使うと、アプリに示された手順に沿っていくだけで、簡単に画面を分割して、2つのアプリを起動することができる。また、Galaxyのエッジパネルと同様、「サイドセンス」と呼ばれるランチャーでアプリの組み合わせをあらかじめ設定しておくことができる。

そのほかの端末でも、アプリを使うことであらかじめ2つのアプリのペアを作成しておくことが可能だ。ここで利用したのは、「Split Screen Launcher」(無料)というアプリ。アプリを起動し、「SHORTCUT+」というボタンをタップすると、上、下それぞれに表示するアプリを追加する画面が表示される。アプリを選んだら、「SAVE」をタップ。「ホーム画面に追加」を選ぶと、アプリのペアが画面上に表示される。

ただし、このアプリはOSのバージョンや端末によっては正常に動作しないこともある。筆者の環境では、Galaxy Z Fold4では正常に画面を分割できた一方、Android 13を搭載したPixel 7 ProなどのPixelシリーズでは、アプリが順番に起動するだけだった。すべての端末やOSバージョンで有効というわけではないようだが、アプリの組み合わせを簡単に作れる手段として覚えておくといいだろう。

(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)