「捻挫」したときの受診の目安は? 放置すると危険なワケを柔道整復師が解説

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身体損傷としては比較的軽度に扱われがちな「捻挫」ですが、もしかしたら「受診するまでもない」と思っていませんか。また、あらためて捻挫とは、どのような損傷なのでしょうか。捻挫を放置したときに生じる悪影響についても知っておきたいところです。そこで今回は、捻挫について「うちだ接骨院」の内田先生を取材しました。

捻挫とは?

編集部

まず、捻挫について教えてください。

内田先生

捻挫とは、骨折や脱臼に至る前の外力による不調のことで、重症度により1~3度に分類されます。このうち2度や3度に該当するようなら、「受診すべき」だと考えます。ただし、患者さんが重症度を鑑別するのは難しいので、とにもかくにもまずは受診して治療の必要性を調べてもらうのがいいでしょう。

編集部

しかし、「X線検査で調べてみましたが、なんともありません」と言われることもあるのですよね?

内田先生

そうですね。しかし、捻挫を身近なモノに例えるとしたら、「繊維状になっているチーズを数本“さいた”状態」です。この程度の損傷は、なかなかX線に映りません。その一方、“さく”ような状態がずっと続いていくと、いずれ重大な損傷を起こしかねないのです。

編集部

だとすると、医療機関で「治った」と言われた場合にしても依然、爆弾を抱えている可能性があるということですか?

内田先生

あり得るでしょう。医療機関を受診して患者さんが「まだ痛い」と申告したとしても、痛み止めや湿布の処方で終わってしまうことが考えられます。他方で接骨院や整骨院なら、診断というプロセスがないので、そのまま施術を受けられます。つまり、放置には至らないということです。

編集部

捻挫の箇所と痛む箇所がそもそも違うということは、あり得るのでしょうか?

内田先生

捻挫に限らず、「痛む箇所」と「痛む原因が起きている箇所」が違うことは、往々にしてあり得ます。例えば、腰をひねっているのに首が痛む場合などです。接骨院や整骨院は痛む患部だけを見ず、不調そのものにアプローチしていきます。その点が私たちの存在意義だと考えます。

捻挫をしたときの受診や切り上げ時のタイミングは?

編集部

続けて受診のタイミングです。痛くなければ受診しなくてもいいのですよね?

内田先生

外傷を除くと、費用の問題もありますから「痛くなければ受診しない」ということになるのでしょう。ただし、少しでも違和感があるとしたら、念のために受診して調べてもらいましょう。その結果、「特段の加療は不要」と判断することもあるはずです。これは、整骨院や接骨院でもあり得るケースです。

編集部

続けて、痛みが完全に引いたときです。やはり通院の必要性を感じないのですが?

内田先生

最初に痛んでいて、その後、治療や施術を通して痛みが消えた場合のことですよね。「痛みがなくなった=治った」とは言いきれません。ぜひ、医師や施術者の指示に従ってください。例えば、靱帯(じんたい)が伸びたままでいると、いずれ悪化するかもしれません。また、いわゆる「捻挫ぐせ」が付くことも考えられます。そして、捻挫ぐせがヘルニアなどに発展していくこともあります。

編集部

怖いのは、前述の医療機関で「治った」と診断された場合です。

内田先生

痛みや違和感が残っていたら、その医療機関ではどうしようもできないので、整骨院や接骨院などへご相談いただきたいですね。X線に映りきらない異常も考えられますし、先ほどの「痛む箇所」と「痛む原因が起きている箇所」が違うパターンも考えられます。実際、医療機関が保険の範囲内でどこまできめ細かく診てくれるかは疑問が残る点ではあります。

編集部

だとすると、整骨院や接骨院と医療機関が連携していれば安心そうですね。

内田先生

そのとおりです。当院では、医療機関と連携しながら「医療の枠組みから漏れてしまう人」への施術もおこなっています。その方が患者さんにしても医師にしても「ハッピー」ですし、私たちもハッピーです。医療機関と整骨院や接骨院の間には役割分担があって、それぞれ余計な役割を背負いこまないようにしたいものです。無理に背負うと、患者さんを含めた三者が「不幸」になりかねません。患者さん、医療機関、整骨院や接骨院の「三方良し」が理想的です。

捻挫をしたときの応急処置について

編集部

捻挫が痛むのに、そもそも受診せず自分でなんとかすることについてはいかがでしょうか?

内田先生

サポーターや湿布などで応急処置をすること自体は否定しません。また、費用がかかることなので、そこはお任せします。ただし、「初診で調べてみること」と「通院して回復していくこと」は分けて考えたいですよね。「初診で調べてみること」だけでもいいので、相談されてみてはいかがでしょうか。

編集部

たしかに、悪化してから騒ぐのでは本末転倒ですよね。

内田先生

捻挫からの発展で考えられる代表的な損傷は疲労骨折ですね。心配なのは、知識の乏しい学生さんが、痛みの自覚のないままスポーツを続けているケースです。先述したように、少しずつチーズをさいているとしたら、いずれ大事に至るでしょう。

編集部

捻挫だと思っていたら、別の運動器疾患というパターンもありそうです。

内田先生

大いにあり得ます。最も怖いのは、骨肉腫やがんです。運動器疾患に関しては、我々接骨院でも、ある程度ですが拾えるようにしています。もちろん、最終的な診断を付けるのは医師なので、医療機関へスムーズにご紹介する流れです。そのため、先ほどの役割分担の一環だと思っています。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

内田先生

みなさんを健康に導いていくには、もちろん医師の力も必要ですし、我々の力も必要だと確信しています。当院では、必要に応じて専門医へのご紹介もしています。常々、「マッサージだけをやっていればいいのではない」と自戒しているところです。捻挫による違和感を覚えたら、ぜひ整骨院や接骨院にご相談ください。

編集部まとめ

捻挫について、繊維状のチーズの例えが秀逸に感じました。身体組織の多くは繊維ですから、外圧によってさけます。つまり、通院の必要性を「痛み」ではなく、「身体に起きていること」で判断するべきです。その確認方法が初診時の検査ということなのでしょう。そして、検査と治療・施術とは、分けて考えます。「念のために調べておくこと」も立派な受診動機であることを知っておいてください。

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