ロシア進出の日本企業、 1割が「事業撤退」へ 「脱ロシア」、事業停止フェーズから第二段階に
ロ事業撤退割合、先進諸国で下位2番目―日本企業の「ロシア進出」状況調査(10月)
ロシアでのビジネスから撤退=日本企業の「脱ロシア」の動きが再び活発化してきた。2022年2月時点でロシアへの進出が判明した国内上場企業168社のうち、10月25日までにロシア事業の停止や制限・撤退を新たに発表・公開した企業は、全体の4割超に当たる75社で判明した。このうち、ロシア事業からの完全撤退に着手、または計画する企業は18社に上り、全体の1割に達した。ロシア事業からの撤退を表明した企業は8月時点まで10社に満たなかったものの、9月以降に急増。10月25日までの2カ月間で10社の撤退が新たに判明するなど、ここにきてロシア事業から撤退する動きが急速に広がっている。帝国データバンクが米エール経営大学院の集計をもとに、各国企業の「ロシア事業撤退(Withdrawal)」割合を分析したところ、全世界の主要企業約1400社のうち23%に当たる300社超がロシア事業撤退を表明したことが分かった。このうち、日本企業における同割合は先進主要7カ国中2番目に低い水準となった。5割を超えるノルウェーや、英米企業に比べると日本は比較的低水準にとどまるものの、最下位からは脱した。グローバル企業では、食品大手のダノン(仏)がロシア事業の9割に相当する乳製品・植物由来食品の両事業から撤退することを明らかにしているほか、完成車メーカーのメルセデス・ベンツ(独)やフォード・モーター(米)もロシア事業から撤退を表明している。
現地生産を展開する企業を中心に、ロシアからの「撤退」広がる見込み
日本企業ではこれまで、ロシア工場の操業停止や同国との製品輸出入停止といった、ロシアと距離を置く動きは続いた。背景には、ロシア市場は再参入のハードルが高く、これまで新興市場として開拓してきた市場の明け渡しにつながる容易な撤退は決断しがたい側面があった。加えて、ロシア事業依存によるレピュテーションリスクは「当初の想定に比べて深刻度は小さい」といった指摘もあり、ロシアビジネスの見直しを当面「様子見」する企業が多かった。一方、部品調達などサプライチェーンの混乱が長期化し、生産再開が見通せないことを理由に大手国内完成車メーカーが現地生産の撤退を決断するケースも出てきた。少数にとどまっていた日本企業の「脱ロシア」の動きは、ウクライナ侵攻から8カ月を経て、様子見=事業停止から撤退へと方針転換を決断するケースが増加する可能性がある。