俳優のみならず、近年は“創作あーちすと”として、ジャンルを超えた活動に取り組んでいるのんさん。10月28日公開の映画『天間荘の三姉妹』では、ご自身のイメージとも重なる天真爛漫な主人公を演じています。撮影時のエピソードから、現在取り組んでいるアップサイクルのプロジェクトへの思いまで、たっぷり話していただきました。

映画『天間荘の三姉妹』のんさんインタビュー

「最近は、胸が痛むような出来事が次から次に起こって、心を閉ざしたくなってしまうこともありますよね。そんなときにこの映画を見て『大切な人も、自分のことを思ってくれている』と感じられたら、またがんばれるかもしれない。止まっていた時間が動き出すような、希望と勇気を届けられる作品になったらいいなと思います」

【写真】クールな表情が大人っぽいのんさん

そうのんさんが話すのは、天界と地上の間にある旅館・天間荘を舞台に、人の生と死、そして大切な人との関係を描いた映画『天間荘の三姉妹』。郄橋ツトムさんのコミックを実写化したもので、のんさんは、交通事故で臨死状態に陥り、天間荘へやってきた天涯孤独な少女・小川たまえを演じます。

「突然失われた命の行方を、亡くなった方の目線で語る…という設定がすてきだな、と思いました。今まで、残された人の悲しみに寄り添うことはあったけど、亡くなった人の気持ちに思いを馳せたことはなかったので。劇中に出てくるような天界と現世の狭間にある街が本当にあって、そこで亡くなった人が魂を癒やして、現世にいる自分を思ってくれているのかも…。そう考えると、止まっていた時間が動き出して、また生きようと思える気がします」

厳しい環境でも明るさを失わず天真爛漫に振る舞うたまえは、のんさん自身とも重なる印象。それもそのはず、もともと原作者の郄橋さんも、のんさんをイメージして描いたのだそう。

「私は自分の演技がすごく好きだから、それを守りたいという意識が強いんです。自分の才能が死なないために、自分の選んだ道を突き進んでいる。まるっきり同じではないかもしれないけど、たまえちゃんの、下手くそでも実力がなくても、一生懸命向かっていくところには共感しますね」

 

●イルカと心が通じた瞬間はすごく気持ちがよかった

「もう一度現世へ戻るか、もしくは天へと旅立つか」を決めるまで、2人の異母姉とともに天間荘で過ごすことになったたまえ。水族館で働く次女のかなえに教わりながら、イルカのトレーナーとして成長していく姿も本作の見どころです。

「まずはイルカとふれあったり、ヒレにつかまって一緒に泳いだりして、慣れてきてから、ジャンプなどの技を出すためのハンドサインを練習しました。3か所の水族館で特訓したのですが、施設によってサインが違うので覚えるのが大変でしたね。それに、イルカもいつも従順なわけではないので(笑)。心が通っていないタイミングでサインを出しても伝わらないから、ちゃんとイルカの興味が向いたタイミングを見極めないといけないんです。難しいけど、自分が送ったサインで、ショーで見るような大技を出してくれたときはすごく気持ちよかったですね」

●話をするうちに大好きになった、共演の大島優子さんと門脇麦さん

異母妹であるたまえを温かく迎え入れる長女ののぞみは大島優子さん、次女のかなえは門脇麦さんが演じています。おふたりとは初共演だそうですが、「大島さんも門脇さんも、すごく気さくで優しくて…」と振り返るように、姉妹らしい自然な空気感が画面を通しても伝わってきます。

「以前から作品を拝見してすてきな役者さんだと思っていたので、その分緊張していたんです。でも実際にお会いしてお話しするうちに、おふたりとも大好きになりました。ちょうど撮影時期がハロウィーンと重なっていたのですが、大島さんと私は“ハロウィーンを楽しむ派”だったので、今年の仮装はどうする? なんて話していたら、大島さんがハロウィーン用のカチューシャをみんなの分買ってきてくれて。それをつけてカメラテストをやったりしました(笑)」

家族とのつながりについても考えさせられる本作ですが、のんさん自身にとっての家族とは、どんな存在なのでしょうか。

「家族は、無条件で自分を肯定してくれる存在。失敗したらどうなっちゃうんだろう…? と不安になったときも、家族が受け止めてくれると思えば、『まあ失敗してもいいか』とリラックスして立ち向かえる。そういう安心感があります」

 

●今まで興味がなかったものも、見てみると新しい発想がわいてくる

現在は俳優のみならず、歌手としてもアーティストとしても活躍中。インスピレーションを得るため、日頃から積極的なインプットを心がけているそう。

「美術館へ行ったり、配信ドラマを見たり…。好きなものはもちろん、今まで興味がなかったものも、見てみると『自分だったらこうやるのに』と新しい発想がわいてくるんです。最近行ったのは『水木しげるの妖怪 百鬼夜行展』。もともと妖怪が好きなので、並んでいる原画を見てテンションが上がりました。配信ドラマでは、韓国の『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を見始めたところ。おもしろいし、ウ・ヨンウがとってもチャーミングですよね。いろんなアイデアが複雑に絡み合った構成も勉強になりました」

 

●サステナブルに関する自分なりの答えを出していきたい

創作のモチベーションがわくよう、休みの日は一気に整理整頓して、「部屋も頭の中もすっきりさせたい」とのんさん。

「でも、わりと片づけ下手で、ものもすごく多いんです。絵を描いたり洋服をつくったりするのが好きなので、どうしても道具や材料がかさばっちゃって。着なくなった服も、自分でリメイクするのが好きなので、そのための素材として捨てずに取っています」

そう話すとおり、今年の夏にはみずからアップサイクルのブランド『oui ou(ウィ・ユー)』を立ち上げ。古着となったアーティストの衣装をのんさんがリメイクによってよみがえらせ、商品として販売していくそう。

「そのために、私自身がライブで着た衣装も整理していて。商品だけでなく、自分のためのトートバッグもリメイクでつくろうともくろんでいます。2023年はこの新しい挑戦を軌道に乗せていくのが目標。私は『ジャパンSDGsアクション』で選ばれた『SDGs People』の第1号でもあるので、サステナブルに関する自分なりの答えを『oui ou』を通じて出していきたいと思っています」

【作品情報】
『天間荘の三姉妹』2022年10月28日(金)全国ロードショー

原作:高橋ツトム『天間荘の三姉妹−スカイハイ−』
(集英社 ヤングジャンプ コミックス DIGITAL刊)
プロデューサー:真木太郎(『この世界の片隅に』)
監督:北村龍平 脚本:嶋田うれ葉 音楽:松本晃彦

出演:のん 門脇麦/大島優子
高良健吾 山谷花純 萩原利久 岩井堂聖子
とよた真帆 高橋ジョージ つのだ☆ひろ 大島蓉子 不破万作/藤原紀香
平山浩行 柳葉敏郎 中村雅俊(友情出演)/三田佳子(特別出演)
永瀬正敏(友情出演)
寺島しのぶ 柴咲コウ

公式HP:https://tenmasou.com/