中日・岡林勇希【写真:荒川祐史】

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セイバー指標「WAR」で球界3位…村上、山本に次ぐ高数値

 選手を評価する指標として、ライトなファンにも浸透してきた「WAR(wins above replacement)」。チームの貢献度を数値化し、あらゆる選手を同じ土俵で比較できる。26日時点での今季トップはヤクルトの村上宗隆内野手で、全く驚きはない。しかし、野手2位には意外とも言える選手の名前が……。中日の3年目・岡林勇希外野手が堂々ランクインしている。

 代替可能な選手が出場する場合に比べ、どれだけチームの勝利数を増やしたかを示す指標で、打撃や守備、走塁、投球が総合的に評価される。セイバーメトリクスの観点からプロ野球のデータを分析する「DELTA(デルタ)」によると、トップの村上は「10.3」でダントツとなっている。

 全体2位はオリックスの山本由伸投手で「7.7」。球界のエースは、今季15勝を挙げて投手タイトルを総なめにしそうだ。そして全体3位の岡林は「6.2」を記録。完全試合を達成し、ここまで9勝を挙げているロッテ・佐々木朗希投手の「6.1」をわずかながら上回っている。

最多安打のタイトル狙える位置、空席の両翼争いで根尾に勝利

 高卒3年目の岡林はここまで137試合に出場し、打率.289、31打点、22盗塁。リーグトップの154安打を放ち、初のタイトルを狙える位置にいる。抜群のセンスを武器に、空席だった両翼のレギュラー獲りに挑んだ今季。根尾らとの勝負に勝ち、開幕スタメンを勝ち取った。1軍で本格的に戦うのは初めての経験で、苦しんだ時期もあったが、7月は打率.375、8月も打率.307をマークした。

 何よりWARの数値を押し上げているのが守備面。三重・菰野高時代には最速153キロを誇った“元投手”が、持ち前の強肩で失点を防いだ機会は一度や二度ではない。さらに盗塁以外の走塁による得点貢献を示す「UBR(Ultimate Base Running)」も12球団トップの「7.4」を誇る。

 チームが最下位に低迷する中で注目を浴びることは決して多くないが、村上や山本、佐々木朗ら球界を代表する選手たちと肩を並べるまでになった超新星。今季の中日に生まれたわずかな光明。WARの数値は、大ブレークを印象づける確かな証左だ。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1〜3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。