この記事をまとめると

■話題のSUV「CX-60」に搭載されているオーディオシステムについて解説 

■音響追求の結果ボディの捻り剛性にも寄与している

■筆者はオーディオのためにCX-60を選ぶ価値があると考えている

CX-60はオーディオ環境も凄すぎた!

 マツダは現行マツダ3以降の各車で、より効果的なスピーカーレイアウトを車体設計に盛り込むなど、多くのオーディオマニアが理想とする「原音忠実再生」と、「好みの音量で聴ける」ことを目指した、高品位なオーディオシステムの設計に取り組んでいる。

 そして、9月15日より販売をスタートしたFRベースの新たな2列シートDセグメントSUV「CX-60」では、このオーディオシステムが一段と進化した!

 マツダ3以降の各車では、フロントバルクヘッド付近や後席など室内の隅は「共振の腹」であり音圧が増加しやすく、逆にフロントドアは「共振の節」であり音圧が減少しやすいという音響特性に着目。「好みの音量で聴ける」ようにするための具体策のひとつとして、ボックスウーファーをフロントドアではなくカウルサイド(Aピラーの根元)に配置することで、低周波域の再生能力を高めつつ、オーディオ再生時の異音低減、NVH改善も図っている。

 CX-60ではさらに、カウルサイドの鋼板に深絞りのプレスを行うことで、カウルサイドウーファーのボックス容量を3リッターから4.8リッターへと、大幅に増大させることを可能にした。これにより、とくに低音域のダイナミックレンジを広げつつ、車体のねじり剛性も向上させた。

「原音忠実再生」についてはマツダ3より、高音域を受け持つツィーターをAピラー、中音域を受け持つスコーカーをフロントドアパネル上部前方(とリヤドア)に配置。フロントガラスからの反射音を低減するとともに、スピーカーからの音がより多く乗員の耳に直接届くよう改善している。

フラッグシップSUVにふさわしいこだわりを極めた音響システム

 CX-60ではさらに、ツィーターとスコーカーを乗員の耳に音がより直接届きやすい位置に配置。また、高音域では指向性が強まることも踏まえ、ツィーターはその取り付け角度にも配慮している。加えてスコーカーのセンターキャップにサブコーンを設定することで、中・高音域の落ち込みを減らし、ツィーターの音とスムーズに繋がるよう工夫している。

 進化したのはスピーカーだけではない。アンプでは、電源に使われるコンデンサーの、電解液のブレンドをマツダ専用に開発し、ノイズを除去するためのトロイダルコイルにも高音質なものを採用。発振器も伝送時の情報の劣化が少ない部品を選定している。さらに、CDなどのデジタル音源に含まれる量子的ノイズを除去する機能を、純正車載オーディオとして初めて実装した。

 今回、その音質を実車で体験できたのは、「Lパッケージ」系以下のグレードに標準装備される、8スピーカーのオーディオシステム「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」。

 ベースやバスドラム、コンガの深みと伸びがあり自然な低音が、インパネなどの共振も伴うことなく室内全体に広がるとともに、女性ボーカルやアコースティックギターの音も、極めて繊細なニュアンスまでクリアに聞き取ることができた。これはマツダ3やCX-30のマツダ・ハーモニック・アコースティックス」よりも、さらに一段と「原音忠実再生」、理想のオーディオに近づいたと評価することができるだろう。

 なお、12スピーカーの「エクスクルーシブ」系グレード以上には「BOSEサウンドシステム」が標準装備され、「Sパッケージ」および「Lパッケージ」系グレードにもメーカーオプション設定されている。

 マツダ3以降の各車のオーディオ開発を担当している統合システム開発本部電子性能開発部の若松功二さんによれば、こちらでは再生モードを「スタンダード」にすると低音域が強めになるが、「リニア」に設定すれば「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」と同様にフラットな特性になるとのこと。

 今回は残念ながら視聴する機会を得られなかったが、もし若松さんの説明通りであれば、「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」以上の「原音忠実再生」が期待できる。

 このオーディオを手に入れるためにCX-60を購入する。そんなユーザーが現れても何ら不思議ではないほど、CX-60の「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」は素晴らしい仕上がりだった。