京王線の「地下急行線計画」どうなった? 「高架+地下で複々線」実現へのハードルは
京王線の連続立体交差事業とともに、都市計画決定されている「地下急行線」。前者は工事中ですが、後者は音沙汰がありません。実現に向けた動きはあるのでしょうか。
高架化と同時に都市計画決定
京王線の笹塚〜仙川間約7.2kmで、連続立体交差事業が進められています。朝夕のラッシュ時を中心に慢性的な「開かずの踏切」となり、渋滞を引き起こしていた井の頭通りなど25か所の踏切が廃止される予定です。
ところで、2012(平成24)年に決定されたこの都市計画、実は複々線化事業として「高架2線+地下2線」という構造が最終形態となっているのです。
高架化が予定されている千歳烏山駅(乗りものニュース編集部撮影)。
縦断図では代田橋駅付近から地下へ潜り、仙川駅を過ぎた崖地で地上へ飛び出す形となっています。上北沢〜仙川では地下2層式で上下線が分かれる線形。これは地上の用地に制約がある場合、たとえば東京メトロ千代田線の根津〜町屋間などでも見られます。
この地下線は急行線として、「途中に駅を設ける計画は無い」とされています。似たような例は、小田急の世田谷代田駅周辺や、かつて西武が計画していた新宿線の西武新宿〜上石神井間などが挙げられるでしょう。ちなみにこの京王の急行線、現在は全列車が停車する明大前にも駅がなく、実現すればかなりの速達列車が走ることになりそうです。
なぜこのような変則的な複々線化計画となったのでしょうか。都市計画素案での検討経過を見ると、「全線複々線高架」「全線地下化」のなかから最適案として選ばれたとしています。
全線高架だと、事業面積が大きくなってしまい、用地買収も大がかりになります。逆に全線地下化するのは、既に高架化され耐震補強も済んだ八幡山駅をどうするのかという問題も。さらに、笹塚から地下に潜っていく際、勾配の関係で隣の代田橋駅までに地下へ潜り切れず、踏切除却につながらない、八幡山駅だけ高架を残すとしても、地上に上がる部分でやはり踏切が除却できない――そんな理由付けもされています。
で、いつ実現するの?
気になるのがこの「地下急行線」、いつ実現するのかということです。京王が高架化着手にあたって行った地元説明会の資料では、この地下線は図示されていません。
2020年の都議会定例会でも、京王線の複々線化の話はどうなっているのかという質問が上がっています。そこで都は回答として「整備スケジュールとしては、まず連続立体交差事業を先行し、踏切除却のあとで、地下線の事業を行う」としています。
現在、連続立体交差事業は事業化していますが、地下線の建設、つまり複々線化については、まだ事業化していません。このことから、実現はかなり先の未来になりそうです。
さらに実現が長引きそうな理由が、国の諮問機関「運輸政策審議会」による鉄道整備計画の最新の答申(2016年)で、京王線の複々線化は「整備が望ましい」ではなく「事業スキームを含めた事業計画について十分な検討が行われることを期待」にとどまっていることです。事業化にはコストに対して便益が十分想定されることが最低条件ですが、まずはその費用便益分析が前段階として必要だということです。
京王にこの地下急行線の現状を聞いたところ、前述の都議会での答弁と同じく「まずは連続立体交差事業を完了したうえで、地下化を進めるかの検討を行っていきます」としています。