前シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)王者とヨーロッパリーグ(EL)王者が対戦するUEFAスーパーカップ。ヘルシンキで開催された今年は、CL優勝のレアル・マドリードとELで優勝したフランクフルトの対戦となり、2−0でレアル・マドリードが勝利した。

 フランクフルトのスポーツディレクターや選手たちが口々に「レベルが違う」と認めざるを得ないほど、スコア以上に力の差は歴然としていた。先週末は、ブンデスリーガの開幕戦(金曜日に1試合だけ開催。開幕セレモニーやマイスターシャーレの返還とともに行なわれた)を戦い、ホームでバイエルン・ミュンヘンに1ー6で敗れていたので、これで公式戦2連敗。だが、フランクフルトにとっては今季序盤のビッグマッチ2連戦が厳しいものになることは想定内だっただろう。だからこそ、ここからは落ち着いてリーグ戦に取り組めるのではないか。


レアル・マドリードとのスーパーカップにフル出場した鎌田大地(フランクフルト)

 レアル・マドリード戦を前にして、フランクフルトは決定的なピンチに陥っていた。試合2日前の月曜日に、主力中の主力であるセルビア代表フィリップ・コスティッチのユベントス移籍話が進行していることが判明、コスティッチは現地ヘルシンキには入らなかった。

 彼は言わばチームにとって"戦術コスティッチ" とも言える存在だ。左のサイドアタッカーで、守備から攻撃まで90分間働き続けるきわめて貢献度の高い選手だ。鎌田大地が高い評価を得るようになったのも、コスティッチをうまく使い、またコスティッチにうまく使われる関係性ができたからだ。

 コスティッチ自身はこれまでも移籍願望を明らかにしており、昨季はラツィオ移籍にあと一歩のところまでこぎつけたが、フランクフルトは移籍金の金額に不満で破談になったとされている。ビッグクラブからいつオファーが来てもおかしくない選手ではあるのだが、このレアル戦に出場しなかったのは痛かった。

 もちろんこの試合だけでなく「長期的に見ても戦力ダウン」と、オリバー・グラスナー監督も認めざる得ない。1500万ユーロ(約20億円)と言われる移籍金で、どのような代役を獲得できるか。それ次第で今季のフランクフルトは大きく変わってくるだろう。

レアル戦は鎌田が反撃の基点に

 一方、鎌田大地はバイエルン戦ではベンチ入りしながら出場なしに終わっていた。鎌田は、バイエルン戦4日前のドイツ杯1回戦マグデブルク戦でボランチとしてプレーし、2得点を叩き出していた。昨シーズンまでと違うボランチでの起用、特に課題とされる守備面に手応えを感じ、信頼を勝ち取った一戦となった。

 だが、バイエルン戦では主将でボランチのセバスティアン・ローデが復帰したことも影響して出番なし。さすがにこれはこたえたようで、試合後はあっという間にスタジアムをあとにしている。

 その鎌田がレアル・マドリード戦では先発に復帰。前半は3−4−3のシャドーに入り、70分すぎからはボランチでプレーした。

 シャドーでもボランチでも、フランクフルトはボールをキープできる鎌田がいることで攻撃の時間ができており、攻め込まれる時間が続くなかで反撃の基点になっていた。ただし、決定力には向上の余地があるかもしれない。

 前半14分、中盤でボールを奪い取ったアンヅガー・クナウフがラファエル・サントス・ボレへ。ボレは前線を走る鎌田へと長いパスを送った。鎌田はGKティボー・クルトワとの1対1に持ち込んだが、シュートはGKに吸い込まれるように、その腕で止められた。1対1で少し時間をかけたために、クルトワの間合いに引き込まれてしまったし、戻って来たディフェンダーにもコースを狭められていた。

 グラスナー監督は「鎌田に対するクルトワのセーブは決定的だった。1?0になっていればだいぶ違ったのだが......。クルトワは大地がどこを狙って撃つか、早い段階で察知していた。それがワールドクラスというものだ」と、わざわざこのシーンを取りあげて相手GKを称えた。

 とはいえ、開幕戦で出場機会がなかった鎌田の立場を危惧する必要はなさそうだ。コスティッチが欠けて選手が足りない現在、複数のポジションをこなすことができる鎌田は貴重な存在であることは間違いない。

 コスティッチ同様、移籍が取りざたされていた鎌田。夏の移籍市場はまだ残っているが、今季チャンピオンズリーグに出場するフランクフルトを退団するとは考えづらい。フランクフルトで試合を重ね、W杯メンバー入りを狙うことになるだろう。