毎年起こる「不当解雇だ!」の声もありつつも、いろんな質問が投げかけられました。

株式優待は「ご安心ください」

 JAL(日本航空)が2022年6月21日に、第73期の株主総会を開きました。総会会場には530名の株主が集まったほか、オンラインでもこの様子が放映されています。今回も同社の赤坂祐二社長をはじめとするJALグループ経営陣に対し、会場に集った株主からさまざまな質問が飛び交っています。以下はその一例です。


JALの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

――株式優待制度の存続・新たな選択肢についてどのように考えているか?(事前質問)

JAL幹部「JALの株式優待制度は今後も継続してまいります。ご安心下さい。安定的な配当を前提としたうえで、JALファンになっていただきたいという考えのもと、サービスの優待割引を用意しています。新たな選択肢については、航空券や商品の割引以外だと、費用とみなされる可能性があり、それは企業価値向上に資するものではないと判断されるため、いまのところはできかねます。今後も優待制度の検討は進めていきます」

――国際線の需要が回復する見込みだが、ビジネス需要に変化はあるか?ビジネス客の減少がある場合は、どのようにそのマイナス分を補填するのか?(株主の男性)

JAL幹部「一定の需要は戻りきらない部分もあるということ計画を含んでいます。JALグループとしては、そういったところは観光需要を盛り上げることで需要を作っていければと考えています」

「JALアプリの評価が低い」 どう変わる?

――JALのアプリの評価が低い。レビュー評価も☆2.2と他社と比べても低く、コメントも「使いづらい」などかなり厳しいレビューが多い。アプリの使い勝手はスマホ世代にとって大きな判断基準になるかと思うが、どのように考えているか?(株主の男性)

JAL幹部「JALのアプリはまだまだ改善点が多いものと認識しています。現在運賃に関する大規模なシステム改修を終えたところで、今後は、お客様が直接利用できる改修を進めていきます。国際線についてはモバイル搭乗券、ウェブチェックイン機能の向上、多言語化を進めています。国内線については今年度中に、空港の到着前に、座席のアップグレードや空席待ちの登録ができるシステムを構築するほか、利用者と会社のやり取りをチャット形式で行う機能などを実装する計画です」

――(中期経営計画で掲げられている)ESG経営について。女性管理職30%を掲げているが、壇上に登っている役員を見ると、女性がすごく少ないと感じる。(株主の女性)

JAL幹部「女性活躍は非常に重要です。現在は21.9%と昨年比で2.4ポイント向上し、順調に推移しています。また、役員・部長級はこの3年間で2倍以上、人数で申しますと37名から78名まで増加しています。羽田や成田、大阪、福岡の空港支店長も女性です。女性の多い会社から男性が多い会社へ出向する取り組みを進めているほか、勉強会なども実施しています。役員についても、外国人や女性の比率が19.4%まで増えてきたところです」

――経営状況は理解出来たが、2010年に整理解雇された人(160名程度)の一部が、毎年のように株主総会でまだ騒いでいる。早く解決してあげたらどうだ。彼らに満足の行く対応をする方がJALのプラスになるのでは。(株主の男性)

JAL幹部「整理解雇については、2015年に”整理解雇は有効である”と最高裁で判決が出ています。法的には解決したものの、労使間の課題であるとして、会社としては真摯に話し合いを続けています。また2018年には経験者採用を開始し、整理解雇の方11名をふくめて、当社に再就職されています。当社として引き続き、雇用を軸とした自主解決を目指して労働組合と向き合って参りたいと考えています。(早期退職・希望退職をふくめ)JALを去らなければならなかった1万6000名にも迷惑をかけました。この出来事を二度と発生させないのが、私どもの責務です」

株主からの質問は「オフィス多すぎじゃね問題」にも波及

――(先ほどに続いて)整理解雇の件で再質問だ。再雇用の方法について、早期退職・希望退職は合法的だが、整理解雇は(質問者のなかでは)違法だ。同列に並べるのは間違っている。社長の考えはどうなのか。(株主の男性)

JAL赤坂社長「申し上げたとおり、整理解雇は法的妥当性については(有効として)確定しています。一日でも早く解決したいですが、解決金の締結は妥当ではありません。また雇用についても、早期退職・希望退職をされた方もいるなか、整理解雇だけを(優遇し再雇用する)……というわけには参りません。また、コロナ禍で現役の社員が社外出向するという想定外の事態が起こりましたが、そのようななかでも整理解雇の人をふくめたOBの再雇用をなんとか社内で進めてきました。そういった経緯もあり、組合とは収拾にむけ進んでいるところです」

――国内の営業所が今年度に2件増えている。空港のない京都にもある。対人系の窓口を減らすのがトレンドだと思うのか、逆行しているのでは。営業所がなぜこんなにあるのか、その設置方針について教えて欲しい。(株主の男性)

JAL幹部「京都営業所はカウンターはもっていないものの、営業の拠点としてもっています。在宅ワークの普及でオフィススペースの削減は進めています。空港や市内営業所などが分かれていますが、それを統合したところもあります」


株主総会に登壇する赤坂社長(乗りものニュース編集部撮影)。

 このほか株主からは、「整理解雇で私は20年間辛い思いをしてきた。経営層が責任を取らずにそこに座っているのが辛い」「来年には反動需要もあり、海外旅行がより盛んになるのではないか。北大西洋のアイスランド航空との提携を図ってみては」「役員報酬の仕組みと現状はどのようになっているのか。どのような見直しが行ったのか」といった意見・質問が上がっています。また今年は「整理解雇以外の質問をお受けしたい」と赤坂社長が発言するシーンも見られました。

 株主への配当は、コロナ禍で経営立て直しのさなかということもあり、今回は無配に。赤坂社長は「2022年度は2019年度水準であるEBIT800億円を目指します。足元の第1四半期については、おおむね当初の想定通りに回復が進んでいます。何としても黒字化を達成し、復配を目指します」とコメントしています。