株主さん「コストウン倍の持続可能な燃料使ったら航空券の値段上がるんじゃ」…確かに!

株主「フレッシュさが足りない」

 航空会社のANA(全日空)、ピーチなどを傘下にもつANAホールディングスが2022年6月20日に第77回株主総会を開きました。総会会場には650名近い株主が集まったほか、オンラインでもこの様子が放映されています。今回も芝田浩二ANAホールディングス社長をはじめとするANAグループ経営陣に対し、会場に集った株主からさまざまな質問が飛び交っています。以下はその一例です。


ANAの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

――ANA便を使う際、CA(客室乗務員)の高齢化が気になっている。ある一定の年齢を経過した女性CAの出口戦略をどう考えているのか。顧客満足度の面ではフレッシュさが衰えていると(質問者は)感じる。一人あたりの人件費もあがるし、若者の雇用の幅も狭くなると懸念している。CAの採用を始めとする雇用についての今後の展望を教えてほしい(株主の男性)。

ANA幹部(採用担当)「CAの採用は学生の方からの期待が大きいことは承知しているが、今年度は見送りとなっています。今後は需給バランスを正確に見極めながら、適切なタイミングで再開できるよう検討して参りたいと思います」

ANA幹部(客室担当)「実はCAは各年代に応じてそれぞれに強みをもっていると考えています。たとえば、育児を経験したCAによる子持ちのお客様の気持ちがわかる声掛けや、介護を経験したCAによる高齢の方へのホスピタリティ発揮といったことなどです。さまざまな年齢でさまざまな知見を持ち、それらを融合することで最大限のパフォーマンスを発揮できると考えています。ご存知のように、飛行機は1人では飛ばせません。チームワークで動いています。引き続き顧客価値の向上に努めていきます」

――総会の前日に予行練習をしているのか?(質問者にとって)それは必要ない。また、総会前日、当日に役員は食事会や懇親会をやるのか?それも必要ない。また、事前登録のシステムにも必要がないものがある。コロナ禍で無駄の削減が必要な中、そういったこと要求している理由はなにか。そういった”無駄”は知っているのか。(株主の男性)

ANAホールディングス芝田社長「リハーサルを実施していますが、それは、あくまで円滑に行うための準備と捉えています。懇親会は昨日も実施していませんし、本日も予定はしていません。事前登録システムの中身は承知しているが、その事項については貴重な意見として承ります」

「株主優待券」の利便性もやり玉に

――株主優待の航空券について、連休など需要の高い時期に座席が取れないなど使い勝手が悪い。それより安い運賃もあり、株主になるメリットが感じられないのだが(株主らからの事前質問)。

ANA幹部「(繁忙期に)制限がかかることは事実です。ただ、今後、国内線のマーケットは縮小していくと見込まれます。そのなかで公共交通機関として、国内線のネットワークを維持しながら、株主様への還元をするためには、適性な収益を確保することが不可欠です。また、限られた期間で販売される格安運賃には、便変更ができないなどの制限もあります。そういった利点も理解いただけますと幸いです」

――金券ショップで売られている株主優待航空券がこの2、3年、買い取り価格が競合と比べて大きく安くなっていると思う。これについて考えるところはあるか(株主の男性)。

ANA幹部「株主優待券はそもそも非売品ですが、株主のご判断でそういったところで売買されていることは承知しています。金券ショップの価格はどうこう申し上げられる立場ではありません。いまのところ、弊社の株主優待券の配布枚数は、他社と比べても劣ること無くお届けできていると理解しています。このサービスは今後もしっかりと継続していきたいと考えています」

――株主優待の航空券ではなく、期間限定のマイルなどを付与するという手段もありなのではと思うんですが。導入コストもそれほどではないと思う(株主の男性)。

ANA幹部「実はすでに検討をしたのですが、マイルは汎用性が高く、金券と同等の扱いを受ける可能性があることから、法的・税金上の問題が発生する可能性があるのです。今後もさまざまな観点から還元策を検討していきたいと考えています」

SAF利用で運賃は上がるのか? その回答は

――SAF(持続可能な航空燃料。原料に使用済みの食用油などを用いる。環境には良いが、コストが高い)について。将来的にサーチャージ制度を導入するなど、旅客の運賃に転換されるのか(株主の男性。内容は一部抜粋)。

ANA幹部「SAFはCO2の大幅の削減ができる一方、価格は現在のジェット燃料の最大10倍程度と、特にコストについては、現行とのギャップがあります。いかに国産SAFを作っていくかなど、価格を埋める努力が必要です。世界的に見ると、SAF利用による航空券への運賃転嫁の話が出ています。運賃への転嫁は、世の中の意識変容などを中長期的に見て検討していきますが、まず自社で努力をする方向です」

ANA井上慎一社長「経営は厳しい状況ではありますが、環境への取り組みについては積極的に投資を進めていきます。運賃転嫁については、実は世界的な課題となっており、国によっては、SAF利用で高くなった運賃を政府が支援(し埋め合わせ)するという仕組みもあるようです。現在、産業横断・官民共同で取り組みに向け、話し合いを進めているところです」


ANAホールディングスの芝田浩二社長(乗りものニュース編集部撮影)。

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 なお、グループで保有する旅客機の構成を今後どう変更していくのかについては「安全性・快適性・経済合理性・現有機との親和性をみながら、十分に議論を重ねていく」、好調が続く貨物事業拡大のため、追加機材を購入するのかという質問には「旅客機の運休や海運(の停滞)などは一時的な要因とも考えられる。追加機材の購入は旅客機のコンビネーションを見て判断していきたい」などと回答しています。

「需要は戻りつつありますし、長く暗いトンネルの先にようやく明るい光が見えてみたと考えています。また、コロナ禍でコストカットなど進め、うち1300億は恒久的に削減できる費用であるなど、ANAグループは筋肉質な企業に変革を遂げつつあります」。ANAホールディングスの芝田社長は次のように話します。

 株主へ配当は、コロナ禍で経営立て直しのさなかということもあり、今回は無配に。芝田社長は「可能な限り復配できるよう構造改革を進める」としています。