「赤道」とは? 時代の変化や住宅ニーズを反映する「不動産用語集」の追加用語、検索回数の多い用語に注目!
世の中にはさまざまな用語集があります。用語集には、その時代や世相が反映されていると言います。不動産用語集もいくつかありますが、不動産分野に特化した業界最大級の用語集サイト「不動産用語集(R.E.words)」(不動産流通研究所)の場合はどうか、追加用語からその傾向をつかむとともに、編集部に用語の選定や最近の傾向などについて聞いてみました。
政府の政策や法律・制度の改正、時代の要請などが反映される追加用語
不動産流通研究所は2022年4月20日に、次のようなニュースを報じました。
○不動産用語集、「不動産ID」等の用語を追加
今回は、「不動産ID」や「相続土地国庫帰属制度」、「歩行者利便増進道路」等、新たな制度に関わる用語を追加。「所有者不明土地管理命令」や「管理不全建物管理命令」等、土地・建物の管理に関連する用語も加えた。収録用語は現在3,045語。
出典:不動産流通研究所 R.E.port 不動産ニュース(2022年4月20日)
このニュースから、近年話題になった、所有者がわからずに放置されている土地(所有者不明土地)の問題の影響がうかがえます。この問題を解決するために民法が改正されたり、新しい法律が制定されたりしました。
土地の所有者がわからないけれど管理する必要がある場合、あるいは管理が必要な建物がある場合に、裁判所が管理人を専任して土地や建物の管理を命じるのが、「所有者不明土地管理命令」や「管理不全建物管理命令」です。民法の改正により誕生した用語です。また、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)」の新設で、所有権を国に移して土地を手放せる制度ができました。こうした法改正などで生まれた新しい用語が、このときにまとめて追加されていたことがわかります。
同じように、2021年10月6日の同研究所のニュースによると、「水災害リスク」、「流域治水プロジェクト」などの災害や防災に関する用語が、さらに「省エネルギー住宅」や「省エネルギー住宅基準適合住宅の義務化」など政府のエネルギー政策に関連する用語が追加されています。また、同年2月8日のニュースによると、「MaaS」や「5G通信」、「スマートロック」、「電子契約」などDXや不動産テックなどの用語が追加されています。
2020年には、7月に77人が死亡した九州豪雨が、9月には台風10号による豪雨被害が発生しましたが、新たに「防災・復興用語」カテゴリを設け、「水害ハザードマップ」、「水防法」など防災関連の用語も増やしたことが、同年10月5日のニュースで報じられています。
このように、国の政策や制度改正に加え、社会的な出来事や成長著しいIT関連など、時代の要請を受けた新しい用語が、適宜用語集に追加されている経緯がわかります。
編集部だけでなく、外部からの要望による追加用語も
こうした用語の追加はどうやって決めているのでしょう?
編集部に話を聞いてみました。
編集部によると、用語集を兼務している担当編集者と編集長による編集会議で、どの用語を追加するか決めているそうです。定期的に見直しもしていますが、サイト上で用語の追加を要望できる窓口を設けたり、用語集をOEMで提供している企業・団体から追加の要望があったりして、そうした外部からの要望も取り入れていると言います。
例えば、あまりに基本的なものなので用語集にはなかった、「屋根」を追加してほしいという要望があったそうです。「屋根」は知っているという人は多いでしょうが、屋根に関連する用語はかなり多いのです。この用語集の中から、「屋根」に関する用語を拾ってみると、次のような用語が次々に登場します。関連する用語を同時に追加することで、検索する人の利便性を上げているわけです。
■「屋根」を含む不動産用語
い:入母屋屋根
か:片流れ屋根、茅葺き屋根、瓦葺き屋根
き:切妻屋根、金属屋根
す:スレート屋根
と:トタン屋根
ほ:方形屋根
や:屋根、屋根不燃区域
よ:寄棟屋根
最近の住宅は「スレート屋根」が使われることが多いと思いますが、一般の人には用語だけではどういった屋根なのかわからない、ということがあるのでしょう。2022年4月27日の新着用語を見ると「瓦」や「鬼瓦」が追加されています。近年は、屋根をふく材料である瓦も馴染みが薄いということなのでしょう。
知っていますか? 「赤道」「青道」とは
では、今はどんな用語が検索されているのでしょうか? 多く検索されている用語を編集部に聞いてみると、「赤道」や「非線引き区域」などだというのです。筆者も「赤道」は初めて聞く用語です。どんなものなのか、用語の説明を見てみました。
「赤道」 読み: あかみち
公図上で地番が記載されていない土地(無籍地)の一つで、道路であった土地をいう。
古くから道路として利用された土地のうち、道路法の道路の敷地とされずにそのまま残った土地がこれに該当し、国有地である。公図に赤色で着色されていることから「あかみち」と呼ばれている。
現に、道路でなくその予定もない赤道の払い下げを受けるには、用途廃止等の所定の手続きが必要である。
説明を読んでもよくわからない、という人もいるかもしれません。なかには、「公図」の段階で躓いてしまう人もいるでしょう。公図とは、法務局に備え付けられている図面で、土地の位置や形状を確定するための法的な図面のことです。
「赤道」は今はそれほど使われていない言葉ですが、なぜ検索される件数が多いのでしょうか?
編集部によると、用語集はもともと不動産業界の人が利用するものであったため、今でも業界の人たちがよく検索していると言います。その後、一般のユーザー向けに用語を増やしていますが、「赤道」については業界関係者がよく検索するのだろうということです。ベテランを除けば「赤道」と言われてもよくわからないので、検索して調べるということでしょうか。
「赤道」のほかに、「青道」という用語もあるのだとか。不動産業界の歴史が詰まっているのが、用語集なのですね。
編集者もアンテナを立てて日頃からこまめにメモを
編集部では、一般の人にも見てほしいので、気になる用語があればできるだけ追加したいと考えています。そのために、一般の人がインターネットでキーワード検索している用語を探して追加したり、新聞やテレビなどを見ていて不動産関係の用語が出てくれば、その都度メモを取って追加を検討したりしているそうです。
最近の事例では、物流施設が増えているので、ニュースで見た「ランプウェイ」や「ドローン物流」などを追加しています。
ちなみに、用語を削除することはあまりしていないそうです。例えば、今は「ADSL」でインターネット接続している人はあまりいないと思いますが、間違いではない用語なので、そのまま残しています。
不動産用語は不動産業界の動向を映すのはもちろん、用語集を利用する人たちの変化も映しているようです。さて、あなたなら、どんな不動産用語を調べたいですか?
執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)