メンタルを強くするための方法とは。元フットサル選手のメンタルトレーナー・清水利生さんが解説します!
ビジネスシーンでもしばしば取り入れられている“マインドフルネス”に象徴されるように、日々の不安や心配事、プレッシャーなどに対してどのように向き合い、いかにしてメンタルを整えるかという視点が、近年注目を集めています。
常にハイパフォーマンスを求められ、極度なプレッシャーにさらされるアスリートにとっても、フィジカルやテクニックだけではなく、メンタルのトレーニングを取り入れることが昨今は定石となっています。
今回はアスリートが実践するメンタルトレーニングについて、「アンブロ」ブランドアンバサダーであり、元プロフットサル選手として自身もアスリートの経験を持つメンタルトレーナーの清水利生さんにインタビュー。
ビジネスシーンなど、スポーツシーン以外でも役立つ、メンタルトレーニングのヒントを聞きました。
株式会社43Lab代表取締役・メンタルトレーナー
清水利生
山梨県韮崎市出身、元プロフットサル選手。現役時代、自身が受けたメンタルサポートに多大な影響を受け、引退後はメンタルトレーナーの道へ。プロスポーツチームのサポートのほか、一般企業の研修講師を務めるなど実績を積んだ後「株式会社43Lab」を設立、代表取締役に。500人を超える日本のトップアスリート、1万人を超える子どもたちのサポートをはじめ、講演会や社会貢献活動、メディアでの情報発信など幅広く活躍中。
メンタルを強くする方法は?アスリートはどのように実践しているのか
スポーツの世界で活躍するアスリートにとって、フィジカルやテクニックのトレーニングに加えて重要な柱として取り入れられているのがメンタルトレーニング。
アスリートがメンタルトレーニングを実践する理由は大きく2つに分けられます。
パフォーマンスとモチベーションの関係性を整理する
一つは大事な場面でのパフォーマンスを上げるため。もう一つは、悩みを解決するための糸口が見つからないときに、トレーニング時のモチベーションを上げるための方法としてメンタルを整えます。
パフォーマンスを上げることとモチベーションを上げることは一見、同義のように思われがちですが、厳密には目的が異なります。
パフォーマンスを上げるというのは、最善のトレーニングを積んだ先にある、試合など本番の場面に臨むためのアプローチです。持ち得る力を100%出し切るためのサポートを指します。
一方、モチベーションを上げるということは、スムーズなレベルアップを目標とし、トレーニングで的確なペースを作るためにメンタルを管理することです。
“本番に強い人”と“本番に弱い人”の差はどう生まれるのか
みなさんの周りの人や自分自身を振り返ってみると、大きく2パターンの方がいるのではないでしょうか。
練習では全然できていないのに、試合で見たこともないような力を出せる人。逆に、練習では誰よりも完成度が高いのに、本番でなかなか実力を発揮できないタイプの人。
では、一般的に言われる“本番に強い人”と“本番に弱い人”の差はどこにあるのでしょうか。
もちろん根本的な性格やこれまでの経験、環境などにもよるので必ずしも画一的な枠に当てはめることはできませんが、日本人の性質的な部分も含めて、“本番に弱い人”は感情をうまく扱えていないことによりパフォーマンスが低下しているという傾向が強いと感じます。
ここで言う感情とは、プレッシャーや不安のことです。
では、本番に強くなるためにどのように感情を上手に扱い、コントロールすると良いのかを具体的に解説します。
メンタルが弱いと感じる人はプレッシャーや不安を受け入れることが第一歩
プレッシャーや不安に直面したとき、その緊張状態や興奮状態など高まったプレッシャー度数を無理に下げよう、鎮めようとしてしまいがちです。これは日本人に多い傾向とも言えるかもしれません。
しかしプレッシャー度数を下げなければと思うほど焦りが生じ、ストレスを生んでしまう。そもそも、本質的にはプレッシャーをなくすことはできません。
それでも無理にパフォーマンスを続ければ、重要なシーンで力を注ぐことが疎かになり、普段の練習ではできていることも失敗してしまいます。
プレッシャーや不安はコントロールしようとせずに、受け入れる
その結果、パフォーマンスを発揮できなかったことの要因を「緊張していたから」「プレッシャーに打ち負けたから」とすべてメンタル的な部分にひも付けて“感情=結果”と考えてしまうのです。
一方で本番で力を発揮できる人は、プレッシャーや不安を自分でコントロールしようとはしません。なぜなら、コントロールできないということを分かっているからです。
プレッシャーや不安を感じている自分の感情に気付き、あるがままの自分の感情を俯瞰で見ながら受け入れる。
そのうえで、本来考えるべきこと、本質的にするべきことを整理し、行動に集中できる人こそが、最善のパフォーマンスを導き出せるのです。
メンタルを鍛える秘訣は日々の成功体験。チャレンジの連続で「自己肯定感」を育む
プレッシャーや不安などの自分の感情を受け入れながら、大舞台で勝負強さを発揮するためには、どのようなトレーニング、意識が必要なのでしょうか。
その鍵を握るのが、成功体験の積み重ねです。
ビジネスシーンのプレッシャーは「未知を危惧する心細さ」「結果的にうまくいくかの不安」
ビジネスシーンを思い浮かべながら、大事なプレゼンテーションを控えたときを例に考えてみましょう。
アスリートが試合に臨むときと同様、上席の方々など大勢の人の前で話をする場面では、大半の方が緊張するはずです。
このときに感じるプレッシャーや不安は、大きく2種類に分けることができます。
一つは、プレゼンをすることが決まったときから本番を迎えるまでの間に起こる「何を話そう、自分にできるだろうか」という未知のことを危惧する心細さ。
これはそもそも準備不足から来る不安なので、入念に準備をすれば打ち消すことができるかもしれません。
もう一つは「結果的にうまくいくかどうか」という、本番を迎えるときに感じる結果に対する憂慮。結果というのは本番が終わったときにしか結論が出ません。
それにも関わらず、結果が出せるかどうかというどうにもできない不安を取り除こうと自分の気持ちと闘い、本質からブレた部分で努力をしながら本番に臨んでしまう。これはまったく無意味な努力です。
そこで、普段からできるメンタルトレーニングとしては、プレッシャー下での小さな成功体験を自ら積み重ねるように意識し、実践をすることです。
小さな意識改革を繰り返してプレッシャーに対する免疫を得る
お風呂に入るときをイメージしてみてください。普段40°Cの湯温に設定して入浴している人が突然45°Cのお湯に入ると、温度のギャップに驚き、入浴ができなくなってしまうかもしれません。
しかし、40°Cのお湯に浸りながら1°Cずつ追い焚きをして45°Cまで徐々に温度を上げていけば、自然に体が慣れ、熱さに対する拒絶感を抑えられるということが考えられます。
この“慣れる”という感覚はプレッシャーも同じです。
本番当日、急激にプレッシャー度数が上がれば、平常時と異なる感情を悪いものとして拒否反応が生じ、排除しようとしてしまう。
しかし日常から自らにプレッシャーを課し、心に負荷のかかる状態を受け入れる訓練を重ねることで、プレッシャーに対する免疫が獲得できるのです。
例えば、小規模の会議や打ち合わせの席で、普段は聞き役ばかりで発言を避けていた人は、自ら進んで提案や発言をするよう心掛ける。
1日1回、人前で意見を述べることを意識的に続けることでプレッシャーを乗り越える成功体験が重なり、「この程度のプレッシャーを感じていても、自分なら大丈夫」という肯定感がついてくる。
少しずつハードルを上げながら、いわばプレッシャーの自主トレのような訓練を繰り返すことで、いつしかプレッシャーを強いられた状態に得意意識すら生まれてくるようになります。
チャレンジの連続で「自己肯定感」を養う
トップアスリートのなかには、ビッグマウスと言われるようなタイプの選手に象徴されるように、先行して強気の発言をすることにより自分自身にプレッシャーをかける人もいます。
その言葉を実行するために自分を引き上げていくという、有言実行スタイルの人です。
夢を達成するために自らを奮い立たせ、次なるステージへと続く一歩を踏み出すために、自分へプレッシャーを課して乗り越えていく。
そのチャレンジの連続は、トップアスリートにとっての宿命であり、プレッシャーに対する免疫を育てるものだと感じています。
近年、子どもの教育現場などでもキーワードになっている「自己肯定感」も、この考え方に通じます。自己肯定感は自然に生まれるものではなく、意識的にハードルを設けて乗り越えるという成功体験の蓄積が必要でしょう。
もともとの性格や環境にとらわれず、プレッシャーや不安と向き合いながら上手に受け入れるという意識を身に付けることで、大事なシーンで活躍できる強いメンタルを育むことができるのです。
メンタルのコントロールは“インサイドルール”を決めて行動を評価
大事な場面でメンタルを整え、実力を発揮するために重要なことは、感情評価をしないことです。感情に“良い悪い”を付けず、行動を評価することを意識してみましょう。
また、スキルのレベルアップとメンタルの強化を分けて考えることも重要です。
ビジネスパーソンであれば、仕事に必要な知識を身に付けてスキルを磨き、自分自身をレベルアップしていくこと。
それに並行して、自信を持ち自己肯定感を高めていくためのメンタルコントロールを並行して実践するようにしてください。
その際にポイントとなるのは、自分自身の“インサイドルール”(自分との約束)を定めて、常に意識することです。私であれば、「早起きをする」「自分が率先して汚れ仕事をする」「目を見て挨拶をする」などです。
どういう自分になりたいのか、自分が望む理想像から逆算してスキルとメンタルに関するそれぞれの目標を設定し、日々挑んでいく。
その意識改革こそが、自分がイメージする人物像に近付くための道標になるはずです。
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