※この記事は2021年09月24日にBLOGOSで公開されたものです

メディアは連日、自民党総裁選の報道ばかりで露出が少ない野党はじれったいだろうね。総裁選なんてのはお決まりの風習みたいなもんだからな。自民党ばかり露出して不公平だなんて言っても、そうそうすぐには変えられないよ。

野党が本気で総裁選に対抗したかったら、相手の力を利用すればいいんじゃないの? 河野太郎さん、岸田文雄さん、高市早苗さん、野田聖子さん、毎日何かしら発言してそれが報道されるわけだよね。だったら野党は、それを受けて夜10時くらいから毎日30分、野党の口達者が4~5人集まって総裁選のことを喋るYouTubeの生配信でもしたらいいんじゃないの?

俺も今年春から「マムちゃんねる」を始めてるけど、おかげさまでたくさんの人が見てくれてる。色んなやり方があるんだなって実感してるよ。

野党の面々がそろって、自民党総裁候補に対してここは変だとか、こんな公約できるわけないとか、ここは共感するだとか、ああだこうだ言いながら、いったい誰が総裁になるか連日予想したらいいんじゃないの? 野党が自民党総裁選を毎日予想するって見てみたいよね。それで野党にも目が向くし、自民と野党の考えもわかって一石二鳥だと思うよ。

自滅で旗色が変わった自民一強

自民党が菅さんをおろして総裁選をやってるのは政権継続に必死だからだよな。第二次安倍政権になってから安倍さんずっと強かったけど、この1~2年、その空気が変わってきた。各地での選挙結果は野党の旗色がいい。

8月の横浜市長選挙なんか立民推薦の山中さんが50万票で、菅さんが支持した小此木さんが32万票。接戦とか言われてたけど大差だった。この結果が菅さんに引導を渡す結果になった。民意は今、野党に傾いてる。

俺は今、野党はチャンスだと思うよ。だけどこれは野党自身が何らかの得点をあげて評価されたというより、与党がオウンゴール連発で自滅して、与党に逆風が吹いてる感じだよな。

野球で言うなら、今の与党はフォアボール連発中で野党はノーアウト満塁のチャンス。きちんと攻めれば点が取れる、そういう状態。だからこそ、ここできちんと自分たちでバットを振って一発打てれば山を動かせるかもしれない。

選挙に導入してほしいアイデア「否定票」

編集部)それにしても野党の支持率は低迷したままです。9月の読売新聞の緊急世論調査で出た数字ですが、自民党36%、公明党3%、立憲民主党7%、共産党3%、日本維新の会2%などとなっています。

各政党の支持率ってことになると、そんなもんだよ。野党第一党の立憲民主党も相変わらずパッとしない。だけど、横浜市長選の結果を見ると、政党支持の戦いというよりも政党不支持の戦いになっていた。与党自滅は深刻で、横浜市民の心は与党から離れていった。

それって野党に投票したいっていうより、与党にはもう投票したくないって気持ちが高まってるんだと思う。

そこで言いたいのが、これは前々から言ってるアイデアなんだけど、選挙に「否定票」っていう制度があったらいいなって。支持する人を選んで投票するのが選挙の基本だけど、誰にも投票したくないってこともあるよね。そうすると「誰かひとりを選べって言われてもみんなロクなもんじゃないから投票なんか行かないよ」って、選挙に行かず票が無駄になる。

そこで視点を変えて「あいつだけは絶対にイヤだ」っていう人を選べて、それがマイナス一票としてカウントされることになったら、だったら投票しに行ってみるかって人が出てくると思うんだ。いい人は選べないけど、イヤなヤツなら選べるってあるだろ? それが「否定票」だ。一票を無効にせず少しでも有効に掘り起こすアイデアだ。

これを具体的に説明してみると、例えば、有権者が1万人の選挙区があって候補者はAさんとBさんふたりだけだとする。そこで通常の投票が6000票あってAさんに3000票、Bさんに3000票入ったとする。だけどこのままだと同数で決着がつかない・・・。

残り4000票はこれまで通りだったら無関心で選挙に行かず、すべて無効票だ。だけど「否定票」が導入されて、あいつだけは絶対イヤだという選択が可能になり、無関心が関心に変わって投じられた「否定票」がAさんに1000票、Bさんに500票入ったとする。そうすると結果は・・・

・Aさん 賛成3000票―否定1000票=合計2000票
・Bさん 賛成3000票―否定 500票=合計2500票

Bさんの当選になるってことだ。要は、貴重な一票をできるだけ無効にせず、とにかく投票行動につなげて活かす。それが「否定票」の狙いだよ。

まあ、もし横浜市長選にこの「否定票」が導入されてたら、山中さんと小此木さん、さらに大差がついてたかもしれないね(苦笑)。

チーム野党のカギは共産党アレルギー

野党にはチャンスが来てる。だけど今の野党って人材が小粒だよな。本気で政権を取りに行く迫力をもっと感じさせてくれる人材が出てくればと思う。かつて社会党の顔だった浅沼稲次郎さんみたいに、演説の声が大きくて迫力があって、命を賭して日本の社会を正すんだってことを訴えるような気概を持った人材がひとりでもふたりでも頭角を現してほしいよ。

そうなればこのチャンスはもっと広がるんだけどな・・・。まあ、野党は今できる「やれること」をどれだけやれるかだな。

編集部)野党は先日、次期衆院選に向けて、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4党が政策協定を締結。各党で小選挙区での候補者一本化に向けて調整していく方針です。

今の小選挙区制では野党同士が小競り合いしてたら絶対に自公に勝てない。野党候補は自公と一騎打ちに持ち込まなきゃ共倒れになる。候補者の一本化は当然の道だよ。与党を支持するかしないか、支持しない国民の受け皿がチーム野党になるしかないよな。

なんだかさ、チーム野党で固まらなきゃいけないってのに、いまだに「共産党と組むのか!」っていう声も方々にあるんだろ? 共産党アレルギーっていうのかな。でもさ、ちょっと振り返ってみると、桜を見る会の疑惑問題とか学術会議の任命拒否の問題とか、ここ最近で見過ごせない問題をスクープしたのって「しんぶん赤旗」だろ。それを元に共産党が国会で追及したからこれらの問題が国民全体の共通の問題になったんだよね。つまりこの数年、野党としてホームランを打ってるのって共産党なんだよ。いいスイングしてるんだよ(笑)。

別に共産党の肩を持つわけじゃないけどさ、調子のいい強打者をチームに入れるのは当然だよ。みんな、侍ジャパンの代表選手が選ばれると、今調子がいいか悪いかってシビアに見るだろ。「このピッチャーはルーキーだけど調子がいいから選ばれたな、良し」って。過去の実績とか名前で選ばれるようなことがあると目くじら立てるだろ? 名前で集まったチームで勝とうなんて、そうそう世の中甘くないよ。

安倍菅政権を選んだ国民 責任持って選挙へ

次の衆院選がどうなるかって? 与党だ野党だって話はもちろんあるけど、まずは国民が自分でよく考えて本気で選ぶってことだろうな。企業の方針だからとか、誰それのお付き合いだとか、そういう組織票に組み込まれる前に、自問自答して自分で選ぶことだよ。

長期にわたった安倍菅政権を作った自民公明に安定の過半数を与えたのは日本国民なんだから。国民は製造物責任者なんだからね。その責任と覚悟を持って選挙に臨むことだ。

俺さ、次の衆院選は投票率がかなり上がる気がするな。ちなみにこないだの横浜市長選って投票率が高かったんだよね?

編集部)はい、49.05%で、前回の37.21%を11.84ポイント上回りました。かなり上がってます。

横浜はカジノ問題で市民の関心が高かったって見方がもちろんあるけど、選挙が行われたのは8月下旬だ。コロナの第5波で毎日のように感染者数が激増していて、外出するのもためらうような時期だった。だけど市民は前回以上に投票に出かけたんだ。

投票へ行こうっていう動機はカジノ問題だけでなく、コロナへの思いがかなり大きかったはずだ。コロナに脅かされている「命」の行方がかかった選挙、そういう思いがあったんだな。

次の衆院選は全国でそうなると思うよ。国民の多くがコロナで不安や危機感に追い詰められて、それが今も終わらず続いてる。いざとなっても入院できない、自宅療養でしのいでくれ、どうしてそんな状態になったんだと。

「自助・公助・共助」という言葉あるけど「公助」はいったいどこへ行ってしまったんだ? 夏には不幸にも自宅療養で亡くなられた方も多く出てしまった。明日は我が身かもしれない。いったいどうしたらいいのかと。

自分の命がかかっているとなったら政治に無関心じゃいられない。その思いが投票行動につながる。衆院選は国民それぞれの「命」がかかった選挙になる。コロナでステイホームだから投票率が減るっていうのは無いな。コロナで命がかかっているから投票に出かける。きっと投票率はハネ上がるよ。

コロナの第5波も沈静化してきてるから11月はその凪が続きそうだ。それも投票しやすさにつながる。かつてないような高い投票率の選挙で与党と野党の勝負を見てみたいよ。そう思わない?

(取材構成:松田健次)