【演説全文】野田聖子氏「自民党は反省と検証が必要」 自民党総裁選・所見発表演説会 - BLOGOS編集部
※この記事は2021年09月17日にBLOGOSで公開されたものです
事実上の首相選びとなる自民党総裁選が17日に告示され、選挙戦が本格化した。立候補したのは河野太郎行政改革担当大臣(58)、岸田文雄前政調会長(64)、高市早苗前総務大臣(60)、野田聖子幹事長代行(61)の4氏。
同日党本部で行われた各候補の所見発表演説会で、野田氏は「党改革を叫ぶ前に自民党の力でもっと世の中を良くしてほしいと願う国民感覚とズレが生じている」と指摘し、「まずは反省と検証をし、それをやってから初めて新しいことに着手する意味がある」と述べた。
総裁選は国会議員1人1票の「国会議員票」383票と、全国の党員・党友らによる投票で配分される「党員票」383票の、合わせて766票で争われる。29日に国会議員による投票が行われたのち即日開票され、新総裁が決定する。
演説全文
他の候補者の政策には足りていない視点がある
私、野田聖子は、自民党総裁選に立候補いたしました。そこでまずはこの場をお借りして私を支えてくれた仲間たち、そして志を同じくする人々や、政策に賛同してくださった方たちに感謝を申し上げたいと思います。
かねてから総裁選に挑戦したいということを公言してきましたが、これまでなかなか出馬することができませんでした。しかし、4度目の今回は、皆さんのおかげでスタートラインに立つことができました。本当にありがとうございます。
まず、私が今回どうしても出馬をしようと考えたある大きな理由があります。それは自民党の多様性を示さなくてはいけないということです。残念ながらこれまでの候補者の方たちの政策を見ていると、やや足りていないなと感じる視点があります。
例えば人口減少。のちにご説明いたしますけれども、日本の経済だけではなく安全保障にもかかわる極めて重大なテーマです。そして日本の未来を担う子ども、女性、さらには高齢者、障がい者という社会的弱者、介護政策や貧困の格差などがあげられます。
つまり、小さき者や弱き者をはじめ人の暮らしが見えません。主役にならない人々へ向けた政策が十分ではないといってもいいでしょう。ならば自民党としては、誰かがこれをやらなくてはなりません。自民党の強さとは多様性だからです。
自民党には反省と検証が必要
自民党がこれまで多くの国民に支持されてきたのは、様々な政治信条、様々な政策を持つ多様な人材が真正面から意見をぶつけ合わせ、時には激しく対立するほど真剣に論争してきたからです。異なる価値観を受け入れるという日本の伝統的な寛容さ、多様性を体現する保守政党。それが自民党です。そこで早速、自民党の多様性を示すような、問題提起をさせていただきます。
これまでの候補者の方たちの主張の中で出ていない「我が身を振り返る」ということを議員、党員のみなさんに投げかけたいと思います。つまり、反省と検証が必要ではないかということです。
今回、自民党を改革するということが大きく叫ばれています。もちろん何か問題があるのならば、そこは変えていかなければいけないのは当然ですが、国民からは「党内で国民の支持がないのはあいつのせいだ」と誰かに責任を押し付けあっているようにも見えます。
また、選挙の顔を選ぶ権力闘争という厳しい評価も聞こえてきています。党改革を叫ぶ前に自民党の力でもっと世の中を良くして欲しいと願う、国民感覚とズレが生じているのです。
だからこそ私はまずは反省と検証が必要だと思います。誰かのせいにするのではなく、まずは自分たちの至らない点があるのではないかと検証する、与党としてしっかりと国民の期待に応えていたのか、そしていま、信頼が低下してしまっているのはなぜなのか。ということを議員ひとりひとりがしっかりと向き合う。それをやってから初めて新しいことに手をつけ、改革に着手する意味があるのではないでしょうか。
では具体的にどうやって我が身を振り返るのかというと、例えば、国民に約束しておいて実現できていない政策をしっかりと洗い出し、なぜできていないのかを考えます。
例えば、議員定数の大幅削減です。これは実現できていません。私はより国民の方を向いた政治にしていくために、是非ともこれを進めるべきだと考えています。人口減少によって国民も減っている中で、議員の数も調整していくのは当然と言えば当然のことです。
しかし今日に至るまで、議員定数削減は実現できていません。なぜなのか、どこに問題があるのか、ということも候補者のみなさんと一緒にしっかり考えて、党員のみなさん、ひいては国民のみなさんに分かりやすく、誰にも理解できるような言葉で説明していかなくてはいけないのではありませんか。
そんな、誰もがわかる政治というものを私はこの総裁選を通じて示していきたい。先ほど申し上げた、女性、子ども、高齢者、障がい者など弱い立場の人の視点も含めなくてはいけないというのも誰もがわかる政治が目指しているからです。
今、候補者の方が訴えている政策を見ると、党改革、安全保障、緊急事態条項など幅広いテーマが出てきています。もちろん、全て非常に重要な視点ではありますが一方、国民の生活、暮らし、そして命や健康に直結するテーマがちょっと少ないのではないかと心配しているのです。
ですから私は誰もがわかる政治ということを意識して、政策論争に多様性を持たせたいと、そしてそれが自民党をさらに強くすることなんだと信じています。
最優先すべきはコロナ対策 3つの集中投資
さて、このような理由から出馬させていただきました。次に私が総裁になったらどのような政策に力を入れるのか、ということを説明していきましょう。
まず最優先すべきはコロナ対策であることはいうまでもありません。今後のコロナ対策は以下の3点に集中投資をしていきます。1つめ、スピード重視、早期発見、早期治療の徹底、2つ目、フェアな支援、働く人は一律給付、現実的公平な経済支援、3つ目、見える化。安心安全の前の不安を国民から取り除く。
まず、早期発見、早期治療はこれからのコロナ対策で最も重要なところになってきています。コロナは早期に発見し、早期に適切な治療ができれば重症化を防げることがわかっています。新規感染者数を抑えることも重要ですが、経済活動をしっかり進めていくには、コロナをゼロにするのではなく、コロナを普通のインフルエンザのようにしていかなくてはなりません。そのためには、早期発見、早期治療の徹底が必要なのです。
具体的な方法としては、危機の間、臨時暫定の病床、病院、私はサブホスピタルと呼んでいますが、サブホスピタルを作ります。自宅療養では早期発見、早期治療はできませんので、軽症患者をスピーディに診察して重症化を防ぎます。人員は地域医療にしっかり協力してもらうことを考えています。
もちろん建設して体制をつくるまでにはある程度の時間がかかってしまうので、それまではやはり医療体制を守るためある程度の自粛も必要になります。そこで働く人への一律給付、現実的公平な経済支援です。サブホスピタルの体制ができるまでの間、経済活動を控えていただくことがあったら、会社員はもちろん、パート、アルバイトなど全て働く人に、現金の一律給付を行います。
一方で飲食店などの協力金はこれまでのような一律から、納税や店舗の規模等を考慮した現実的公平なものに変えていきます。個人には格差なく広く、そして事業者の方には経営規模に見合ったものというフェアな経済支援を、実現いたします。
このような感染防止への協力を国民のみなさんにお願いするうえでも、大切になってくるのが見える化です。政府が進めているコロナ対策はもちろん、地域の病床の状況、ワクチン接種の状況、治療薬の開発状況など、これまで以上に国民にわかりやすく丁寧に情報を伝えていくような発信をしていきます。
国民のみなさんに感染防止に協力していただくには、安心安全ということが欠かせませんが、その安心安全のためにまずは国民の不安を取り除かなければなりません。そのためにはしっかりと正確な情報をお届けする見える化が1番であります。
ワクチン接種が進んだ世界の国々でも感染爆発が起きているように、世界でもまだ、暗中模索、試行錯誤が続けられています。このような先行き不透明な状況がしばらく続く中で、政府が国民の不安を解消していくことが、何よりも大切なことであるのです。このようなコロナ対策を進めることは、経済対策でもあります。
世界では長引くコロナ禍によって、貯蓄が異常に増えていくという、強制預金という現象が起きています。アメリカなどはコロナ後の経済再開のブースターの役割を果たしています。これは日本にも当てはまることであります。このような出口戦略をしっかりと見据えたコロナ対策を強いリーダーシップを持って進めていきたいと思います。
人口減少は国家の危機
コロナ対策を進めていくと同時に、ある意味でコロナ問題以上に重要な問題に対しても政府をあげて取り組んでいきます。それは人口減少です。私が総裁になったら、まずは人口減少というものを、経済問題、安全保障の問題として扱い、国民にもそのような理解を強く持っていただくような啓発を進め、人口減少を止めます。
これまで人口減少、つまり少子化対策は女性の出産、子育て支援や男性の育児参加など、厚生労働行政が担ってまいりました。しかしその認識をあらため、国家の危機だという位置付けを明確にいたします。それが決して大袈裟なことではないということは、データを見れば一目瞭然です。
例えば、来年の出生数は約70万人になるということが言われているところです。戦後あの厳しい焼け野原になった戦後の次の年の出生数は270万人でございました。つまり、そこからこれから生まれる子どもは4分の1になってしまっているわけであります。このことを実際寿命などでお亡くなりになる方たちと差し引きますと、毎年鳥取県と同じ人口が日本から消えていっていることになります。
国家というものを構成する3要素は領土、国民、主権であります。領土と主権が侵害される危機に関しては、これまで自民党は非常に積極的に取り組んできたと思っています。私は総裁になっても、防災、減災、国土強靭化、しっかり加速させていきます。日本の主権を脅かすようなものに対しては毅然とした態度で立ち向かってまいります。
しかし、3要素のひとつである国民はどうでしょうか。侵害をされているどころか、一気に底抜けしてしまうほど、急速に減少が進んでいます。これを国家の危機と呼ばずして、みなさんはどうお考えになっておられるのでしょうか。この危機に対して深刻になるのではなく、ぜひ真剣に取り組んでまいりたいと思います。
まず消費者と労働者が減少いたしますので、経済には大打撃です。生産年齢人口は2050年には5000万人を割り込むと言われています。当然、GDPにも財政にも大きなリスクです。
また現役世代が減るわけですから、自衛隊や海上保安庁、さらには警察、消防などの安全保障や治安に関わる組織でも人手不足が問題になっていくでしょう。安全保障や防災という点でも、大変なリスクが高まります。このような国家の危機に対応していくためにどうするのか。というと、子ども真ん中を成長戦略に位置付けて推進をしてまいります。
子どもの幸福度が高い、貧困度が低い国は出生率が改善しているというデータがあります。実は子どもというのは国の持続性を担保する要素です。そこで子どもの支援の司令塔として、子ども庁を設立し、教育・保育、さらには貧困問題の解消など、子どもへの投資を積極的におこなってまいります。
このような形で、人口減少問題への積極的な取り組みや子ども支援などをするということは、日本の持続可能性を世界に示すということなので、日本への投資意欲も高まってくるはずです。
いまの日本は海外から、「世界一少子化・高齢化が進行した国」というイメージが強い。それを人口減少問題を子どもへの大胆な投資で乗り越えた国という将来性のある国へ変えていくんです。
野田内閣の女性閣僚は全体の半分に
そして子ども支援とともに進めていくのは、多様性の象徴である、私たち女性の社会進出です。人口減少問題のみならず、これからの日本の成長のカギは、これまで政策の主役になることが少なかった、子どもや女性の中にあるのです。
さまざまな分野で女性の社会進出は進んでいますが、国際社会に比べてはまだまだといえます。そこで私は、日本初の女性の総理大臣になったら、この社会のパラダイムシフトを一気に加速させていきます。まず政治から変えていくということで、野田内閣の女性閣僚は全体の半分になるように目指していきます。実はもうすでに意中の人たちのリストは私の心の中にあります。片想いではありますが。
障がい者、高齢者、介護、貧困などにもしっかりと目を向けたプッシュ型の対策を進めていきます。持続可能な社会を目指すため、欠かせない、小さき者、弱き者を含めた全ての人が生きやすい社会、生きやすい日本を作っていこうじゃありませんか。
ベースロード電源としての原子力発電の重要性は高い
また、地方創生の柱は全国に張り巡らされた郵便局、そしてJAのネットワークをフル活用いたします。これらの機能強化を目指していくとともに、国土強靭化をさらに加速させ、自然災害にも強く、しなやかな日本をみなさんと作ってまいります。
エネルギー政策は、2030年の原子力の構成比20~22%という目標を支持していきます。今の日本の現状をみますと、ベースロード電源としての原子力発電の重要性は高く、急にゼロにするというのは現実的ではありません。
私の息子はこの10年365日、人工呼吸器と酸素の機械で生かされています。息子のように医療機器が生命線となっている障がい者、高齢者はたくさんいます。電力の安定供給ができないとなると、私たちはその人たちを守ることができないのです。
そこに加えて行政に対する信頼回復を進めます。近年公文書の廃棄、隠蔽、さらには改ざんという問題が相次いで起こっております。公文書というのは、民主主義の根幹であります。その国に政治や行政の健全性を示すものであります。これが勝手に廃棄されたり、どこかに消えてしまうというのは、民主主義にとって、日本にとって非常に由々しき問題であると考えています。
そこで私は総裁になったら自民党に公文書の取り扱いに関する不透明さを解明するチームを作ります。そして2度とこのような問題が起こらないような、そして必要に応じて必要な調査をし、しっかりとした制度をみなさんと作ることをお約束します。
一方、外交、安全保障分野に関しては、ICT技術の活用、外交力の強化によって、サイバーテロなど国際社会の危機に対応していきます。アジア諸国などの対話を重視してきた日本の安全保障は優れた外交だと考えております。日本は自らの力だけで進んでいるわけではなく、アメリカをはじめさまざまな国と繋がっています。これらのパートナーシップをさらに引き締めてまいりたい。
世界に目を向けると、タリバンに制圧されたアフガニスタンの混乱からも、軍事力では決して平和をもたらすことができないという現実が浮かび上がっています。かつて世界の警察と言われたアメリカもその軍事的影響力を人道的な配慮などから減じていっています。このような新しい国際秩序、長く非戦、平和主義を掲げている日本の発展モデルで世界に大いに貢献できるよう、積極的に取り組んでいきたいと思います。
以上、私が自民党総裁選に臨むにあって、力を入れたい政策の一部を発表させていただきました。私の候補者としての強み、差別化。他の候補者の皆さんと比べて、地方議会で働きました。
そして、母親でもあります。障がいを持つ家族がいて、さらに立法府の人間としてここにいる仲間たちと、発達障害者支援法や、政治分野における男女共同参画法など多様な取り組みを進めてきたところです。そんな多様性という視点を武器に、これからの総裁選をしっかりと戦い抜いていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。