※この記事は2021年09月14日にBLOGOSで公開されたものです

自民党総裁選(17日告示、29日投開票)への出馬を表明している岸田文雄前政調会長は13日、3度目の政策発表会見を国会内で行い、外交・安全保障政策について説明した。

岸田氏は、日本の強みである他国からの信頼を基礎に、「民主主義を守る覚悟」、「平和と安定を守り抜く覚悟」、「地球規模課題において世界を主導し、人類に貢献する覚悟」という3つの覚悟で外交を進めると説明。

また中国当局が新疆ウイグル自治区で人権弾圧を行っているとされる疑惑では、人権問題担当の首相補佐官を設置し、積極的に問題に向き合う考えを示した。人権問題について省庁横断的に調整する役割を担うポストで、日本の姿勢を世界に示す点でも設置する意義があるとしている。

総裁選をめぐっては、岸田氏は先月26日に出馬表明会見を開き「新型コロナ対策」、「新しい資本主義の構築」、「外交・安全保障」の3つの政策を訴えると語った。その後、今月2日に新型コロナ関連、8日に経済関連の政策を発表したのに続き、今回で3度目の政策発表会見となった。

これまで3回にわたる政策発表会見の内容全文は以下の通り。

【コロナ対策関連】2021年9月2日

みなさん、おはようございます。衆議院議員の岸田文雄です。

先般8月26日、出馬表明をさせていただきましたが、その際に3つの政策を中心に、政策についてお話をさせていただきました。その中で今日は特にコロナ対策について深掘りをし、お話をさせていただきたいと思います。お忙しい中こうした記者発表の場を設けていただき、協力をいただいておりますことに心から厚く御礼を申し上げます。

コロナ対策ということで申し上げさせていただくわけですが、まずもってコロナ対策について日々ご努力をいただいております医療従事者のみなさま方、政府の方針にご協力いただいている多くのみなさま方に心から感謝を申し上げたいと思います。

しかし残念ながら国民のみなさんの中には、コロナ対策、説明が十分ではないのではないか。さらにはコロナ対策の現状把握、現状認識、楽観的すぎやしないか、こういった声が多数あります。私はこうした声を踏まえて、コロナとの戦いに当たり2つの原則に基づいて対応していきたいと思っています。

「ゼロコロナ」ではなく「ウィズコロナ」

お手元に資料がおありの方は、資料も見ていただきながら話を聞いていただければと思いますが、2つの原則。1つは国民の協力を得る、納得感ある説明です。私は政府の方針の内容、必要性、さらには決定に至るまでのプロセス、こうしたものを自ら丁寧に説明をしてまいります。そしてもう1つの原則は、「多分よくなるだろう」ではなくして、危機対応、危機に対する対応として、特に、常に最悪の事態を想定して、危機管理を行うということです。

そうしたこの姿勢のもとに、先手、先手で徹底した対応を続けていきます。また、このゴール、目標を明確にして対応してまいります。

コロナウイルス、非常に変異のスピードが速いことが指摘をされています。残念ながらこうした変異のスピードを考えますと、ゼロにすることはなかなか難しい。よって当面は季節インフルエンザと同様、従来の医療体制で対応可能なものとして、通常に近い社会経済活動を1日も早く取り戻すこと、これを目標としていきたいと思います。

要は「ゼロコロナ」ではなくして、「ウィズコロナ」。コロナとの共存です。

そのためにワクチン接種の加速、そして治療薬、特に経口治療薬の開発と普及。これが必須であると思います。ワクチン接種については11月中に希望者全員の接種を完了する、これを目指します。経口薬については年内に開発、普及することを目指して、しっかり全面的に支援をしてまいります。

しかしながらそれまでの間、11月、12月まで時間があります。それまでの間はとりわけ感染力の強いデルタ株を前にして徹底した人流抑制、そしてこの人流抑制を可能にする、人流抑制に協力していただけるための経済対策、そして病床、医療人材の確保、これらに全力で取り組む必要があると考えています。

コロナ対策の全体像

これがコロナ対策の全体像ということになるわけですが、ここにその全体像についてパネルを用意いたしました。全体像を表現したのがこのパネルであります。

このパネルはお手元にもお配りしているかと思いますが、このパネルの下の部分、これが現状です。真ん中から上の部分、これが当面の目標というものを掲げています。このパネルにおいては、水の流れを感染者の流れと考えていただき、下に落ちる水が病床ですとか、大型宿泊施設に入りきれば当面目標を達したということになるわけですが。

現状の部分を見てみますと、水の勢いが強くて病床のプールからも、軽症者用のプールからも水があふれ出てしまっている。こういった状況にあります。つまり現状においては、医療難民が発生し、感染したら入院できないかもしれない。こうした不安の声が広がっている。これが実情です。

ワクチン接種を加速させ、治療薬、経口治療薬の普及をしっかりと進めていき、このことによって重症者を防ぎ、感染者の数を減らすことを目指していくわけですが、この図でいきますと、1番の蛇口を絞っていくということです。ワクチン、治療薬。この蛇口をどんどんと絞っていく。こういったことを目指します。

しかし先ほど申し上げた通り、蛇口を閉めるために11月、12月、まだ時間がかかってしまう。この蛇口が閉まるまでの間は緊急に病床を確保する、軽症者用の大型宿泊施設を借り上げて、受けられる量を増やしていく。こうした努力を続けていかなければなりません。

また、ステイホーム可能な経済対策、人流抑制にご協力いただくために、経済対策、納得感のある説明を行うことによって、人流を抑制する。この図でいきますと、蛇口2をしっかり閉めていかなければいけない。これが全体像であると思っています。

そしてこうして水が漏れない体制を緊急的に作りながら、ワクチン接種が11月中に希望者全員に完了し、そして年内に経口治療薬の普及が進むならば、すなわち1の蛇口が閉まっていったならば、逆に人流抑制の2の蛇口は緩めることができるということになります。

こうした全体像をしっかり我々は認識しながら、意識しながらこの様々な対策を進めていかなければならないと考えます。

ただしこのコロナウイルスは変異を繰り返していきます。ですから常に最悪の事態を想定した臨機応変な対応が求められます。このためこうした体制ができたとしても、社会経済活動を再開していくためにはできるだけ通常の社会経済活動を取り戻すためには、電子的なワクチンパスポート、十分な検査体制、こうしたものが必要になります。

ぜひこうした体制を作り上げ、そうしてコロナとの共存を果たすためにワクチンパスポート、十分な検査体制、こうしたものも整備していく。こうしたコロナ対策の全体像について、みなで意識をしながらこれが当面の目標であるというふうにしっかりと意識しながらそれぞれの努力を続けていく。こうしたことが大事であると考えます。

コロナ対策の4本柱

そしてこうした全体像に基づいて、いま特に求められるコロナ対策について岸田4本柱として発表をさせていただきたいと思います。こちらのパネルです。

この4つの柱、まず1つ目は医療難民ゼロです。医療難民ゼロという柱、1番大切なことは医療提供体制を拡充するということです。国、地方自治体に与えられた権限をフル活用して、病床、医療人材の確保を徹底いたします。具体的には国の総合調整権限のもと、国が主導して野戦病院等の臨時医療施設の開設、大規模宿泊施設の借り上げ、こうしたことを実施いたします。

また発熱患者や自宅療養者への対応について、医師会をはじめとする地域の開業医の先生方に、より積極的に往診にご協力をいただきます。そのことで必要な医療へのアクセスできないような状況を改善してまいります。

そして2本目の柱。ステイホーム可能な経済対策です。国民のみなさんに安心感と納得感をもって人流抑制にご協力いただけるように、政府方針により不利益を受けられる方々、コロナの影響によって困っておられる方々、こうした方々に対して、十分な経済対策、数十兆円規模で速やかに実施をいたします。

まず、来年春までを見通せる家賃支援給付金ですとか、持続化給付金の再支給など、地域、業種を限定しない、固定費等の事業継続支援を事業規模に応じて実施いたします。

また非正規、女性、子育て世代、また学生、こうしたコロナでお困りのみなさま方に直接給付金、これを支給いたします。学校休校に伴い休業せざるを得ない親御さん向けに、臨時的な休業手当、これも創設しなければなりません。

そして3本目の柱。通常に近い社会経済活動を再開する、この再開に向けた電子的ワクチン接種証明の活用、そして検査の無料化・拡充です。

先ほど申し上げたように通常医療提供体制で対応可能となったあともコロナウイルスは変異を繰り返すために、先手、先手で再度の感染拡大を防ぐ仕組みが必要です。そのため電子的ワクチン接種証明を積極的に活用するとともに、予約不要の無料PCR検査所の拡大、さらには在宅検査手段の普及、こうしたものを図ってまいります。

そして最後の柱。これは感染症有事対応の抜本的強化です。コロナは感染症による公衆衛生上の問題が、経済問題、さらには外交問題にも発展する有事対応であること。今回の事態はそれを示しました。わが国における公衆衛生分野の危機管理能力を抜本的に強化するために今後を見据えた法改正と、そして新たな危機対応組織の立ち上げが必要です。国、地方が人流抑制、そして医療資源確保についてより強い権限をもつことができるための法改正を行います。また、公衆衛生上の危機発生時に、国、地方を通じた強い指揮権限を有する「健康危機管理庁」を創設いたします。

合わせて現在国立国際医療研究センターと、国立感染症研究所に分散している臨床医療、疫学調査、そして基礎研究、この3機能を統合する「健康危機管理機構」を創設いたします。そして健康危機管理庁のもと感染症危機管理に関する国家戦略を確立してまいります。

岸田文雄への意見BOXを設置

以上このコロナ対策の全体像と、岸田4本柱について説明させていただきました。詳しくはお手元に資料をお配りしている方はそれを見ていただければと思っています。

こうした政策を発信させていただき、政策に対するご意見を伺うためにも、出馬表明のときにも申し上げさせていただきましたが、岸田文雄への意見BOXを開設いたしました。QRコードを読み込んだうえでフォームに書き込んでいただくか、あるいはTwitterでハッシュタグを付けて投稿をいただく。こうした形になるわけですが、ぜひ多くのご意見を承りたいと思います。

もちろんすべての意見にお返しすることはできませんが、定期的にYouTubeですとかTwitterにおいてお返しをさせていただきたいと思っております。詳細につきましては岸田事務所の方にお問い合わせをいただければと思います。以上私の方からの説明とさせていただきます。ご清聴まことにありがとうございました。

【経済政策関連】2021年9月8日

みなさん、おはようございます。衆議院議員の岸田文雄でございます。本日もこの政策発表の場、ご協力をいただいておりますこと、心から厚く御礼申し上げます。

前回私はコロナ対策について説明をさせていただきました。それに続きまして、今回は経済政策について説明をさせていただきます。

これから私が説明させていただきます、私の経済政策。一言で言うのならば小泉改革以降の新自由主義的政策を転換するということであります。

世界はすでに単純な規制改革、構造改革路線から脱却し、国と民間が協調共同して産業を興し、国民の懐、あるいは生活を豊かにする、こうした方向に舵を切っています。私たち日本も今こそ政策路線の変更をしなければ、企業倫理も社会の絆も保つことができません。

私は新しい日本型の資本主義の構築に向けて先頭に立ってまいります。まず、マクロ経済運営ですが、最大の目標はデフレからの脱却。これは変わりません。したがって、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして成長戦略、この3原則については堅持をいたします。

同時にコロナ禍の中で、すでに2年経とうとしています。先日会見で申し上げた通り、数十兆円規模の経済対策、これを早急に取りまとめたいと考えます。なお今後の財政についてですが、財政は国の信用の礎でありますので、財政再建の旗を降ろすことはいたしませんが、経済あっての財政です。経済の正常化を図りつつ、財政の安定化、健全化についても考えてまいります。

分配なくして、次の分配なし

ここで1枚目のパネルを見ていただきたいと思います。

私はかねてから新しい日本型の資本主義を作ると申し上げてまいりました。経済においては、成長と分配、この2つが、この両面が必要です。まさに成長なくして分配なしです。分配する果実がなければ分配することもできないわけですから、成長なくして分配なしです。

しかし同時に分配なくして、消費、あるいは需要は盛り上がりません。分配なくして、次の成長なし、これも大いなる真実であります。小泉改革以降の規制緩和、構造改革の新自由主義的政策、これは確かに我が国経済の体質強化、あるいは成長をもたらしました。

他方で富める者と富まざる者、また持てる者と持たざる者の格差、分断を生んできました。今、コロナ禍の中で国民の間の格差がさらに広がってしまった。こうしたとき、成長と分配の好循環を果たし、そして新たな日本型の資本主義を構築することが必要です。そのために新しい日本型資本主義構想会議を設置し、ポストコロナ時代の経済、社会のビジョンを作成してまいります。

国民を幸福にする成長戦略 岸田4本柱

パネルの2に進みます。ウィズコロナ、そしてアフターコロナに向けて、日本経済を再起動させていく。そのための成長戦略について、まず申し上げます。成長と分配の成長の部分について申し上げます。詳細は後ほど資料を配布させていただきたいと思いますが、まずは私が掲げる成長戦略の中で特に強調したい「岸田4本柱」について説明をさせていただきます。

このパネルの1番、まずは1本目の柱。科学技術立国です。科学技術とイノベーションを成長戦略のど真ん中に据えていきます。2000年以降、自然科学分野におけるノーベル賞を受賞した日本人は米国に次ぐ19名※ということでありますが、しかし日本の科学技術の力は今、翳りを見せています。博士号の取得者、あるいは論文数においても中国や欧米諸国に大きく差を付けられてしまっています。

※日本国籍者は17人

新型コロナのワクチンも日本独自の開発ができず、海外に依存している、こういった状況です。人工知能、量子技術、さらにはバイオ薬品など最先端の科学技術は我が国の将来の産業競争力を左右いたします。そこで、科学技術とイノベーションへの投資を抜本的に拡大することを考えなければなりません。まずは世界トップクラスの研究大学を建設するために十兆円規模の大学ファンドを年度内に設置いたします。

また革新的な科学技術に対する研究開発支援、これを抜本拡充いたします。民間企業が行う研究開発に対する税制支援、これも強化いたします。さらには各省の政策に科学技術の視点、これをしっかりと盛り込むために各省庁に科学技術顧問を設置するとともに、総理直属の主席科学技術顧問を設置いたします。

そのうえで科学技術立国として、2050年、カーボンニュートラルの実現に向けて人類の未来がかかる地球温暖化対策を成長につなげるクリーンエネルギー戦略を策定し、強力に推進いたします。

第2、経済安全保障です。冷徹な世界の現実をしっかり見据えて、経済安全保障をしっかりと進めていかなければならないと思います。かつて、国家間の戦いは武力で行われました。しかしコロナ禍で明らかになったように、マスク、医療ガウン1枚でも国は困難に直面する、これが現在の状況であります。世界中でワクチンや治療薬、さらには先端半導体、こうしたものの争奪戦が激化をしています。そして権威主義的な国家においては、経済力を安全保障のために利用する、エコノミックステートクラフト、こうした取り組みに勤しんでいます。

我々民主主義国家としても、強靭なサプライチェーンの形成が不可欠です。そこで我が国の経済安全保障のために、戦略技術、物資の特定、さらには技術流出の防止に向けた国家戦略を策定し、経済安全保障推進法を制定してまいります。こうした包括的な戦略のもと、重要技術を国内で育成し海外に依存しない、自立的な経済構造を整備いたします。

3本目の柱、これは東京一極集中を是正し、世界とつながるデジタル田園都市国家構想です。新しい資本主義の象徴は地方であると考えます。地方の復活に向けて5Gなどデジタルインフラの整備、徹底して進めてまいります。そしてテレワーク、自動運転などデジタルの力を社会実装し、都市部との距離を克服する。誰もが故郷と首都圏を行き来できる2地域生活、これを進行してまいります。

地域のみなさまとお話しする中で、デジタル、デジタルというけれどもどうもピンとこない、とか、スマホをなかなか使いこなせないんだといった高齢者の方の声も聞きます。こうした声をたくさん聞いてまいりましたが、国民みんなでデジタル化を進めれば、経済社会の生産性、向上するとともに、デジタル化のメリットをみんなで享受できるようになります。

こうした考え方のもとに、自治体や携帯電話ショップと連携してデジタル推進委員を任命し、全国に展開をいたします。各地域ごとに丁寧なスマートフォンの使い方などを説明することで、誰一人取り残さないデジタル田園都市を実現してまいります。

そして都市と地方の距離を克服するデジタル化、これは地方と世界との距離も克服してまいります。この基盤は自由で、公正なデジタル流通です。このため安倍元総理が提唱されたDFFTの構築に向けて世界をリードしてまいります。

そして4本目の柱。人生100年時代の不安解消に向けて、働く人すべてに社会保険を適用してまいります。将来への不安が消費の抑制ですとかあるいは、成長の阻害要因のひとつとなっています。人生100年時代が到来し、我々の人生が複線化し、そして兼業、副業、あるいは転業、さらには起業、学び直し、あるいはフリーランス、多様な、そして柔軟な働き方がどんどんと拡大しています。

大事なことはどんな働き方をしてもセーフティーネットがしっかり確保されていることであり、働き方に中立的な社会保障や税制を整備していくこと、これが必須となります。このため今後は働く方は誰でも加入できる勤労者皆保険を実現することで、働き方と関係なく充実したセーフティーネットを受けられるようにしてまいります。

令和版所得倍増のための分配施策

そして次のパネルに進んでいただきたいと思います。

次のパネルは先ほど申し上げました成長と分配の分配の方であります。分配政策として私が強調させていただきたい、岸田4本柱についてお話をさせていただきます。

まずは「三方良しの経済を実現する」「下請けいじめゼロ」です。大企業が儲かっても下請けの中小企業にコストカットを迫り続けるようですと、中小企業が多い地方経済、決してよくなることはありません。2010年代に大企業の収益、これは大きく回復しました。しかしながら中小企業の経営、これは苦しいままです。サプライチェーンの中で、利益が適切に分配されていないからです。

大企業には長期的な視点に立って三方良しの経営、すなわち株主だけではなくして、従業員も取引先も恩恵が受けられるような経営。これを強く求めてまいります。

政府としても四半期開示の見直しなどを通じて、大企業と下請け企業が共存、共栄できる環境を整備するとともに、下請け取引に対する監督体制を強化し、下請けいじめゼロを目指してまいります。

2番目、これは中間層の拡大、そして少子化の解決に向けて子育て世代の住居費、そして教育費を支援してまいります。成長と分配の好循環の中で、取り残されている方々がおられます。中間層の拡大に向けて分配機能を強化し、そして所得を引き上げる。令和版の所得倍増を目指してまいります。特に若い子育て世代の所得が伸び悩む中にあって、コロナ禍で出生率も一段と低下しています。子どもは国の未来そのものです。子育て世代にとって大きな負担になっている住居費と教育費、これについて支援の強化をいたします。

3本目の柱。これは医療、介護、さらには保育など現場で働いている方々の収入を増やす。あなたの所得が増える公的セクターの公的価格の抜本的見直しであります。コロナ禍において医師、看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士、こういったみなさま方は最前線において大変な苦労を続けておられます。

実はこうした現場ではコロナ禍以前から人手不足、深刻化していました。その原因のひとつにこれらの職業の多くは賃金が公的に決まるにもかかわらず、その賃金が低く抑えられてきたという事情があります。政府としては処遇改善に向けた措置に取り組んでまいりましたが、現場においては手取り収入が全然増えないとか、将来の見通しが立たないとか、切実な声を聞いてまいりました。

そこでこれら第一線の現場で働いておられる方々の収入、思い切って増やすために公的価格の抜本的見直しを行うこととし、このための公的価格評価検討委員会を設置いたします。

そして4本目の柱、これは公的分配を担う財政の単年度主義の弊害是正です。国の財政もより長期的な視点に立った戦略的な財政支出を行っていくことを検討してまいります。

科学技術の振興も、経済安全保障の確保も、セーフティーネットの拡充もすべて5年、あるいは10年といった単位で取り組むべき国家戦略です。しかしながら我が国の予算は1年ごと、単年度で区切られており、中長期的な支援の継続が難しくなっています。

私は先ほど申し上げたように、企業には長期的視点に立った経営を求めようとしているわけですが、政府においても長期的視点に立った計画的な支援を進めていくことは不可欠であると考えます。財務省は抵抗するかもしれませんが、単年度主義からの転換を検討いたします。

そのうえで地方を支える基盤にしっかり投資してまいります。基本的には農林水産業の成長産業化をしっかり進めるとともに、家族農業や中山間地農業の持つ多面的な機能を維持してまいります。

また防災、減災、国土強靭化など災害に強い地域作づくり進めるとともに、高速道路、新幹線、こうした交通、物流インフラを整備してまいります。そして地域を支える商工会、あるいは自治会という仕組みを支援し、支援を強化してまいりますし、またコロナで傷ついた地域の祭りの再開への支援も行ってまいります。

その他、観光立国復活に向けた観光業支援、文化立国に向けた地域の文化、芸術への支援強化、こうしたものを通じて地方を支える基盤を強化してまいります。

以上が本日発表させていただく私の経済政策の概略であります。ご清聴まことにありがとうございました。

【外交・安全保障政策】2021年9月13日

みなさん、おはようございます。岸田文雄です。

本日は3回目となります政策発表をさせていただきます。本日は外交・安全保障について申し上げます。一言で言うならば外務大臣単独では戦後最長4年8カ月務める中で少しずつ培ってきた信頼をベースに3つの覚悟をもって外交を進めていきたいと考えております。

今から5年前、2016年4月、当時外務大臣を務めておりました私は北京の地で中国王毅外相と向き合っておりました。当日午前中2時間の外相会議がセットされ、昼からワーキングランチが予定されていました。午前中の会談、延々と議論が続きました。お互いに激しく立場を主張する中にあって、終わりが見えない状況が続いていました。大幅に会議が延長され続けた。こうした状況でありました。

あのときに私は我が国の国益を守るためにも、譲れないものは絶対に譲れない。北京の地で日本を代表して国益を守る、そうした覚悟で王毅外相と対峙しておりました。

今、世の中においては、米中対立、そして民主主義と権威主義の対立の中で、日中関係について様々な議論があります。最も日中の関係、緊迫していた時期に外務大臣を務め、そしてその最前線にいた人間として、外交安全保障を進めるものは国益のため覚悟を決め腹をくくる、そうした毅然とした姿勢が不可欠だと確信をしています。

同時に外交安全保障を語るうえで、最も重要なことは信頼であります。我が国には先人の営々とした努力によって、欧米はもちろんのこと、アフリカ、中南米、アジア、世界から信頼を勝ち得ています。中東においても日本は欧米諸国にはない独自の信頼を勝ち得ています。中南米においては日系人社会の信頼、絶大なものがあります。

こうした状況が実現する陰には先人の努力はもちろんでありますが、日系人社会のネットワーク力でありますとか、日本企業の信用力、またアニメ、漫画、こうしたソフトパワーの魅力。多くの要因があると考えます。こうした日本のチームとしての総合力に基づいた信頼、これこそが我が国の強みです。この信頼を基礎に私は3つの覚悟をもって外交を進めてまいります。

「信頼」と「3つの覚悟」に基づいた外交・安全保障政策

ここにフリップを用意いたしました。

第1に、これが民主主義等の普遍的価値を守り抜く覚悟です。2つ目、これは我が国の平和と安定を守り抜く覚悟です。3つ目、これは地球規模課題に向き合い、人類に貢献し国際社会を主導する覚悟です。この3つの覚悟について、申し上げさせていただきます。

まずは1つ目。民主主義を守る覚悟です。自由、民主主義、法の支配、さらには人権。こうした普遍的価値を守り抜く覚悟。民主主義を脅かす権威主義的、または独裁主義的体制が拡大をしています。

例えば一帯一路。一帯一路は単なる貿易ルートや経済圏だけではなく、製造、技術、サービス、さらにはインフラの標準化、こうした新・中国圏を拡大する狙いがあります。

戦略的に拡大する権威主義的体制にどのように対応していくのか。我が国はその国際的価値観の対立の最前線にあります。台湾海峡の安定、香港の民主主義などはその試金石であり、毅然と対応してまいります。またウイグルの人権問題などに向き合うため、人権問題担当の総理補佐官を設置し、取り組んでまいります。

我が国は米国や、欧州、ASEAN、インド、豪州、さらには台湾、普遍的価値を共有する国、地域との連携により、自由で開かれたインド太平洋の国際秩序を強化することで、自由民主主義の灯を高々と掲げてまいります。このため日米同盟の強化はもちろんですが、日米豪印のQUADの枠組みの活用、さらにはTPPに関心を寄せる英国との連携などに取り組んでまいります。

2つ目の覚悟。これが我が国の平和と安定を守り抜く覚悟です。我が国周辺の安全保障環境、厳しさを増しています。昨年、尖閣周辺の接続水域への中国公船の侵入、333日に及び、今年も同様の状況が続いています。また北の空と海においてはロシアの活動も活発です。

海上保安庁の能力強化、自衛隊との連携強化など海洋国家として海の安全を確保するための取り組みについて、法改正も視野に入れつつ、全力で取り組まなければなりません。また周辺国のミサイル攻撃能力が進化する中、イージス艦、レーダー整備とともに、さらなる効果的措置も含めたミサイル防衛能力の強化に取り組まなければいけません。

こうした取り組みとともに、2013年に制定されました国家安全保障戦略についても、最近の国際情勢の緊迫化を踏まえた改定を進めてまいります。改定にあたっては近年重要性を増している経済安全保障も盛り込まなくてはなりません。そして来年度予算の編成作業においては、中規模の見直しも視野に防衛力強化に向けた議論、進めてまいります。

そして3つ目、第3の覚悟は地球規模課題において世界を主導し、人類に貢献する覚悟です。地球温暖化問題、平和、核軍縮、宇宙、海洋の開発、利用、さらには防災等々、地球規模の課題において我が国は国際的合意やルールの形成、そして課題解決に向けてリーダーシップを発揮していくことが求められています。

とりわけ被爆地広島の出身者として、ライフワークとして取り組んできた核軍縮・不拡散、さらには核兵器のない世界を目指すこうした大きな目標については世界各国の指導者、とりわけ米国・(ジョー・)バイデン大統領との信頼関係を築くことで最大の核保有国である米国を動かし、前進を図ってまいります。

科学技術も外交における大きな切り札

そして今まさに「信頼」と申し上げましたが、冒頭でも申し上げたように我が国に対する世界の信頼、これはかけがえのない力となります。

同時に我が国が世界に誇る科学技術、イノベーション、これも環境、エネルギーなど外交においても大きな切り札となります。このため各省に科学技術顧問を設置するとともに、総理のもとに首席科学技術顧問を置いてまいります。

地球規模課題ということで申し上げれば、今後の大きな焦点がDFFT。Data Free Flow with Trust。このDFFTの推進です。21世紀の石油といわれるのがデータであり、今後の世界はデータ駆動経済に移行していきます。このデータを制したものが世界を制します。その際個人のプライバシーを気にすることなく、監視等も容易で、国家へのデータ集約も容易な権威主義的な体制は圧倒的有利な状況にあります。

我々は大いに緊張感をもって取り組んでいかなければなりません。米欧それぞれがデータに関するルールを展開する中で、日本はその間にたって、日米欧の三極を中心に信頼に基づいた公正なデータ流通の枠組みを作り上げなければなりません。我が国がG7議長国となる再来年に向けて、DFFT実現に向けたロードマップを明らかにし、担当大臣を置いて取り組んでいきます。DFFTもまたトラスト、信頼です。ここでも我が国に対する信頼、大きな力となります。

改めて申し上げます。信頼こそが外交の要諦であります。外務大臣として、そして宏池会の会長として、大先輩であられます大平正芳元総理は国と国との関係において、最も大切なものは、国民の心と心の間に結ばれた強固な信頼であると述べられました。

私は先人が作られた財産である日本外交の信頼のもと、各国の首脳と信頼を結び、日本の国益を守り、世界の平和を守ってまいります。

そして忘れてはならないのは拉致問題です。北朝鮮に対しては国際社会全体としての制裁による圧力、最大限に高め、核ミサイル開発の完全な放棄を迫り、全ての拉致被害者の即時一括帰国を目指します。また北方領土問題についても、領土問題の解決なくして平和条約の締結なし。この基本方針を堅持したうえで、コロナ収束を見定めた交流事業の早期再開の実現、北方四島における共同経済活動の具体化など、全面返還のための多角的アプローチに取り組んでまいります。

その他外交・安全保障政策の詳細については、インターネット上にもアップさせていただきますので、ぜひご覧いただきたいと思います。

結びに外務大臣、そして防衛大臣を経験した者とし、その経験を活かし、信頼と3つの覚悟で毅然とした外交・安全保障を推進することを改めて宣言させていただき、今日の政策発表とさせていただきます。

ご清聴まことにありがとうございました。