※この記事は2021年09月09日にBLOGOSで公開されたものです

9月9日に誕生日を迎えたケンタッキーフライドチキン(KFC)の創業者、カーネル・サンダース氏(1890~1980年)。日本KFCは2003年、日本記念日協会に「カーネルズ・デー」を記念日として登録しました。

生前は地域のためにできることに力を尽くしたカーネル氏。その意志を継ぎ、同社は「こども食堂」への閉店時に残ったチキン寄贈などに力を入れています。

国連が2020年から制定した「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」(毎年9月29日)や、国連食糧農業機関(FAO)の創設記念日である「世界食料デー」(毎年10月16日)など、身近な食品ロス問題について考えるのにぴったりのシーズン。KFCの取り組みと子どもの貧困や食品ロス問題について伝えます。

※食品ロスに関する内容を追記しました(9月28日)

横浜市や沖縄県など5都市で1万5千食以上を寄贈

自治体や地域のNPOなどが、無料や低価格で子どもらに食事を提供する「こども食堂」。

日本KFC広報CSR部によると同社は2019年11月、横浜市と連携してオリジナルチキンを食材として寄贈する活動を開始しました。

該当店舗はこども食堂を主催するNPOなどの要請に合わせ、こども食堂開催の1~2週間前から閉店時に残った調理済みのオリジナルチキンを冷凍保管します。

実施日に主催者に受け渡されたチキンは調理時に解体され食材に。カレーやパエリア、ピザなどの料理となって子どもたちのもとに届きます。

同社は横浜市を皮切りに、神奈川県川崎市、埼玉県、富山県、沖縄県の地域行政と連携。これまでに100カ所以上のこども食堂などで1万5千食以上の提供を行ってきました。

同社の担当者は「新型コロナウイルス感染拡大のなか、ひとり親世帯など生活困窮状態にある世帯は増えています。そのような状況の中でこども食堂の料理の食材として少しでもケンタッキーのチキンが貢献できれば」とコメント。

「"地域のお客さまにとっての家族"として地域貢献に熱心に取り組んでいたカーネル・サンダースの意志を受け継ぎ、人々や地域のためにできる持続的なアクションをこれからも増やしていきたい」と話しています。

背景にある「子どもの貧困」とは

日本KFCやこども食堂の活動の背景にある問題が「子どもの貧困」です。

厚生労働省が公表した「2019年 国民生活基礎調査」※1によると、日本における子ども(17歳以下)全体のうち、所得の中央値の半分(127万円)に満たない家庭で暮らす子どもの割合を示す「子どもの貧困率」は18年時点で13.5%です。

これは子どもの7人に1人が貧困状態にあることを示しています。

また、母子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率は48.1%で、大人2人以上の世帯における貧困率10.7%と比べても高い割合となっています。

政府は2019年、「子どもの貧困対策に関する大綱」※2の初の見直しを行い閣議決定。地域や社会全体で解決する意識を持ち、子どものことを第一に考えた支援を早急に行うとしました。

こども食堂がセーフティネットに

子どもの貧困対策が急がれるなかで、栄養のある食事や地域コミュニティのなかで子どもの居場所を提供する役割を担っているのがこども食堂です。

NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが2021年6月~7月にかけて行った調査※3によると、新型コロナ禍(2020年3月以降)の変化に関する自由筆記欄では、多くのこども食堂が「困窮家庭の増加」を指摘。9割以上のこども食堂が活動を行っており、約7割が弁当や食材を配布するという形で活動を行っています。

しかし、課題も。

活動する上での困りごととしては「必要な人に支援を届けること(60.8%)」や「感染拡大の不安、感染防止の対応(47.8%)」、「運営資金の不足(43.5%)」という回答が上位にあがりました。また、「食材の不足」をあげた割合は23.1%となっています。

毎日、お茶碗1杯分の食べ物を捨てる日本

子どもや貧困家庭への食の支援が急がれる一方で、捨てられてしまう食べ物、いわゆる「食品ロス」が世界的な問題となっています。

厚生労働省やFAOの報告書によると、毎年、世界中で廃棄されるのは約13億トン。これは生産される食料の3分の1に当たります。

また日本では毎日、1人お茶碗1杯分の食料が捨てられているとされています。

食料問題に対して世界規模で取り組むために、2030年までの達成を目指す国際社会共通の持続可能な開発目標(SDGs)には「貧困をなくそう」や「飢餓をゼロに」のゴールとともに「つくる責任、つかう責任」が設定されています。

子どもの貧困対策が喫緊の課題となっている日本においては、セーフティネットの役割を担うこども食堂と地域行政や民間企業が連携を深め、食品ロスを減らす取り組みを進めながら支援の輪を広げていくことが、今後ますます重要になりそうです。

関連リンク:こども食堂などを利用したい、支援したい人への情報掲載ページ(子供の未来応援国民プロジェクト:内閣府ほか)

参考資料
※1:2019年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)
※2:子供の貧困対策に関する大綱(内閣府)
※3:こども食堂の現状&困りごとアンケート第5回(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ)