※この記事は2017年10月04日にBLOGOSで公開されたものです

まずはスクープを取ったスポニチに「あっぱれ!」

10月2日のスポニチ電子版に「『サンモニ』30周年 喝!「週刊御意見番」名コンビは手違いがきっかけで誕生」という記事が登場しました。日曜朝8時の人気番組『サンデーモーニング』(TBS系)内の名物スポーツコーナー「週刊御意見番」に関するものです。同コーナーは現在ではハリーこと張本勲氏と「助っ人」が1週間のスポーツを振り返り、それぞれのプレーや結果に対し自由自在に「喝」「あっぱれ」を入れていきます。

このスタイルの原点となったのが、「親分」こと故・大沢啓二氏とハリーによる、「好々爺的大沢親分」と「血気盛んな若き日のハリー」の見事なコンビでした。

たとえば、MLBの試合で「隠し玉」があったとしましょう(あくまでも仮の話)。ハリーが「だからアメリカの野球はレベルが低いんだよ! 注意力が足りないよ! あんなもんは、日本ではリトルリーグでもやらないよ! 喝だ! 大喝だ!」と頭から湯気を出して怒ると親分は「ガハハハ、まぁ、いいじゃねぇかよ。オレはバレなかった二塁手にあっぱれ! 入れとくわ、ガハハハ」となだめるという展開でした。

同記事はこのスタイルの原点がなんと「ダブルブッキング」にあったと伝えています。元々大沢親分とハリーは交互に出演するスタイルだったのですが、ダブルブッキングにより2人が同時に出たところ大反響に! そこで、今のスタイルになった、ということです。スポニチではこのように締めています。

〈息の合った、時には正反対の意見をぶつけ合う2人の姿は視聴者を魅了。現在の張本氏とゲストが共演するスタイルへとつながっている。今となってみれば、当時のダブルブッキングは「あっぱれ」な手違いだったのかも〉

いや、こんな大スクープを取ったスポニチにも「あっぱれ!」を入れたいですよ。それはさておき、やはり当連載の原点にもなっている「週刊御意見番」については触れざるを得ないでしょう。記事内で番組プロデューサーの西野哲史氏は、同コーナーが人気の理由をシンプルに分析していますが、本当はもっと言いたいことがあったのかもしれません。身内をホメまくることに対しても逡巡はあったことでしょう。だったら完全なる部外者かつ傍観者の私が「週刊御意見番」をホメまくる。これまで公の場で2回ぐらいホメてきたが、3回目もやらせろ、いや、やらせてください。それくらいこのコーナー、好きです。

荒れまくる政界の中でブレない勢力にも「あっぱれ」

さて、同コーナーがいかに優れているかというのは、今の政治を見ていればわかります。特に解散総選挙。なんなんですか、これ?

自民党は「第三極(小池百合子氏が結成すると予測された政党)の準備が整う前に選挙やったら勝てる!いつ解散するの?今でしょ!」とやらかした。ここには大義名分はなく、己の好待遇ポジションを維持するゲスどもの挽歌といった感さえある。その直前には、細野豪志氏を筆頭に、「民進党じゃオレの仕事どーなるかわからん」とばかりに民進党という泥船から逃げ出すゴキブリの如き者続々。

そこで野党は「大義なき解散」「安倍ファースト解散!」と金切り声をあげて自民党と安倍首相のやり方を糾弾した。しかし、「今なら私達に風が吹いている!」とばかりに小池氏が「希望の党」を作ったらなんとそこに乗っかってきたのが前原誠司氏率いる民進党。「全員を合流させてください!幼子を抱えた議員もいるんです!なんとかしてください!」とばかりに小池氏に助けを請い、そして両院議員が集う集会にて大きな反発もなく「希望の党から出馬する」という約束をし、合意を見た。

しかし、小池氏が後日「思想の違うヤツは公認しねぇからな!」との意思を示すと、民進党内の左派は「聞いてないよぉ~!」と政界ダチョウ倶楽部ごっこをやり始め、枝野幸男氏を中心に新たなる党「立憲民主党」を立ち上げる。

一見「立憲民主党」に合流する人々は「政治的信念がある」と絶賛される向きもありますが、一回は「希望の党」からの公認を受けることに合意したわけですよね? 枝野氏は件の集会でキレまくって「前原、貴様の政治的理念はどこへいった!保身に走るんじゃねぇ!喝だ!もう一つ喝だ! 大喝だ!」とやって、その場で「立憲民主党作るぞ、オラ、オレについてくるヤツはこの場を出ろ!」とやって、集会の途中でいきなり会見を開くぐらいやればカッコ良かった。

しかも、維新にしても「東京で候補者出さないから大阪では候補者出さないでね」という約束を小池氏と取り付ける。

一体なんなんですか、これ!どいつもこいつも「吾輩の生活が第一!」じゃないですか。そんな中、まったくブレない日本共産党と社民党、そして志位和夫氏と国会議員ですらない吉田忠智・社民党党首の政治スタンスはさておき、ブレない姿勢には「あっぱれ」を入れます。

『週刊御意見番』の関係者に「あっぱれ」を連発

さて、『週刊御意見番』ですよ、ここでは! 「ブレない」「党内をまとめるだけの強権発動」を持った共産党と社民党に「あっぱれ」を入れましたが、この姿勢は実に清々しい。『週刊御意見番』もそうなのです。

同番組ではとにかく張本氏が強い意思をもって「あっぱれ」と「喝」を入れている。「あっぱれ」を入れる基準は基本的には「頑張っている子供・高齢者・マイナースポーツの選手」に加え「卓越した成績を残した者」というところが第一段階であります。しかし「海外プロスポーツで大金を稼ぎまくる日本人」に対してはあまり「あっぱれ」は入れない。バドミントンや卓球の選手が世界一になると「あっぱれ」は入る。

ここでハリーが意図していることが何かといえば、「スポーツは金持ちのためだけのものではない」というところに行きつくのではないでしょうか。そして「強者は常に周囲から『あっぱれ』をもらっているから、せめてそうでない人に対しては私が『あっぱれ』を入れよう」という優しさを感じるのであります。

「喝」の基準は基本的には、「強者」たるアメリカの野球選手のヘボプレーが筆頭でしょう。そこでのハリーの心の叫びは「アンタ達は毎年15億円ぐらいもらってるんでしょ? これで5000トンぐらいコメが買えるんだよ? 日本の戦後はねぇ、コメ不足で困っていたんだよ! そんな大金もらっているアンタらがそんな怠慢なヘボプレーをしてどうするの、しかもアンタ達のお父さんはね、戦後も牛肉をガンガン食べて見事な体躯を作り上げていたのだよ。そんな恵まれた人生を送っているのに、ヘボプレーをするなど喝だ!」というものがあるかもしれません。

他にもハリーが喝を入れるのは、マナーの悪い選手に対してです。たとえば三振して怒りのあまりグローブを放り投げたり、バットをぶん投げたりする選手ですね。この時ハリーは「ダメだよ!道具は大切に扱わなくちゃ!喝だ!」とやりますが、スポーツ選手である以前に人として正しくあれ、ということをハリーは伝えようとしているのです。

こうした姿勢はこの20年ほどブレることなく続いており、大沢親分がいなくなった今、ハリーはリーダーシップも発揮するようになっています。基本的に「助っ人」はハリーよりも若い元スポーツ選手が多い。さらに、ハリーはそこに出てくる野球選手が自分よりも格下だと客観的には思われていることを知りつつも、「彼はとにかく球が速かった」「彼はとにかく体が頑丈だった」などとホメ、「助っ人」のことを立てる。

しかし、ペラペラペラペラ喋り続ける男に対しては苛々している様子を明確に見せ、その元選手が同番組にその後出演することはなくなる。ハリーは自らの「あっぱれ」「喝」こそ視聴者がもっとも喜ぶことを知っており、その流れをぶった切るかのような饒舌クソ野郎のことは、翌週以降容赦なく切り捨てる呼び水を作るかのごとき苛立ちを見せる。かくして同番組の「助っ人」は純度の高いというか、ハリーのリーダーシップと噛み合う人が残っていくのです。

山田久志氏、山本昌氏、松尾雄治氏、瀬古利彦氏なんかは名助っ人と言えそうですね。しかし、これもハリーがリーダーシップをもって対峙したからこその名コンビ誕生といえるでしょう。もちろん、新人を何人も登用し、ハリーとの相性を測っている面も見て取れます。ここは番組側の工夫です。当然、様々な競技出身の「助っ人」が出た方が番組も活性化しますからね。

今回、スポニチのスクープも「あっぱれ」だ!

TBSの西野プロデューサーも「あっぱれ」だ!

そして「助っ人」にも「あっぱれ」で、ハリーに対し物怖じすることなく「そんなことはどうでもいいですから」と言い「どうでもいいなんてことないよ!」とキレられてもそれを笑いに変える司会の関口宏氏にも「あっぱれ」だ!

あとは美人でしかも様々なデータを用意し、どんな質問に対しても答えられるよう準備をしている唐橋ユミ氏、そして何よりも張本勲氏ご本人に対し、たいへん恐縮ながら「あっぱれ」を心からお伝えしたい。

やい、解散総選挙に出る政党・候補者の皆様方、張本氏と番組の「ブレない姿勢」「強いリーダーシップ」を見習ってくれ、頼むぞ!