ラジオの権利と二次使用料 - 西原健太郎
※この記事は2017年09月29日にBLOGOSで公開されたものです
世の中は1ヶ月後の選挙に向かって動き出している今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか?私はというと、この時期恒例の改編期の真っ只中で、終わる番組もあれば始まる番組もあるという感じで、どったんばったん大騒ぎな毎日を過ごしています。
ところで、『どったんばったん大騒ぎ』といえば、最近は某フレンズ的な話題が、アニメ界隈を騒がしていますね。私はその辺の事情は全くわからないので、これ以上の言及は避けますが、どの業界にも権利関係の話は常にあるんだなと思いました。そして、権利といえば、ラジオ業界にも権利というものは存在するわけで…。ということで、今回は、私がわかる範囲の『ラジオの権利』の話を書いてみようかと思います。
ラジオ番組の二次使用にまつわる権利
ラジオ番組というのは、基本的には毎週、ないし隔週更新で放送(配信)されて行きます。つまり、1回限りの番組よりも、回数を重ねて行く番組の方が多いわけですが、かつてラジオ番組は、放送されたらそれっきり、週に1度しか放送されない番組しか存在しませんでした。しかし、価値観が多様化する現代、ラジオ番組の形態も時代に合わせて変化しています。例えば、ラジオのアーカイブCD。これまでに放送されたものを1枚のCDにデータとして収録し、リスナーはそれを自分の音楽プレイヤーなどに入れて聴きます。あの楽しかったトークを何度も聴けるわけです。
また、近年では動画サービスniconicoが『ニコニコチャンネル』という月額会員制サイトシステムを運用しており、特にアニラジ業界ではその制度を利用し、月額会費を払ったユーザーに対して、『過去放送』や『会員だけが視聴可能のコンテンツ』を提供しています。
一般のラジオ番組でもradikoのタイムフリー機能を使えば、聞き逃した番組を聴くことができますが、こちらは1週間限定で、しかも1回クリックした後、3時間しか聴くことができません。なぜ1週間限定で3時間制限があるのかというと、広告主や事務所など、番組の権利を持っている団体が無制限視聴を許さないからで、そういう意味ではアニラジ業界の方が、ラジオの権利に関しては進んでいると言えるかもしれません。
ところが、進んでいると思われるアニラジ業界の番組再配信システムですが、番組スタッフの権利については、まだまだ整備されているとは言えないのが現状だったりします。そして、特に問題視したいのが『番組の二次使用』に関する権利です。
番組が繰り返し配信されたり、ラジオCDでのアーカイブ化など、アニラジ番組の『リスナーをつなぎとめる手段』は、一般ラジオ番組より長けています。しかし、その際に本来はスタッフに発生しなくてはいけない『二次使用料』。これを考慮していないラジオ番組が、現在配信中の番組でもかなりあります。
スタッフに二次使用料が払われない現実
実は雇用主(スポンサー・局など)から出演者サイドに支払われるギャラには、二次配信をする場合に発生する『二次使用料』があらかじめ盛り込まれています。(たまに途中から二次配信をすると決めてしまう番組があったりすると、その際に事務所とギャラの面で揉めることがあります)。しかし、雇用主から番組スタッフに支払われるギャラは、二次使用をしようがしまいが変わらない…そんな契約になっている番組が結構あります。正確には、二次使用を考慮してくれる雇用主もいるのですが、その割合は半々という感じかと思われます。我々番組スタッフは使われる側なので、それに対して泣き寝入りをするしかないのが現状なのですが、本来は最初の契約の段階で、二次使用料に関しては、ギャラに盛り込まれていないといけないと私は考えます。
しっかりと二次使用料を盛り込んでくれる、素晴らしい番組・素晴らしい雇用主…そういう理解がある人たちとだけ仕事をしたいのが本音ですが、ラジオ業界のスタッフは飽和状態にあるのが現状。雇用主から二次使用についての説明がないなら、それに従うしかありません。
さらに、先に書いた『有料会員向けコンテンツ』の制作ギャラも、通常ギャラにインクルードされてしまう始末…。前に私は、ラジオ業界のギャラのダンピングについて書きましたが、ギャラのダンピングによって疲弊して行くフリーのスタッフや若手スタッフの未来は、決して明るくはないと言えるでしょう。
仕事をした人には、それに見合ったお金が支払われるべきだと思います。それはどの業界でも同じことです。ラジオ業界を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。でも、当たり前の事ができる業界が、これから成長できる業界だと私は思います。