放送作家は「自己顕示欲が強い人」にとって天職かもしれない - 西原健太郎
※この記事は2017年08月30日にBLOGOSで公開されたものです
例年よりも暑くない夏が過ぎようとしている今日この頃。みなさんいかがお過ごしでしょうか?
私はというと、毎年恒例の夏の仕事がひと段落し、今年も夏を無事乗り切れそうな予感を感じている今日この頃です。皆さんは今年の夏、どんな思い出ができましたでしょうか?
ところで、今年の夏、世の中を賑わしたブームの一つに、『ナイトプール』があります。『インスタ映え』という魅惑のワードを求めて、人々が集い、写真を撮りまくるナイトプールですが、インスタ映えする写真をアップしたいという思いは、撮影者の『自己顕示欲』の表れに他なりません。
自己顕示欲というのはとかく悪い意味で使われることが多い昨今ですが、私は悪い意味だけではないと考えています。そして、普段裏方を自負する私にも、自己顕示欲はもちろんあるわけでして…。
というわけで、今回は放送作家の自己顕示欲について、業界で働く同業者へのメッセージも踏まえつつ、書いてみます。今回は一般的な内容ではないかもしれませんが、ご了承ください。
「仕事=自己顕示欲」という放送作家はほとんどいない
『自己顕示欲』とは、つまるところ「自我をアピールしたい欲求」ということになるわけですが、放送作家にとって自己顕示欲とは、頭の中にあるアイデアを出力し、それを形にする作業に該当します。
つまり、放送作家にとっては『仕事=自己顕示欲』ということになるのですが、それがすんなりと形になっている放送作家はほとんどいません。なぜなら、放送作家の仕事の多くは、『誰かの為の仕事』であるからで、プロの放送作家であればあるほど、『自分が輝くための番組作り』よりも、『誰かが輝くための番組作り』を重視します。
では、放送作家は普段自己顕示欲を抑えて仕事をしているのかというと、少なくとも私はそうではありません。私の場合、どんな仕事にも『自己目標』を設定する事で、そこに至るまでの工程を楽しみ、目標を達成する事で自己顕示欲を満足させています。
例えば、「番組名をツイッターのトレンドランキングに毎回載せたい」とか、「いつも収録現場に来ているあの人を笑わせたい」とか、他人から見たら何の意味もないような目標を立て、それを達成することに全力を注ぎます。そして達成できたら、それを自分の中だけで喜びます。
自己満足と自己顕示欲は必ずしもイコールではないと思いますが、少なくとも私は、自己満足する事が性に合っていると思っています。
「自己顕示欲の暴走」はヘイトを集めやすい
自己顕示欲の表し方は人それぞれだと思います。SNSで仕事の成果をアピールする事で自己顕示欲を満たす人もいるでしょうし、周りに自分の能力をアピールする人もいると思います。これは放送作家の仕事だけでなく、どんな職業でもそうかもしれません。
でも、どんな自己顕示欲の表し方も構わないのですが、困るのは「業界に対するヘイトを集める」自己顕示欲の表し方、つまり『自己顕示欲の暴走』です。
放送作家はマスコミを目指す人にとっては、憧れの職業の一つだと言われています。そして放送作家が憧れの仕事であることの理由の一つに、『なり方がわからない』事が挙げられます。放送作家は、10人いれば10人、違う方法で放送作家になっていると言われるくらい、いろんな『なり方』があります。
でも、なり方がわからない職業なのに、一部の自己顕示欲の為に、なぜだかお金をたくさんもらっているように見え、すごく楽な仕事のように見えてしまっています。
働いてみれば、決して楽な仕事でも、簡単にお金が稼げる仕事でもないのですが、一部の自己顕示欲の暴走によって、不真面目な職業だと思われているのが現状です。放送作家という職業は、ヘイトを集めやすい職業なのです。
自己顕示欲の強い人は放送作家に向いている
放送作家は、人を楽しませる表現力に長けていると言われています。でも自分自身の自己顕示欲の暴走が、他人を不愉快にさせているという事実。誰かを楽しませる事のプロであるならば、自己顕示欲の暴走による影響くらい考えられるはず。自らの発言に責任を持つべきだと、私は思います。
このコラムを読んでいる同業者が何人いるかはわかりませんが、今回は常日頃思っている事を書いてみました。このコラムを書くことこそが自己顕示欲の表れだと言われたら、そうかもしれません。自戒も込めて、書いてみました。
…あ、そうそう。ちなみに、普段生活をしていて周りから「自己顕示欲が強い」とよく言われている人がいたら、放送作家という仕事をお勧めしてみてください。もしかしたら天職になるかもしれませんよ?