遺言状は元気なうちに書くのがオススメ 10分で書ける自筆証書遺言の書き方 - 村上 隆則
※この記事は2017年01月06日にBLOGOSで公開されたものです
家族が集まるお正月。離れて暮らす両親と、今後の人生について話し合った方も多いのではないでしょうか。
そんなお正月に合わせ、日本財団が1月5日を「遺言の日」として制定しました。発表会見では同財団の笹川陽平会長が「正月から縁起でもないという方もいるかもしれないが、家族が集まる機会はそう多くはない。元気なうちは『おやじ、遺言書いたか』と聞いても笑い話になる。家族と一緒に、残したい思いについて考えて欲しい。」と話しました。
日本では馴染みの薄い遺言、イギリスでは紳士のたしなみ?
「遺言」と聞いても、ドラマや映画の世界でしか見たことがないという人も多いはず。日本での遺言の普及率は3%ほど(日本財団調べ)と、広く世間に受け入れられているとは言えない状況です。
事実、年間の遺言書の作成件数は自筆証書(自身で書く遺言書)の検認件数が16,708件(2013年 司法統計)、公正証書(公証役場で作成する遺言書)での 作成数が104,490件(2014年 日本公証人連合会)となっており、日本の年間死亡者数約125万人と比較すると、まだまだ少ない水準です。
ところが海外に目を向けると事情が大きく異なってきます。英国では遺言の作成率は75歳以上で80%を超えているといわれ、まさに「紳士のたしなみ」の1つに。米国では遺言書率は50%ほどですが、生前に財産の名義を家族に移す「生前信託」の利用が盛んだといわれています。
相続トラブルを未然に防ぐ、遺言書作成のススメ
なぜいま遺言書の普及に乗り出したのでしょうか。日本財団遺贈寄付サポートセンターの長谷川隆治さんに話を聞いたところ「一昔前は長男がすべてを継ぐというケースも多かったが、現代では相続権を家族それぞれが行使するようになり、相続トラブルが起こりやすくなっている」とその理由を語ってくれました。また「子供を持たない世帯の増加により、思わぬところで相続トラブルが発生することも多い」といいます。
遺言書を作成した理由について日本財団が調査したところ、「相続争いを避けるため」「平等に相続させたいため」など、トラブルを回避する目的が上位に。遺言書を作成した時期については50代以下が過半数となるなど、現役世代が相続トラブルを未然に防ぐために遺言書を作成していることがわかります。
実はカンタン!?10分で書ける自筆の遺言書
「トラブルを避けるために遺言書が必要なのはわかった。でも書き方がわからない。」
そんな人のために日本財団では「自筆証書遺言作成キット」を無料で配布しています。マニュアルには財産のリストアップから書き方の手順、遺言書を保管するための封筒まで、自筆証書遺言を書くために必要な情報がまとめられています。
同センターによると「遺言は認知能力のある段階での作成が重要」とのことで、もしものことを考えると、家族が出来てマンションや家などを買ったタイミングで書くことをオススメしたいとのこと。自身の配偶者にのみ遺産を相続させるための遺言書はとてもシンプルで、その気になれば10分ほどで書くことができるそうです。
遺贈という遺し方
近年注目されているのが、遺産を社会で役立てるために寄付する「遺贈」です。自分の家族以外に遺産を相続する方法はまだまだ一般的ではありませんが、2011年の東日本大震災を機に、その件数は増加傾向にあるといいます。実際に遺贈を準備している人の声としては「寄付をするために無駄遣いが減った」「自分の遺産の使い途を選べる」といったものがあり、新たな相続の形として期待が持たれています。
日本財団は、Webサイトやキャンペーンなどで遺言書の普及活動を進めていくとともに、遺贈についても広く支援を行うとしています。
関連リンク遺言の日.jp 日本財団 遺贈寄付サポートセンター 日本財団 遺言書に関する調査(PDF)