※この記事は2015年06月14日にBLOGOSで公開されたものです

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12日、山崎拓氏(元自民党副総裁)、亀井静香氏(元金融担当相)、武村正義氏(元官房長官)、藤井裕久氏(元財務相)の4人が会見を行い、安倍政権が進める安全保障関連法案に反対を表明した。

4人は、かつて閣僚や党の要職を務めた経験に加えて、戦前生まれという視点から、安保法制関連法案について様々な意見が語った。

各氏の冒頭発言

山崎:今回の顔ぶれが揃いました経緯につきましては、元々御発声人が亀井静香さんでございますので、亀井さんからお話いただくことにします。古賀誠先生もご出席の予定でしたが、やんごとなき事情がございまして、出席しかねるということになりましたので、私共4人で参上いたしました次第でございます。

我々の共通点は、戦前生まれであるということ。藤井先生が現在最年長で、82歳になられるんでございますが、竹村先生が80歳。亀井さんと私は同年の78歳でございます。昭和11年生まれでございますので、戦争を間接的に体験した者が、この法案について申し述べるという形になろうかと思います。

かつて、自民党に籍を置いたものばかり。かつ、かなり幹部を務めてまいりました者でございますので。そういう立場の者が今日出席させていただいたと。そもそも論は、亀井さんからお話いただくことにいたします。

亀井:ご紹介をいただきました、あんまり評判の良くない亀井静香でございます。先日、古賀さんも入って、5人で「メシでも食おうや」ということで、意見交換をしたわけでありますが。

その時、5人の共通の認識というのは、日本が戦争に負けて以来、今、ある意味では最大の危機に直面をしていると。そういう点で、我々の気持ちは一致をしておったわけであります。今後、我々がジジイだからといって、こういう危機に黙っておるわけにはいかんと。そういう意味で、共同記者会見ということで、我々の想いを政治の場におられる方々、国民のみなさん方に発信しようということになりまして、今日になったわけであります。

ご承知のように、日本は戦後、国際的に、いわゆる普通の国ではない国でいくということを、国政としてきたわけでございます。それをいち内閣が、内閣だけで、これを変えてしまう。ルビコン川を渡る。そういうことにしてしまったわけであります。

当然ながら、ワニが出るか、サメが出てくるか、それを我々が制御することはできません。今、イカダで渡るのか、泳いで行くのか、色々と細かい議論を国会でしておりますけれども、どうですか、みなさん。相手は制御できません。相手が勝手にやってくるわけでありますから、必ず戦死者が出ます。

今、リスクがある・ないなんてことを言っておりますが、そんな生易しいものじゃない。戦闘行為をやって、戦死者が出るのは当たり前の話。出ないということはありえません。にもかかわらず、いち内閣がいち国会にそのことを、今議論をして決めようとしていますね。

しかもね、いち国会でそれをやっちゃえと。子どもが考えても、ムチャなことがまかり通ろうと、今してますね。ある意味では、国会議員だけで、国政を変更するようなことを決めるわけにはいかない。国会議員は、出てきたり引っ込んだり、そういう激しい移動もしている。内閣も出来たり潰れたりしている。こういう基本的な問題については、国民の意志を問うということが当たり前だと思います。子どもでも分かる常識です。それをしないで、国家の在り方、それをガラッと変えようとしている。

私ども、戦前に足を突っ込んでる政治家でもあります。この際、そういうことで参ったわけでございますので、後ほどみなさん方から、色々なジジイが決起しようとしているわけでありますから、「もうちょっとね、杖を使ったほうがいいよ」などのご指導をいただければありがたいと思います。以上です。

藤井:どこかのテレビで亀井さんと対談をやったことがあるんですよ。その時、アレを言えと。そのアレを言います。まず、機雷がどうだとか、ああいう話は極めて具体的過ぎる話でして、根っこは何かというと、去年7月の集団的自衛権だと思うんですよ。これがすべての根っこにあると思います。それから色々派生的なものが出ているんだと思うんですよ。

そういう意味から言いますと、「集団的自衛権ってなんだ?」っていうことから話をしなきゃならないんですが、それは端折ります。が、去年7月に自公体制でやった集団的自衛権の文章は極めてインチキなものなんですよ。新3要件っていうけど、あれは個別自衛権の話なんですよ。日本がもうどうにもならない時とか、それでも必要最小限だとか、単に方法がないとか。これは個別自衛権の話なんですよ。それでその頭に「他国が攻撃されても」とくっつけているだけなんです。これを入れることによって「集団的自衛権だぞ」と言おうとしているだけのことであって、私は極めてインチキな文章だと思っています。

あれは個別自衛権の話であるということを、まず申し上げられると思います。そこでですね、「集団的自衛権ってなんだ?」って話ですが、これは完全に対等な軍事同盟です。対等な軍事同盟が、集団的自衛権であるということをまず申し上げておきたいと思います。

日本は2回対等な軍事同盟を結んでいます。第1回が明治35年の日英同盟です。第2回が昭和15年の日独伊三国同盟です。この2回しかありません。戦後はありません。私、岸さん(岸信介元総理)の下にいたもんで言いますけど、日米安保をやったのが、これだと言うんですが、ウソです。これはウソです。

なぜかというと、アメリカは日本を守る義務がある。日本は土地を提供する義務がある。それができるかできないか。ウソじゃないかと、当時私たちも言われましたけど、そういう建前で出来ておりますから、決して集団的自衛権ではありません。戦後にやっている代表例がNATO条約なんです。

そこで集団的自衛権と言いましょうか、対等な軍事同盟の特徴があります。1つは、仮想敵国を必ず作ることなんです。これをまた安倍さんはウソを言って、「どこの国も仮想敵国にしません」って言うけど、これは集団的自衛権の本質なんです。仮想敵国を作るということは。

例えば、日本の戦前で言うと、日英同盟は旧ロシアを仮想敵国にしたわけです。本当は、日独伊防共協定から始まっている話ですから。なぜかといえば、当時のソ連を仮想敵国にするはずだったんです。ところが、駐独大使の大島と駐伊大使の白鳥がヒットラーに言われて、そうじゃねえんだと。民主主義国家もみんな敵にしちまえと言って、大ゲンカをやっているわけですよ。その時、外務大臣をやった有田八郎はそれで辞めているわけです。

要するに、仮想敵国は、本当はソ連だったんですが、現実には民主主義国家が、みんな敵になった。それがアメリカとの戦争になるということですね。

もう1つは、軍事同盟を結びますと、軍事同盟だけに関係しているものについて、それがやられた時には出ていかなければならないと。日英同盟の時は、地中海まで日本の軍艦が出て行っています。

それからNATO条約は、アメリカが入った時、どういうことがアメリカで議論されたかと言うと、ソ連が東ヨーロッパに侵入した時に、なんで俺たちが出なきゃいけないのかという話です。だけど、それね、結局入りました。従って、NATO条約はソ連が東ヨーロッパに侵入しても、アメリカは出ていかなければならない。そういう仕組みになっているわけです。

じゃあ、中国がこれだけ出しゃばってきた、肥大化したのに、どうやって対応するかという話ですが、私は同盟的な敵対的行動をするのは、決して良いことではないと思っています。

例えば、日米同盟が出来たとする。その時の仮想敵国は中国です。こういうやり方をすることが本当にいいのかというと、私は良いと思っていません。殴られたら必ず殴り返すんです。それが世界の常識であり、僕らの常識でもあるわけです。

だから、その対策はなんだといえば、やっぱり国連だと思うんです。「国連は機能してないじゃないか」と言われますが、人種であり、人権であり、あるいは貧困であり、そういう問題について国連は非常に役に立っているように思います。

国連の根っこは国際連盟ですが、作ったのはウッドロウ・ウィルソンですね。この人は、第一次世界大戦というのは、セルビアとオーストリアの戦争だったんじゃないかと。2国間の話が、なんで世界戦争になったんだと言うことを話しております。その結果として、どうなったかというと、2国間の同盟とか、同盟に近い仲良くするやり方がダメなんだと。だから、国際連盟的な国際機関が大事なんだと。そういうことを言ったのが、ウッドロウ・ウィルソンです。肝心のアメリカが入らなかったというのは、実に変な話ですが、そういうことでございますね。

それからアメリカの話ですが、私は完全に、アメリカは肩代わりを求めていると思います。肩代わりというのは、俺たちだけで世界警察官はダメだと。これはもうアメリカ人の意識ですよね。「なんでイラクに行った俺の息子が死ななきゃなんないのか」と。こういう話がずっと出てきているわけですから。「おい、少し日本がやれよ」と。この話に尽きていると思います。

本当のことを言うと、経済でも肩代わりを求めています。アメリカは金融のバラマキをやめて、日本に金融のバラマキを続けさせようということですから。2つの肩代わりを求めていますが、経済の話は今日はやめます。やめますが、肩代わりだということです。

アメリカが書いたものがあるんですよね。これは日本に出てこないんだけど、安倍さんが来たら、これだけは言うべきであるというのがあるんです。1つ目に、彼は非常に間違った歴史修正主義者であると。これを直すような発言をしろ。2番目、じいちゃんの岸信介は周りと仲良くすることによって、俺の国は発展したと。それをやらなきゃダメじゃないかと。今までは、中国と韓国と仲を悪くしながらやってきたねと。これを言っております。

3番目に「自分の意見を言うな」と。日本国民の代表的意見を言えと言っています。その例として、私はこの話をあまりしたくないんですが、天皇・皇后を見ろと。沖縄へ行かれたと、サイパンに行かれたと、ペルーに行かれたと。私たちはこれが、日本国民の代表だと思っているんだと。そういうレーガンの文章があります。

こうした観点から、私は亀井さん、あるいは山崎さんが言われた「こんなことをやってたら、日本は本当に間違った道を歩む」ということで、ここに参加させていただいております。

武村:もう80歳になりましたが、まだ生きています。琵琶湖のほとりでのんびり過ごしているつもりでございますが、やっぱり東京の政治の動きが気になります。たまたま亀井さんに誘われたから、今日はのこのこやってきて、みなさんの前に立っております。

ペーパーを配りましたので、私はこのことを簡単に申し上げるだけであります。とにかく安倍さんは、70年続けてきた日本の平和主義をガラリと変えようとしていると思います。海外で武力行使をしないはずの日本を、行使できる国に変えていく。これは、外国の戦争に日本がいよいよ巻き込まれていくということであります。

これまで国防の大黒柱としてきたのは、ご承知のように、専守防衛という考え方であります。これが崩されようとしています。日本は専守防衛を貫いてきたことによって、世界の多くの国々から高い信頼を得てきたという風に思います。また、専守防衛こそが、日本の最大の抑止力ではないかとさえ思っています。歴代内閣は憲法上、集団的自衛権を行使できないという考えを貫いて参りました。これを、一定の条件をつけながらではありますが、安倍さんは変えようとして、新3要件を発表されました。

しかし、極めて表現は曖昧で、わかりにくいです。そして、時の政権によって都合の良い解釈が行われる可能性が高いという風に思います。また、アメリカなどにいわゆる協力をしていく後方支援についても、これは極めて高いリスクを追っている。戦っているアメリカ等に対して、弾薬や戦闘機の油などを日本の自衛隊が運ぶことは、兵站活動そのものであります。これこそ、相手国から見れば、格好の攻撃対象になるわけでありますから、極めてリスクが高いと言わなくてはいけません。

さらに加えて申し上げれば、今回の安保政策の進め方の問題でありますが、一貫性がないし、何か荒々しい感じがします。そもそも総選挙の時には、安倍さんも自民党も集団的自衛権の導入は憲法改正を前提に考えていたのではないか。

選挙で大勝したら、すぐに憲法96条を変えようと。発議条件を緩和して、手っ取り早く取り組もうという考え方が出ましたが、これは世論の反撃にあって、すぐに引っ込めました。その後出てきたのが、もっと安易な礼儀的な道である、閣議による解釈改憲という道でありました。

いずれにしましても、国の基本的な形を変える大きな政策が、論議が未成熟なまま、何もかも一挙にケリをつけられようとしている感じがします。このことに国民は大きな疑問を抱いているし、国民世論が納得しないままで、一方的に強行採決をするのであれば、これは大きな禍根を残すことになるだろうと思います。

私は3つのことを提案したいと思います。1つは存立危機とか国民の様々な大事な権利の侵害に対しては、藤井先生もおっしゃったように、個別的自衛権の幅の中で、その運用で対応が可能ではないかということでございます。

もう1点は、近隣諸国の安全保障環境が変わってきていることは認識せざる負えませんが、これまで、我が国の自衛力はGDP1%にとどめてきたわけです。けれども、これを超えることがあってもいいのではないかと。要するに、自衛力を強化する道を選ぶことがあってもいいのではないかと思っています。

3番目は、それでも集団的自衛権の導入が必要であると考えるならば、正々堂々と国民投票を前提にした憲法改正の道を歩むべきではないか。この3点であります。

山崎:私は、10日ほど前に、この場で私なりの安保法制に関わる意見を述べさせていただきましたので、簡潔にお話申し上げたいと思います。

お三方の陳述と大いにだぶるのではございますが、今回の安保法制の改正につきましては、大きなポイントが2つございまして、1つは集団的自衛権の行使を容認することによって、そのための法整備を行うことでございます。

もう1つは、集団安全保障の分野に入るわけでございますが、自衛隊の活動の舞台、あるいは活躍といっていいのかもしれませんが、舞台をですね、地球規模に広げること。この2つが大きな柱になっていると思います。

もっぱら集団的自衛権の行使容認のほうに、今回の法整備の眼目があるという受け止め方が、最近の憲法審査会における参考人の陳述ということもございまして、そちらの方に再び関心が集中してしまっています。

しかし、そういう集団的自衛権の行使容認問題をきっかけにいたしまして、自衛隊の海外活動の強化ということのほうが、あまり議論されなくなっていると。私はこの2つが何のために行われるのかということについて、安倍総理のもっとも好んで使うフレーズといたしまして、「積極的平和主義」というのがございます。

この積極的平和主義の名のもとに、安保法制の改正を進めているように思うんでございますが、積極的平和主義の確たる定義はございませんで、現在でも我が国は積極的平和主義の立場を取っていると思うわけでございます。

まさに平和主義に徹していると言ってもいいわけではございますが、その裏付けとなっております憲法上の理念が第9条に書かれていることでございます。それにも関わらず、積極的平和主義でなければ、国際軍事情勢の変化に対応できないという、かなりムリな理屈ともうしますか、説明が行われていると思うわけでございます。

積極的平和主義というのは、なんであるかということを、私なりに考えてみると、先ほどから申し上げているように、軍事力を我が国の平和貢献のために、あるいは国際平和の構築のために、使おうじゃないかと。これが積極的平和主義の“積極”という部分に当たるんじゃないかという風に考えるわけでございます。

国際軍事情勢の変化というのは、いくつか挙げられているわけでございますが、中国の軍事力の膨張と海洋進出。これが挙げられていると。私は1990年か2000年当時、前回の日米ガイドラインの2回目の改訂に基づく、周辺事態法、ガイドライン法とも言いましたけれども、その特別委員会の委員長を務めました者でございます。

あの時は、日米防衛協力のガイドライン周辺事態法と読んだんですが、地理的概念ではないと説明したんですけれども、実際は地理的概念に他ならないものであります。つまり、北東アジアの平和と安全のために、米軍が日米安保条約もありまして、活動してくれることに対して、我が国としての支援を強化しようということでございます。

具体的には、朝鮮半島事態と、台湾海峡事態。この2つが前提にございまして、北東アジアの安全を阻害する大きな軍事的な動きになるという風になると踏まえたものです。我が国はその時に、米軍が我が国の軍事施設のみならず、一般の民間の空港も含めまして、安保条約に基づいて出動するということについての支援体制を強化しようということだったわけでありますが、後方支援という言葉を使いませんでした。

我が国の武力行使とアメリカの武力行使が一体化することにならないよう、「後方地域支援」という言葉を、わざわざ法律の中でも使いましたわけで、「後方支援」という言葉を使っていない。

今回は、「後方支援」という言葉がふんだんに出てくるわけでございまして。こうした言葉を使っているということは、我が国が事実上の武力行使をやると。あるいは、戦闘行為に加担するという意味合いのものでございます。

それが存立危機事態におきましても、後方支援を行うことになっておるわけで。この後方支援というやつは、実際に戦闘が行われている地域ではなくて、そこから離れた場所にあるという説明になっておるが、戦闘区域が移動して危険が迫れば、後方支援活動も移動するということでございます。しかし、そんなことは事実上できません。

兵隊を自由自在に動かすこともできないし、後方支援活動を行っている自衛隊が、いかなる装備を持っていくかということは一切説明がございません。重装備になることは間違いなくて、それを自在に動かすことはできない。戦闘地域が移動すれば、弾薬も一緒に持ち運んで移動する。そういうことは、簡単に出来る話ではございませんし、遠くに行ってしまえば役に立たないということになるわけでございます。

そういう意味において、積極的平和主義の名のもとに行われる、自衛隊の地球の裏側まで行って、後方支援活動をやるというのは、詰まるところ、武器の行使と武力行使は違うとか言いましたけど、武器の使用をやり、武力行使をやり、戦闘行為をやると。

明らかに憲法違反になる行動を惹起するものであると。冒頭に亀井先生がおっしゃったように、必ず自衛隊が自ら血を流し、相手方にも血を流させる。殺し殺しあう関係になるということは間違いないわけでございますから、そういう意味において、我が国の基本的国則である平和主義というものを貫いて参りますためには、今の現行法を整備することによって十分対処しうると。

具体的なやりとりに対しまして、南沙と東沙。東シナ海と南シナ海の話が最近盛んに出てくるわけでございますが、これは、周辺事態法のカバーする範囲内の話でございます。

それから、マラッカ海峡の話が別途が出てくるわけでございます。これをもって存立危機事態を脅かすものであると言いますが、これも大いに議論のあるところでございまして。この議論はとりあえず避けますけども、要するにほとんど必要性のない法改正であると思います。現行法で十分対応できるものであると。

国際軍事情勢の変化の名のもとに行われようとしているけれども、国際軍事情勢の変化というのは、中国の軍事力の膨張と海洋進出。それから北朝鮮の核戦力の着々たる整備ということがございますので、これにどうやって対処するのかということは、まさに個別的自衛権の範囲内のこと。私は現行法の整備を行えば十分じゃないかと考えるわけでございます。
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質疑応答

-この法案のこれからの見通しなんですが、亀井先生は先ほど、国民の意志を問うべき課題であるという風におっしゃっていたけれども、現実に進んでいるのは、国会を長期延長して、何が何でも今国会中にケリをつけようという動きが少なくとも政権中枢では進んでいるような印象を受けています。

じゃあ、この状況下で、この問題がどういう風に転んでいくのか。その見通しと、どういう形で収めるべきなのか。政局のチャンピオンみたいなことを、これまで散々やってきた亀井さんの目からみて、この政局の行く末と、収拾する知恵を一言だけお願いできませんでしょうか?


亀井:私にそんな知恵なんかありませんけどもね、晋三総理は最終的にムチャなことはしないと思います。もしやれば、自滅状態になりますね。国民がどのメディアの世論調査でも、今やろうとしていることを支持していない。これは明白な状況ですね。

そういう状況の中で、この国会で強行採決など出来るのでしょうか。そういう形で突き進んでいった場合は、反対世論というのはもっと大きくなるんですね。これがやむことは、私はないだろうと思います。

そういう中でやっても、やはり選挙の時期を延ばすことはできない。参議院選挙もあるだろうし、衆議院選挙も、いずれやらなければいけない。その時には、もう厳しい審判を受けることは当然の話。かつて自民党も選挙で270~280の議席を取っていたのが、あっという間に政権の座から滑り降りたでしょ。

私は安倍総理が、そんなに愚かではないと。国民の意志は、色んな形で分かるわけですから、そういう中で、自分の志と違うかもしれないけど、そういう道を、彼は総理として選ぶことはないだろうと。

それとね、この議論が進んでいく中で、リスクという言葉が出てきてますけどね、戦死者が出る、傷病者が出る話なんです、これは。自衛隊員が戦死する話なんですよ。今の自衛官に、その覚悟がありやなしや。本当に基本的な問題ですよ。国会議員が戦うわけじゃない。国民が行って全部戦うわけじゃない。

また、そういう状況を、国民が認める覚悟があるかどうか。自衛官がいて戦死をする覚悟があるかどうか。それをね、すっ飛んじゃって、国会だけで決めたところでね。出来もしないけど、その前にNOの答えが必ず出てきますよ。また今の安倍政権というのは、薄氷の上に成立しているんですよ。

だって、派閥が作った総理じゃないでしょ。どの派閥が総理をやったんですか。右バネが利き出した中で、周りにおる連中が、それを使ってね。本人もなれると思ってなかったの。いわば、風ですよ。風でなったの。

こんなことをやっていて、風が吹き続くなんて、私は総理が思うほど愚かではない。ついでだから、具体点をちょっと言うと、中国がドンドンね、あんなやっちゃイカンことを国際社会でやろうとしているけれどもね。

それじゃ集団的自衛権を認めて、外国でアメリカを助けるということをやれば、報酬を出せば、中国は南沙じゃなくて、日本を攻めることをやめたということになりますか?

-抑止力になりませんか?

亀井:今までの日米安保の下で、アメリカの日本を守るという姿勢が、集団的自衛権を認めたからやばいといって、中国が自制しますか?そういうことはあり得ないですよ、これは。

だからそういう意味では全くナンセンス。アメリカはアメリカの判断で、世界中に対応しているわけで、日本に対して、同盟国であっても、同盟の在り方は、アメリカはその時に、自国の利益を考えながらやる話なんですよ。そんなことは中国は十分承知していますね。だから、ナンセンスなんですよ。そういう意味ではね。

-自民党の新しい坊っちゃん世代をこのまま放っておくと、日本はおかしなことになってしまう。みなさん方が、もう一度踏ん張って、党を変えていただきたいと思っているのですが、藤井さんいかがでしょうか?

藤井:私は今、自民党員ではないので、直接お答えはできませんけれども、昔の自民党と随分変わったと思っています。そしてまっとうな人はここにいらっしゃるし、もっと他にもいらっしゃいます。

亀井さんと以前一緒にやった時も「マグマがものすごい溜まってるよ」と。私もそういう認識を持っています。私も元自民党ですから、自民党の人と非常に付き合いがありますが、亀井さんの言われたように、マグマは溜まっていると思います。それが表に出てこないということは、いずれテロだと。

昭和7年の井上日召の話です。あの井上日召のような、思想家は別として、リーダーであると、そういう動きが一気に出てくるんです。あの時は格差だと思います。井上日召が團琢磨とか井上準之助を殺したのは、格差だと思いますが、何かの形で、思想的な人間が出てきますと、マグマというのは突然出てくるというのが、私の歴史的認識でございます。

-4人全員にお聞きしたいと思います。それぞれが、印象深いご自身の個人的な戦争体験を語っていただきたいとの、自民党が変わってしまったという話もありましたが、どう変わったのか。あと、国会論議も含めてどう変わってしまったのか。その理由はなんなのか。お聞かせください。(時間の都合で、山崎氏と亀井氏が返答)

山崎:私は旧満州の大連で生まれまして、上海で幼少期を過ごしまして、終戦の直前で引き上げて参りました。中国との関係は、自分の出生時の関係もございまして、特別な親近感を持っているわけでございます。

当時、我が国が中国大陸において振る舞った行為は、幼少の時ではございますが、自分で体験しておりまして、確かに傲慢だったなという感じがいたします。国会議員になりまして、生まれ育ったところを訪ねてみたんです。

簡単にいえば、日本租界にいたわけでございまして、かつておりましたアパートに私が行きましたのは、1990年当時でございましたが、中国の方3世帯が、そのままのまま住んでおられました。そういう時代でございましたが、日本がかつて軍事力を背景といたしまして振る舞ったことについて、戦争体験と申しますか、反省の気持ちを持っているということでございます。

それから帰りまして、すぐ先妻に会いまして。私は福岡出身でございまして、空襲が昭和20年6月15日にございました。当時、小3でしたが、天井を突き抜けて焼夷弾が枕元に落下してまいりまして。それは不発弾だったので、命は助かったのでございますが、慌てて飛び出して、すぐ近くの山の上に上がりましたら、福岡市全体が燃え盛ってるという状況でございました。

翌日、恐恐と街に出かけて参りましたら、体の一部が欠けている遺体がゴロゴロしていまして、真に目を背けるような状況が市街地に展開しておりました。そういうことが私の戦争体験になるわけでございます。そのあとすぐに敗戦を迎えたわけでございますけども、戦争をやらない国に今なっていることについて、本当に尊いことだと思っております。

その後70年間、我が国が、一切侵略を受けることもなく、この戦争を通じて、自衛隊を使用することなく、使用させることなく、この平和な時代を過ごしてきた。この平和を守らなきゃいかんという気持ちでございます。

亀井:子どもの頃に、戦争負けちゃったわけですから、具体的に私自身が戦争そのものによっての直接の被害を受けて負ったわけではありません。ただ、原爆が落ちた時の記憶は残っています。私の小学校は高台にありましたが、校庭が全部イモ畑でして、その作業をやりに、学校に来ておったわけですが、ピカっと光って、大変な地響きがして、その後、焼けただれた人が私の村にもドンドン帰ってくる状況はつぶさに見ました。

また、私の姉が女学生でしたが、翌日から学徒動員で広島市内に入って、そして、後遺症が残りました。もう亡くなりましたが、姉はのちほど俳句雑誌を作っていましたので、私の庭に広島市長に杭を立ててくれたので、覚えていますが「白血球 測る挽歌の 乾きかな」という俳句を残して死んでおります。

白血球が上下を始めて、とうとう命を取られたわけですけども、放射能が人体にどういう影響を与えるかということは分からないです。今もそうですよ。世界中の学者でわかっている人間はおるはずがありません。

戦争に負けたら、ただちに米軍が広島市に駐留して、最初にやったことはなにかといいますとね、比治山にABCC(=原爆傷害調査委員会)の現場研究所を真っ先に建てましたね。治療じゃないんですよ。被曝した人達をドンドン連れてきて、データを取ることを一番先にやりましたよ。

全国の他のところは、B29が来て、どんどん爆撃してるでしょ。それなのに、広島にはしなかったんですよ、原爆を落とすまでは。きれいなままで原爆を落として、その測定をしたんですよ。それで日本人というのは、「過ちは再び繰り返しませんから」という碑を広島に置いてありますけど。そういうことも体験といえば、そうかもしれません。

私の家はダムの予定地ですけどね、朝鮮の方々が、そこにまでおいでになりました。簡単に言うと、悲惨なご生活をしておられましたね。差別ももちろんありました。韓国との関係、北朝鮮との関係を含め大事なことは、日本がやったことについて、やった方はいいことをしているじゃないかと。

でも、やられた方はその傷が残るんですよ、いつまでも。私は被害者と加害者の気持ちの上のギャップ。これを考えないで、村山談話の見直しだとか、色々な問題を、私は取り上げるべきじゃないと思います。

国家は極めて、国同士で残虐なことをやります。日本だけじゃない、どこの国もやる。そのことを何も、「そんなひどいことはしない」とか、理屈をつけていくべきじゃない。日本民族も万全じゃありません。間違いを犯すこともあるんです。「1回ぐらいお詫びしたからいいじゃねえか」というのは加害者することです。今日のテーマと違うかもしれませんけどね、そういう思いを私は抱いておりますね。

-沖縄では、この安保法制が進められることによって、米軍基地があることで、戦争の攻撃対象になるんじゃないかというような懸念も広がっているんですけれど、その中で米軍の普天間基地の飛行場が名護市の辺野古に移設されるということもありまして、それに関しては、山崎さんどうお考えですか?

山崎:沖縄問題につきましては、安保法制との関連でお話がありましたんですけど、今おっしゃった米軍基地がある以上、攻撃の対象になるということは、安保法制の有無に関わらず、(現在の)安保条約がございます。なくても対象になることはあるでしょう。例えば、日本と中国が戦うということになれば、当然対象になると思います。

安保法制との関連をあえていえば、私は今度、安保条約の見直しが、今回の議論の対象になっていないことを不思議に思うわけですが、今までの取り組みと違うところがあるとすれば、安保条約では、第6条におきまして、米軍は極東における平和と安全のために活動する、貢献することになっております。その代わり、我が国は、基地を提供すると。その基地が沖縄県名護に集中している。それはあくまでも極東に限定されておりまして。橋本・クリントン会談におきまして、この極東の範囲をアジア太平洋地域に広げました。

先ほど、南沙の話がありましたが、ここはアジア太平洋地域の中に入っておりますから、現在の自衛隊軍の対象範囲になるということを説明いたしました。ところが今回、仮に安全保障法制が今のような法案の内容で決着がつくとすれば、地球の裏側まで、極東の範囲が広がっていくわけでございます。これは当然、安保条約の改訂になるはずのものでございます。その議論は一切ないと。

これは安保条約と関係ないものであるという説明が行われているわけでありますが、第三次のガイドラインに基づいて整備されているもう1つの柱がございますから、それからすると、その説明はおかしいという風になるわけでございます。

それから安保条約はという指摘がかねてからございまして。つまり我が国は、個別的自衛権しか行使しないと、集団的自衛権は行使しないと。アメリカは我が国に対しまして、集団的自衛権を行使するということでございます。砂川判決はそういうことが書いてないけれど、そういう意味だと。アメリカの集団的自衛権行使の話だという風に私は思うわけでございます。

そういう片務性があるから、我が国は基地を提供している、政府区域を提供している。それでバランスをとっているというという解説が行われてきたわけでございます。今回は、集団的自衛権の行使を行うわけでございますから、我が国も集団的自衛権を密接な関係のある国・アメリカに対して、これを行使すると。

この密接な関係である国という定義がございませんで、これが問題点の1つでございます。先週、中国に行きましたら、「中国とは密接な関係である国ではないのか?」と中国から言われましたわけでございますが。これは向こうも冗談で、言ったんでございますけれども。

そういう問題点もこの法律にあるんですけれども、いずれにしろ、アメリカといたしましても、密接な関係のある国といたしまして、我が国の集団的自衛権の行使を行うということで、対等になるわけです。

施設区域の提供は、日本がしなくてもいいという理屈がそこから出てくるわけでございますので、沖縄問題を考えるうえで、ここは1つの論点になるという風に、私は考えておるわけでございます。米軍基地は、我が国の抑止力として必要なものであることは、屁理屈を言えば、そういう理屈も出てくるということでございますので、今回の安保法制改正と関連を言われれば、そういう問題点があるということをお答えしたいと思います。

-結局、今の自民党内部は、何も反対できないようになってしまったのかという理由についてと、それを変えていける見通しはあるのか。これについてお答えください。

山崎:今の自民党は一期生・二期生が大半がございまして、安倍総理は昭和30年生まれでございますが、ことごとく戦争を知らない世代であって、平和と安全が空気や水と同じように、無償で手に入れることが出来るものであるという感覚を持っている世代であると。

そういうことがあって、ほとんど安全保障問題に関心がないと。おまけに小選挙区制度だと、2分の1の有権者が強く関心を持つ分野に、特に力を入れて政策を訴えていくということになる。最大の関心事は社会保障であると。あるいは経済であると。教育であると。これは3大分野だと思うんですけれども、そういう問題を選挙のキャンペーンの中で訴えていくということになるので、安全保障の問題を訴えて票になると思っている人はいないということでございます。

だから、無関心になると。勉強をしないと。そういうことなので、この安保法制について、ほとんど党内で議論が成り立たない状況になって、一部専門家である我々の世代に近い方の中に、若干名分かっておる方がいるので、その方がリークしている状況になると。そういうことでございます。

亀井:これはね、国会議員だけじゃないの。マスコミ自身がそうなってるの。言いにくいこと言うけどね、私は自主規制がかかっていると思いますよ。私も長い間、政治家をやっていますけど、大変な自主規制がかかってますね。言論の自由が事実上、尻すぼみじゃないですか。

今日は良識がある方々が集まられると思うんですけども、そうなったら北朝鮮と同じじゃないですか。権力でモノを言わせないのと、自主規制で自分たちがモノを言わなくなってるのと、同じように言論の自由を社会から減らしていくんですよ。

私なんかの子どもの時も、言論の自由は無かった。ないですよ。北朝鮮と一緒だった。今の日本が、戦後こんなにマスコミ自身が自主規制をかけながら、この問題に対して、報道している時はありませんよ。これをみなさん方に言うのは、どうかと思うんですけども、この先、国が滅びますね。ちょっと腹が立ったから言ったんですが。

-山崎拓さんにお伺いしたいですけれども。こういった法案の進め方1つとっても、かつての自民党というのは、保守とリベラルが本当に幅広い議論が出来て、お互いを牽制し合いながら、今の日本を作ってきた部分があると思うんです。

今の安倍自民一強体制に対して、ちょっと声があげづらい、活発な議論が出来ていないんじゃないかという指摘もあるんですが、そのあたりについて、今どうお感じになっていますか?


山崎:仰るとおりだと思います。非常に(声を)あげづらい雰囲気になっていまして。1つは、あげるべき声がないというのもあるんではございますが、非常に、ヒラメ状態になっていて。ヒラメ状態というのは、みんな上を見てるということでございますが。

今、安倍政権の権力にひれ伏して、うかつな声をあげると、出世の妨げになるという面もかなりあると思うわけでございます。

-みなさんに一番お伺いしたいのは、なぜ今、集団的自衛権をこれほど急ぐのかと。本当に憲法改正して導入したいのであれば、解釈改憲ではなくて、改憲手続きを減ればいいですし、今ほどの支持力があるのであれば、それをするのも可能であっただろうに。

これほど急ぐのは、一体誰が進めているのか?安倍総理なのか、それとも周辺の誰かなのか。イマイチここがよく分からないので、みなさんご存知でしたら、ぜひ教えていただきたいです。(藤井裕久氏を指名)


藤井:これ、分からないんですよ。だけどね、安倍さんはアメリカに行ったでしょ。歓迎はされてないんですよ。独特の歴史観を持っているということは、アメリカにとっても許していないんですよ。

しかし、それなりにウエルカムとしたのは、なんだといえば、安倍さんはアメリカの望んでいることにOKをしているということなんですよ。その望んでいることっていうのは、なんだと。さっき少し申しました。2つです。

1つは、世界の警察官の半分ぐらいをやってくれと。半分と言わないにしろ、ある程度やってくれ。もう1つは、アメリカの方だって、こんなに超金融緩和をできないんですよ。そしたら国が潰れるんですから。少し日本にやらせろと。そうすることによって、世界にばら撒いたカネを、いきなり引き上げるのは日本にやらせようと。この2つだと思いますね。

つまり今のご質問から言いますと、前者の話ですが、私はそういう力が働いたと思います。そして、安倍晋三という人が安易に乗っかっているんだと。こういう風に考えています。

-安倍政権が進めている安保法制に関して、合憲か違憲かという議論が国会でも盛んに行われていますが、そもそも議論として、立法事実として、それだけの必要性があるのか。そういうことについて、立法事実があるのか、ないのか。

武村:先程も話しがありましたように、憲法9条一項、二項とありますが、ご承知のように、国際紛争を解決する手段としての戦争放棄や武力行使をやめるということを宣言して、そのために戦力を持たないということを明確にしているわけであります。

ですから、集団的自衛権はもう、そこの項目を素直に読んだだけで、国際紛争を解決するためにこそ、集団的自衛権は発動はされる。そのように認識をするならば、憲法はそれを明確に否定をしているという風に、我々は理解をしなければならないと思っています。

-自衛隊派遣ということで言いますと、12年前のイラク戦争があると思うんですけど、イラク戦争の教訓というものを安倍政権がどのように捉えていると考えられるのか。特に、小泉政権時代に深く関わっていらっしゃった山崎さんにお伺いできればと思います。

山崎:イラク戦争の教訓について申し上げれば、私は朝日新聞に記事を投稿させていただいたんですが。「行き過ぎがあった」という表現にいたしました。それは、2003年当時、3月20日にイラクへ米軍を中心として侵攻を開始したわけでございますが、その前の2月に、当時のパウエル国務長官が来られまして。私は自民党の幹事長でございましたが、公明党の冬柴幹事長と、今をときめく総務会長である二階さんの3人でアメリカ大使館でお話を聞きました。

パウエル国務長官が強調されたことは、イラクに大量破壊兵器があると。この大量破壊兵器の存在が、この地域における安定性を著しく阻害していると。従って、これを除去しなければならないということ。それで、この地域の平和と安定はなんぞやと伺った時に、それはイスラエルの危機であるということを漏らされました。

そういうことでございましたので、私はストンと落ちましたわけでございます。なぜかというと、アメリカにおけるイスラエルロビーの力を私なりに感じていました。日本アラブ友好議員連盟の事務局長も経験していましたので、アラブ対イスラエルという対立構造の中で、駆け出しの頃の外交会議にも出ていました。その感覚があるわけでございます。

それはそれとして、日米関係を遵守する観点から、アメリカの考えも理解できるから、小泉総理に我ら3党幹事長で、ブッシュ大統領の要請に進言しようと。その要請は、アメリカの開戦に同意するということなんですが、進言をいたしましたわけでございます。

その後、イラク特措法の作業にも当たりましたが、今のご質問からいうと、その結果、「自衛隊を売ってくれ」ということになって、サモアというところに、自衛隊の基地を作りまして、人道復興支援を行いました。後方支援を行ったわけではございません。人道復興支援を行うと。

つまり当時の認識では、自衛隊の海外派遣は許されるが、海外派兵は許されないという厳然たる線引きがございました。今度の法案で海外派兵が行われるということになりますから、ここは問題でございます。重大問題でございますけれども。然るに、大量破壊兵器があったかどうかということでございますけれども、なかったと。

パウエル長官は後日談で、自分の人生の中で、最大の判断の誤りだったと。CIAの申告を信じたのが間違いだったと実感しておられるわけでございますが、それがそののまま我々の間違いになったわけでございました。

イラク戦争に対しまして、我々は復興人道支援ということに留める意味合いにおきまして、協力をいたしましたわけでございます。そのガイドラインが無かったということが、こちらサイドの問題でございまして。

そのあと停戦いたしましたので、今度は何を大義名分にしたかといいますと、米軍のほうで、専制政治の除去という形に変えました。それで、結果的には、サダム・フセインを見つけ出して処刑いたしました。その時の閣僚が現在のイスラム国のバクダディでございますから。バクダディは捕まって、それから投獄されて、処刑にはならなかったわけで、かなりリンチを受けまして、脱獄した結果、現在のアメリカを怨敵とするイスラム国を作って、今活動していると。

その辺のところは、アメリカにイスラム国の製造責任があるという言い方を、私はあえて、多少面白みも加えて言っているわけでございますが。その製造責任のアメリカに加担した日本にも責任があると。まあ、小泉総理が一番の連帯責任者であるが、同時に我々3党幹事長も、連帯責任の責めを負うと。

今度の安保法制が整備されると、私が非常に恐れることは、対イスラム国に自衛隊が動員されるということでございます。後方支援という体裁を取ると思うんではございますが。それがなくても、今、イスラム国はイスラエルをやっつけるという宣言をしておるんでございますが、歴史的にイスラエルと中東諸国の対立は、解消できない根深いものでございますので。この中東紛争というものに、日本は軍事的に関わってはならないと。

湾岸戦争のトラウマと言うけれども、あの時は参戦せずに、お金だけ出して、バカにされたということになっておるが、私はあれでよかったと思うんでございます。終わったあと、ペルシャ湾の奥まで行きまして、掃海活動をいたしましたから。

あれは現行法で行ったわけでございますので。少なくとも、今ホルムズ海峡の問題になっているけれども、現行法で掃海活動は出来るという前例を作っている。もちろん、戦争が終わりましたあとでございます。戦争中に掃海活動に行く手はないと、私は思うわけで、現行法で十分じゃないかと。