※この記事は2015年06月12日にBLOGOSで公開されたものです

12日、公明党の山口那津男代表が会見を行い、安全保障法制の意義や公明党の立場を説明、国民に理解を求めるとともに、あくまで今回での成立を目指すとした。記者からは先週の衆院憲法審査会で3人の参考人がいずれも法案を「違憲」としたことについての質問も出た。

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冒頭発言

まず最初は、安全保障、今の平和安全法制に関係して、公明党の基本的な考え方を述べたいと思います。

公明党はこれまで、憲法が掲げる平和主義、交際協調主義の精神に基づいて、外交努力による紛争の未然防止と平和的解決、また国際社会の平和と安定への積極的な貢献に取り組んできました。
行動の伴わない観念的な平和論ではなく、着実かつ具体的平和を創造していこう、というのが、公明党の掲げる、"行動する平和主義"という考え方です。

何点か、具体的な要素を申し上げます。

まず一つは、我が国の外交・安全保障の基軸である、日米同盟を重視するということです。

二点目は、中国・韓国をはじめとする、近隣諸国との関係強化に積極的な役割を果たすということです。

三点目は、唯一の被爆国として、核廃絶、不拡散への取り組みを主導するということです。

四点目は、貧困、飢餓、感染症などから生命・生存を守る、"人間の安全保障"分野における貢献を果たすということです。

大きくこれら四つの視点から、平和国家に相応しい役割を追求してまいりました。
とくに中国との関係について申し上げれば、公明党は長年にわたり築いてきた強固な信頼関係を基礎に、議員間交流など、公明党独自の対話外交を現在も継続しています。

現在、国会では平和安全法制が議論されていますが、この議論に至るまで、冷戦終了時以来、およそ三つのステージを経て、様々な法制度が議論されてまいりました。

いずれのステージにおいても、公明党は与党であれ、野党としての立場であれ、立法過程に深く関わって、憲法の範囲内で自衛隊の役割、日本の役割に相応しい制度をその都度作ってきました。

最所のステージは、1990年から93年にかけてでありますが、冷戦の終了後、潜在していた地域紛争などが顕在化する中で、我が国は今の憲法についての基本的な考え方を国会審議を通じて確立しました。

憲法の基本は、武力の行使をしない、また、武力の行使と一体となる行動もしない、というのが大原則であります。

最所に作った法制度はPKO協力法でありまして、ここでは"参加5原則"というものを公明党が強く主導して作りあげた、最初の制度でありました。

今日まで13の活動で延べ1万人の隊員が活動をしました。法律を作った当初は憲法違反だ、あるいは戦争に巻き込まれるという批判、今よりももっと激しい運動が繰り広げられましたが、今日では国民にも、また国際社会にも高く評価されております。

第二のステージは、21世紀の初め頃、いわゆる有事法制を作った頃でありました。
近隣国の中に、弾道ミサイルを開発し、日本を狙って発射してくるという国が現れたことによる、日米安保条約をもっと機能させる、そういう法制度が必要とされ、有事法制の体系を作りました。

このときの憲法論の到達点としては、日本の領域、つまり領土、領空、領海に対する武力攻撃に反撃する武力行使が許されるという原則でありますが、例外としてこの領域を超える公海上でも、日本に対する武力攻撃の着手の行為があれば対応できる、という考えが示されました。
同時に、日本以外の他国に対する攻撃であっても、それが日本に対する攻撃の着手と見られれば日本が反撃することができる、という考えも当時作られました。

当時と比べて、今日はこの安全保障の環境はますます厳しいものとなってきております。
日本人が巻き込まれるテロが多数起きてきている、あるいはスクランブルの緊急発進が格段に増えてきている、また、経済力を付けた国々の軍事プレゼンスが拡大してきている。そういった現象であります。

こうした環境変化に対応するために、今回の法制は平時から有事に至るまで、日本の平和と安全を守るために法制度を作るということ、それともうひとつは、国際社会の平和と安定により一層貢献できるということ。これらの点で、体系的に幅広く、隙間のない法体系を作った、ということです。

憲法の制約がありますので、いわゆる日本の武力行使は自国の防衛ためにのみ使えるという限界を画すと同時に、もっぱら他国の防衛のために武力を使うことはやらない、ということをはっきりと決めました。

日本の憲法の考え方、政府の考え方は、9条1項で戦争を放棄して、2項で陸海空の戦力を持たないということを規定しております。一見、非武装を規定しているように読めます。 しかし、憲法の前文では平和のうちに生存する権利を示し、また13条では、国民の人権に対して政府は国政上最大の尊重を要する、と規定しております。

国民の人権を最も奪う行為が日本に対する武力の攻撃ですから、これを排除するための力は必要であります。しかし9条がありますから、それは最小限のものでなければなりません。こういう考え方で、必要最小限度の自衛力を持つことは許される、こういう考えを取っております。

個別的自衛権とか集団的自衛権という概念は、国際法で言われる概念でありますが、その集団的自衛権には、日本の国民の人権が台無しになること以外にも、他国をもっぱら守るために武力を使う概念も含まれておりますので、そうした国際法でいう集団的自衛権は日本の憲法は認められない、ということであります。

他国に対する攻撃がきっかけであったとしても、それが日本に対する攻撃と同様に、日本の国民に深刻・重大な被害をもたらすような攻撃であれば日本は武力行使で反撃できるという、極めて限定的な意味での国際法上の集団的自衛権は認められる、という風に今回考えたわけです。

日本の自衛権の行使が許されるのは、他国に加えられた攻撃か自国に加えられた攻撃か、ではなく、その攻撃が日本の国民の権利を根底から覆すことが明白なのかどうかという、客観的な考え方で一貫して捉えられているのが日本政府の考え方です。

このような考え方は論理的に一貫しているものであり、また、これからも変わらないという、という意味で法的にも安定していると思います。

これ以上の、他国に対する武力攻撃、他国を防衛する武力攻撃を許すような、いわゆる集団的自衛権をまるごと認めるようなことは今の憲法解釈ではできない、それをやるには憲法改正が必要である、ということも確認をしております。

この1年間にわたって、与党で25回、並行して公明党で35回の議論を重ねて、入念に仕上げました。国会でも丁寧に説明を重ねて、国民の理解を得たいと思っています。

他に与えられたテーマには、憲法改正やエネルギー、税制問題とかもあったんですが、時間も限りがありますので、皆さまからご質問を頂いて、お答えしたいと思います。ありがとうございました。
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質疑応答

ー先日の憲法調査会で、3人の憲法学者がいずれも今回の安保法制を違憲である述べた。自民党の高村副総裁は違憲かを決めるのは憲法学者ではなく政治家であるとコメントしているが、ご自身が弁護士であられる山口代表も同じような考え方なのか。

また、存立危機事態についてですが、日本が攻撃が受けていないにも関わらず、日本の存立が危険にさらされるという事態は、具体的にどういう場合なのかということが、国会答弁を聞いていてもなかなかわからない。その国が日本を攻撃する意思がなかったとしても存立危機になる場合は武力行使できると総理は述べられている。具体的に公明党としては、攻撃も受けていないのに、存立事態になるというのはどういう事態を想定しているのか。


山口代表:最初の質問ですが、学者の意見については、謙虚に参考にしなければならないと思います。

しかし、先ほど申し上げましたように、憲法13条で最大の尊重を要する、その責任を負っているのは政府や国会でありますから、憲法にもとづいて、自衛権のあり方、国際貢献のあり方を決めていかなければなりません。その意味で、先ほど色々と、政府の憲法の考え方を述べたわけであります。

新しい要件における、存立危機事態とい言われるものは、大事なところは、"国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合"、というのが要件の核心であります。抽象的な存立の危機ということではありません。いま言ったような明らかな危険がどうやって生じるか、これはいろいろなケースを想定して言えるものではありません。実際に起きてくること、様々なことを総合的に考えなければなりません。

ただ、考える要素として、起きてきたことが、日本が直接武力の攻撃を受けた場合と同様な、深刻かつ重大な被害を被ることが明らかな状況を指していることが明らかでありますので、そういった点から吟味していくことが大切だと思います。

ー政府としては、今国会でなんとか可決させたい、そのために国会の会期延長するという話も出て来ている。しかし、アンケート調査の結果を見ても、多くの方が"よくわからない"と答えている。また、法制をいま成立させなければいけない理由がわからないと言っている。

代表のお考えは、何があっても今国会で成立させなければいけないというものなのか、それとも時間をかけて、もっと丁寧に本当の理解を得られるようにしなければならないと思っているのか。


山口代表:今はまだ予定された会期の途中でありますが、政府、与党は国民の理解が得られるものと確信をもって法案を作り、入念に仕上げて出しているわけですから、今国会で成立させる責任があると思いますし、その努力を最後まで尽くしていきたいと思います。

確かにこの法制は、かなり内容が深く広い、従って、一瞬では飲み込みにくい要素があるかもしれません。しかし、繰り返し繰り返し、丁寧に、何度も説明を尽くして、国民の理解を進めていく努力がもともと予定されていましたし、これからも必要だと思っております。

ーご説明をされるほど、かえって国民が混乱するというネガティブな効果も出てきてるのではないか(笑)

山口代表:もっと基本に戻って、体系的に全体を説明するという機会があっていいと思っております。報道される、あるいは議論になるところは部分的な観点で、そこが過大に表現されているようにも思います。もう少し、全体的な主旨や構造、そしてどういう歯止めが施されているか、そうしたことをわかりやすく議論する、また、情報を提供する、そういう努力がもっと必要だと思います。

ー2003年に、イラクに大量破壊兵器が存在することで、多くの国が存立危機の状態にあるというようなことが言われ、米国と同盟国がイラクの攻撃を始めました。これは国連も認めなかったわけですが、当時官房副長官だった安倍首相も参加の判断をした。

しかし、今に至るまで、日本政府がどのようなプロセスで決定したのか、検証されていない。そのときの教訓も生かされていないのではないか。今こそ、精査する良いチャンスではないか。


山口代表:当時の日本の考え方というのは、イラク戦争の直接の是非ということよりも、国連による人道復興支援に加盟国が協力せよという決議にもとづいて、イラクの人道復興支援の部分に日本が参加して、サマワに陸上自衛隊を派遣したわけです。

戦闘行為を後方支援するようなことを行ったわけではありません。政治的には過去の出来事を検証する試みはもちろん否定はしませんが、当時日本が行った考え方は、あくまで武力行使の後方支援ではなく、国連決議に基づく、加盟国としておこなった人道支援でありまして、やったことそのものは高く評価され、概ね成功したと評価しております。

また、教訓は生かされております。当時は特別措置ということで1回限りの法整備を行いましたが、今回は恒久的な一般的な法律を作りました。 しかし、その日本が後方支援活動を行うためには3つの要素、つまり、ひとつは国連決議という明確な国際法上の正当な根拠を要するということ、それから国会決議。事前にすべて国会の承認を得なければならないということ。そして自衛隊員の安全を確保する責務を防衛大臣に課して、そして実際には武力の行使と一体にならないと見込まれる地域、戦闘行為が行われないと見込まれる地域で活動するということを明確に決めたわけであります。

ー日韓国交正常化50年にあたって、安倍首相がソウルの大使館で行われるセレモニーに出席すべきかが議論されている。。山口代表は安倍首相が参加すべきだと思うか、もし参加するとしたら、どういういうことを言ってもらいたいと思うか。

山口代表:日韓50周年記念行事はソウルと東京の両方で行われるものであります。
やはりこの歩みの意義を噛み締めてそして、これから両国がより強い深い協力関係を確かめて、将来に向かって協力し合えるそういう場にすべきだと思います。

これは公式行事で、総理大臣に招待があるというのであれば、招待された方々の動向もよく配慮した上で、ソウルと東京、それぞれの開催が両国民からみて成功したと思われるようなものになるように望んでいます。

ーソウルに行った場合、安倍首相が戦争について謝罪すべきだと思うか。

山口代表:安倍首相は歴代の内閣が出してきた考え方、談話等は継承すると述べられているわけですから、歴代首相の考え方、内閣の考え方が安倍首相と同様のものだと思っております。

70年の談話を出すと言われておりますが、いつ、どういう内容でお出しになるかは定かではありませんが、これまでの安倍首相の発言を聞く限りでは、やはり第二次大戦までの日本の振る舞いについて深く反省をした上で、それに基づいて戦後の平和主義の歩みがあって、これからもそのことを強く進めていきたいという一貫した考え方が採られているように思います。

■公明党による開設記事
・平和安全法制と公明党 - 5月16日
・平和安全法制Q&A- 5月17日
・解説ワイド 平和安全法制 - 5月20日
・「平和安全法制」理解のために - 6月6日