※この記事は2014年11月18日にBLOGOSで公開されたものです

11月になってにわかに吹いた「解散風」。外遊から帰国した安倍晋三首相は今日(11月18日)の夜、記者会見を開き、衆議院の解散・総選挙に向けた表明をおこなうとみられている。解散する理由がない「なんとなく解散」ではないかともいわれるが、田原総一朗さんはどうみているか。安倍首相の会見の直前、インタビューした。【大谷広太(編集部)、亀松太郎】

「安倍首相が解散する理由は2つある」

年内の懸案だった消費税増税について、安倍内閣は、2015年10月に10%に上げるという当初の予定を見送り、先延ばしにしようとしている。これに対して反対する声もあったが、昨日発表された7~9月期のGDP速報値は予想よりも非常に悪い数字で、増税先延ばしに反対する主張は論拠を失ったといえる。

そんななかで、安倍首相が衆議院を解散しようとしていることについて、「いま解散する必然性がないのではないか」と言われている。

いま起きている解散に向けての動きは、もとをたどれば、読売新聞が「増税見送りなら解散」と報じたのが最初だった。安倍首相は読売新聞を意図的に使ったのだと思うが、この報道に続いて他のメディアも一斉に「解散へ」と波打つことになった。

読売の報道にあるように、最初は「増税先延ばしで解散」と言われていたが、GDPの発表で増税見送りに反対する声は一気に小さくなった。それでも、なぜ解散するのか。

僕は、安倍首相が解散する理由は2つあると考えている。

一つは、株価の問題だ。10月31日に日銀が追加の金融緩和を決定した。長期国債の買い入れ量を30兆円増やすという大規模なものだ。これで、一時は15000円を割るような状態だった日経平均株価が息を吹き返し、17000円まで跳ね上がった。

しかし安倍首相を始めとする自民党の幹部は、この高株価が続くとは思っていない。この先、しばらくすれば、また株価が落ちるだろうとみている。そうならば、株価が高いうちに解散・総選挙をしたほうが得策だろう。そういう判断だ。

もう一つは、現時点は、野党の選挙態勢が整っていないということ。以前の民主党のように自民党に対抗できるような野党勢力はなく、足並みもそろっていない。野党の態勢が整う前に解散をして勝負を仕掛けようということだ。

野党が「いま選挙をするのはけしからん」と言っているが、「いま解散されるのは困る」というのが本音だろう。選挙態勢が整っていないことの裏返しといえる。

ただ、消費増税見送りについて反対する声が大きくないのに、いま解散すると言われても、国民は納得できないだろう。このままでは「大義なき解散」と言われても仕方がない。

今夜、安倍首相が解散・総選挙に向けた記者会見をする見通しだが、いったい、そこでなにを語るのか。そこで、国民が納得できるような「解散の理由」を説明できるのか。それが一番のポイントだ。

国民がある程度、安倍首相の説明に納得することができれば、自民党の議席数は減ったとしても微減にとどまるだろう。現在は295議席だが、減少が20議席以内におさえられれば、安倍首相の読みが当たったといえる。一方で、40議席以上減ってしまえば、外れということだ。

そのどちらになるかは、今夜の安倍首相の発表の仕方にかかっている。繰り返すが、このままでは、解散で何を問うのかがはっきりしない「大義なき解散」だ。なんのための解散なのか。国民はそこをしっかりと注視する必要がある。(18日午後、談) (18日午後、談)

・【全文】「総選挙で過半数を得られなければ退陣します」安倍総理が会見
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